借金する前に生活保護の受け方を知っておく
お金が足りなくなってしまった場合は、身内や知り合いから借金をする他に、様々なローンに頼るという方法がありますね。
しかし、生活を立て直す方法として考えられるのは借金をすることだけではありません。他にも私たちを守ってくれるための法というものが存在しているのです。
それが、生活保護法です。
きちんと働き、質素な暮らしをしているのにも拘わらず生活費が不足し困窮していると言う場合は、借金をする前に生活保護を受けるということも選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょう?
勿論、生活保護というのはそれほどいいイメージのものではありませんし、生活保護を受けることが出来たとしても、その後様々な制約がかかってしまうなどのデメリット部分も多く存在すると言うのが実情です。
しかし、借金をすると一時的には楽になれたとしても、その後利息分が追加された高額な支払いが待っています。すると今度は借金返済のためのお金を工面するのに悩まされてしまいますね。
一時的な生活困難であれば借金で乗り切ることが出来たとしても、今後の見通しも立たないほど困窮しているのであれば、借金をするよりも生活保護を受けた方が賢明かもしれません。
今回は、生活保護とはどの様なものなのか、生活保護を受けるためにはどうしたらいいのか、メリット・デメリットはどのようなものなのか、について詳しくお話していきたいと思います。
借金をしようか迷っている方は、その前に、生活保護を受けるという方法もあることを視野に入れ、最善策は何なのか今後の手立てをしっかりと考えていくといいでしょう。
1.生活保護を受けるための流れ
長い人生の中では、時として思わぬ不運が舞い降りてくることもあるものです。
特別無駄遣いをしたわけではなく、きちんと働き質素な暮らしをしていても、突然リストラをされ職を失ってしまったり、離婚し母子家庭になってしまったり、病気になり働けなくなってしまうなど、時として人生というのは予定外の不運の連続でその人の生活自体を脅かすこともあるでしょう。
しかし、だからと言ってヤミ金などに手を出したり、ただ耐え忍ぶだけが手立てではありません。こんな時こそ生活保護を頼るべきです。
生活保護と言うのは、このように経済的に厳しい状況にある国民が最低限の生活を送るために必要なお金を、国や自治体が支給する制度のことを言います。同時にその人が自立し、きちんと生活していく為の手助けも行ってくれるのです。
では、生活保護を受けるために必要な手続きについて順を追って見ていきましょう。
①生活保護基準に適合するかどうかの判断
生活保護の申請を行っても、基準に満たなければ受理してもらうことが出来ません。そのため、前もって基準に適合するかどうかの確認をしておくことが大切です。
また、生活保護を申請する前に出来る限り、以下のような生活を立て直す努力をする事も大切です。
・定期預金などの預貯金があれば解約し活用する。
・世帯主が働けなくても、その世帯で他に働ける人がいるのであれば、その人が就職し生活を立て直す努力をする。
・親、兄弟姉妹、親戚、成人した子供などから援助を受けられるなら援助してもらう。
・他に活用できる制度は全て活用する。(健康保険、雇用保険、年金、身体障害者福祉手当など)
これらを試してみても、手元に残る資産がなく、援助を依頼出来るような身内もなく、働きたくても働けない状態の場合、生活保護を申請することが出来ます。
②地域の福祉事務所の窓口で相談
出来る限りの努力をした上で、どうしても難しいと判断した場合は、お住いの地域の福祉事務所へ行き、相談してみましょう。
今は不正受給者も増えていますので、簡単に受理はしてもらえませんが、出来る限り自分の置かれている状況や収入、生活について詳しく説明することで納得してもらえる可能性が高まります。
また、状況をきちんと伝えるためにも、自分なりに資産の状況をまとめ紙に書き出したり、通帳や収入に関する書類を持参するなどして、より話をスムーズに進める努力をする事も大切です。
時としてプライバシーに関わるような質問をされることもありますが、全て正確に正直に答えるようにしましょう。
③申請
きちんと状況を伝え、生活保護が必要だと判断されれば、申請するために必要な書類をもらうことが出来ます。その書類に必要事項を記入し、指定された書類も準備し提出しましょう。
必要書類は地域やその人の置かれている状況によって違ってきますが、たいていは以下の様なものになります。
・生活保護申請書(住所、氏名、家族状況、申請理由などを記入します)
・収入申告書(申告者本人だけではなく、世帯全員分が必要になります)
・資産申告書(不動産や預貯金などの資産があれば申告しなければなりません)
・同意書(収入や資産等について福祉の職員が調査することに対しての同意書)
など。
・本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
・給与証明書
・通帳
・年金の証書や保険証券
・賃貸契約書
・診断書(通院している場合)
・印鑑
など。
※不動産を所有しているときは登記簿謄本、車を所有しているときは車検証なども必要になります。
④家庭訪問
申請書を提出すると、その後福祉事務所の職員が訪問しに来ます。生活保護が必要かどうかの最終調査です。
⑤生活保護決定通知
家庭訪問が終わり、調査が全て完了すると、生活保護を受けられるか否かの決定通知が送付されてきます。遅くても1カ月以内には決定されるでしょう。
たいていは申請してから2週間程度で決定通知が届きます。
もし申請が却下されても、さらに不服を申し立てることも可能です。1度ダメだったからと諦めず申請することで可能になる場合もあります。
2.生活保護を受ける上でのメリットとは?
贅沢な生活はできませんが、日常生活に必要と思われる以下の費用は全て支給してもらうことが出来ます。
・公共料金(光熱費、水道代、国民年金保険料、NHK受信料など)
・家賃(敷金礼金、契約更新費用なども含めた住宅にかかる費用)
・教育費(義務教育中の子どものための給食費、修学旅行費、雑費などの他、義務教育を終えた方が進学する場合の費用、職につくために必要となる資格取得のための費用なども含める)
・医療費(治療にかかる費用はもちろんのこと、通院のための交通費、治療するために必要なメガネやコルセットなどの費用も含める)
・出産費用
・葬祭費用(世帯の中で亡くなった方がいる場合の、葬儀にかかる費用)
・税金(住民税、所得税などの税金の支払いは免除)
3.生活保護を受ける上でのデメリットとは?
生活保護というのは人が最低限の生活をするために必要なお金を支給してくれると言う素晴らしい制度ではありますが、勿論いいことばかりではありません。
それ相応のデメリットも含まれています。
では、どのようなデメリットがあるのでしょう?
将来のためにお金を貯めることができない
生活に必要な最低限のお金だけを支給するというのが、生活保護の大前提です。ですから、お金を余したり、余したお金を将来のために貯めておくという事ができない決まりとなっています。
その日その日の生活は守られますが、将来設計を立てる事ができませんね。
少しでも支給されたお金を余していることがわかってしまうと翌月から支給額を減らされたり、支給自体をしてもらえなくなる可能性もあります。
将来の為にお金を貯めていきたいと思うのであれば、生活保護を受けながら出来る限り早急に就職し、生活保護を必要としないくらいに生活を立て直す努力をしましょう。
臨時収入も隠せない
一時的に収入があったり、内職などで少しでも稼いだのであれば、それらも全て申告しなければなりません。その収入額に応じて、支給額も減額されてしまいます。
もし他の収入があるのに申告せず、それがバレてしまった場合、支給額の返還を要求される場合もあります。
少しでも生活に余裕を持たせるための稼ぎでも、隠すことが出来ないのは大変ですね。場合によって働かない方がお得になるケースもあります。
引っ越し
それまで住んでいた場所の家賃が支給額の上限を上回っていた場合、家賃の低いアパートなどへ引っ越しを命じられてしまいます。住み慣れた家を離れなければならないかもしれないのは残念ですね。
車を所有できない
お住いの地域によっては車の所有を認めているところもありますが、基本的には車を購入することも所有することもできません。
車は持っているだけで維持費がかかってしまいますし、最低限の生活に必要なものと言うよりは、贅沢品として判断されてしまうのです。
その他にも、贅沢品と考えられる電化製品などの所有も認められていません。
社会復帰支援
生活保護をしてもらっているからと、甘えてばかりいるわけにはいきません。早い段階で生活保護から外れ、自立して行くことが目標ですので、社会復帰出来るよう生活福祉事務所の指導員から指導されます。
生活保護を受けているからと安心し、何もせずにいるわけにはいかないのです。
指定の医療機関
医療費は支給されますが、どこでも受診できるわけではありません。
指定の医療機関がありますので、希望の病院があっても指定された病院にしかかかることができません。
生活保護の制度は必要最低限の生活も出来ない方にとってとてもありがたい制度ではあるものの、人としての最低限の生活しか守られませんし、知り合いや近所の方に知られてしまうと、あまり良い印象を与えませんね。
しかし借金というのは一時しのぎでしかありません。一度お金を借りると、借りたお金以上のお金を返さなければなりませんので、借りれば借りるほど生活は困難になっていく危険性があります。
返済が困難になり、延滞を繰り返してしまうと、個人信用情報にも傷がつき、銀行や大手の消費者金融から借り入れることも出来なくなってしまうでしょう。
いつの間にかヤミ金しか頼る場所がなくなってしまうという事態を免れるためにも、借金をする前に生活保護を受け、生活基盤を整える事も大切です。
ただし、安易な気持ちで利用するべきものではありません。また、どうしても躓いたとき利用したとしても、長期的にいつまでも利用するべきものでもありません。
様々な制約を受けることにもなるため、家族のため、将来のため、自力で生活を立て直す努力をし、それでも難しいと考えられる場合に限り利用し、その後は早い段階で生活保護から抜け出し、自立出来るよう努力することが大切です。