奨学金と教育ローンの種類と選び方
子供の大学進学時、授業料や入学金を預貯金では賄えないと頭を抱えている家庭も多いのではないでしょうか?
国公立大なのか私立大なのか、学部や学科ごとにも違いはありますが、入学金は20万円~50万円、年間の授業料は100万円前後かかると言われています。
この他にも、通学の為に一人暮らしをするのであれば仕送りが必要になりますし、自宅から通う場合でも交通費などがかかってきます。
それまで通りの生活を守りながら、この進学費用を捻出するというのはとても大変なことですね。
こんな時、頭に浮かぶのは、奨学金や教育ローンではないでしょうか。
しかし、今は奨学金と言っても種類が豊富ですし、教育ローンも国で行っているものから民間のものまで様々です。これではどの様な時にどの制度を利用したら良いのか、迷ってしまいますね。
そこで、今回は奨学金の仕組みはどうなっているのか、教育ローンとはどの様なものなのか、またそれぞれのメリット・デメリットについてもお話していきたいと思います。
奨学金・教育ローンについて詳しい情報を得ることで、今後の子供の進学時に、豊富な種類の中からぴったり合った制度を選ぶことが出来るのではないでしょうか。
お金が足りなくなってから慌てることのないよう、早い時期からそれぞれの特徴についてきちんと把握しておくとよいでしょう。
1.奨学金とは?
①奨学金の種類
奨学金というのは、進学したいのに経済的な理由から進学を諦めなければならないと言う学生を援助するための制度です。種類は様々で、国で行っているもの、民間で提供しているもの、それぞれの学校で用意しているものなどがあります。
その内容についても、有利子のものや無利子のもの、返済が不要のものなど様々ですので、奨学金制度を利用したいのであれば、条件や資格を確認し、自分に一番合ったものを選ぶといいでしょう。
ではまず、奨学金の種類から見ていきましょう。
日本学生支援機構
今一番利用者が多いと言われている奨学金制度がこれに当たります。
第1種奨学金と第2種奨学金があり、第1種の方は無利子での貸し付け型になります。高い能力や学力のある学生に対する貸し付けとなりますので、本人の成績に対する審査はやや厳しくなります。
第2種の方は有利子の貸し付け型です。第1種よりも審査は柔軟で、より多くの方が利用しやすい制度となっています。
学内奨学金制度
短大や大学などそれぞれの学校で用意している奨学金制度です。成績優秀者に対して学費を免除にしたり、一定の資格を持っている学生に対して給付を行うなど、それぞれの学校独自の審査基準によって奨学金制度を利用できる方が選ばれます。
地方自治体の奨学金制度
保護者がその自治体の住民であることを条件として行われている奨学金制度です。
その自治体によって内容や審査基準も違ってきますので、地域の自治体に問い合わせてみましょう。
あしなが育英会奨学金
保護者が事故・病気・災害などで亡くなっている場合や、その後遺症で働くことが困難になっている場合に、その子供に対して行なわれる奨学金制度です。無利子となります。
新聞奨学金制度
学生本人が在学中に新聞配達を行うということが条件つきですが、学費の一部もしくは全額を新聞社に負担してもらうことが出来ます。更に奨学金とは別に給与も発生します。
新聞配達というのは朝早くから大変な部分もありますが、給与をもらいながら学費が免除されると言うのはありがたいですね。後に返済する必要もありませんので、卒業後の負担も減らすことが出来ます。
②奨学金制度の主な内容
種類が豊富な奨学金ですが、利用方法としてはどの奨学金もそれほど大きな差はありません。そこでまず、一般的な奨学金とはどの様なものなのか、見ていきましょう。
・学生本人に進学したいという意思があること
・学力、能力が十分にあること
・経済的な理由から、進学が難しいと考えられる場合
これらの条件を満たしている場合に申し込み可能となりますが、学生本人の健康状態や学力はもちろんのこと、その家庭の収入や家族構成なども審査の対象となります。
さらに無利子や返済不能などの卒業後の負担を減らすことのできる奨学金を利用したい場合は、より高い水準での学力を求められたり、指定された企業へ就職することを義務付けられる、在学中に決められた企業でアルバイトを強いられるなど、審査や条件も厳しくなっていきます。
親ではないので、例えば親の個人信用情報に問題があったとしても、関係なく申し込むことが出来ます。勿論学生本人に今現在収入がなくてもかまいません。
・申し込み場所:今、在籍している学校
・申し込み時期:春
・給付時期:入学後、5月以降
・給付方法:毎月決められた一定額が振り込まれることになります。
・返済開始:卒業後
・金利:上限が3%となっていますが、たいていは0.2%~2.0%未満の低金利で貸与されています。その種類によっては無利子というものもあります。
奨学金のメリット
経済的な問題は無視して申し込みが可能
家庭の経済状況が厳しい状態でも、奨学金制度を申し込むことが出来ます。
通常のローンであれば、返済が困難だと思われる場合、審査に通過することはできませんが、この制度は経済状況が厳しい家庭だからこそ支援してくれる制度です。
親の個人信用情報に問題があっても大丈夫です。
返済時期は落ち着いてから
毎月の学費を捻出することはもちろんのこと、生活費もままならないと言う状態の時に、奨学金の返済が開始されしまうと大変ですね。
しかし、奨学金の返済は、学生が卒業し就職してから開始されます。また、その返済はあくまでも借り入れ申し込みをした学生本人です。
親の負担を軽減させられますね。
奨学金というブランド
奨学金も借金やローンと同じものなのですが、「借金をしている」と言うより「奨学金を利用している」と言う方が、世間的にも認められやすいというメリットがあります。
「奨学金」という名前が「高学力、高学歴」をイメージさせるのかもしれませんね。
低金利
上限でも3%というのは、とても低金利です。担保不要のローンの場合は金利も高めになってしまうのが普通ですが、奨学金は利息から利益を得るために作られた制度ではないため、良心的な金利設定となっています。
奨学金のデメリット
誰でも受けられるわけではない
申請すれば誰でも奨学金制度を利用できるわけではありません。学力が基準値以下であったり、経済状況がそれほど厳しいとは考えにくい場合など、それぞれの奨学金制度の審査基準によって不可となる学生もいます。
奨学金は期間限定
奨学金というのは最短で卒業できる年数分の支給となります。万が一留年などをしてしまうと卒業前に奨学金が終了してしまうことになります。
決められた期間内にきちんと卒業できる為の努力が必要です。
返済に悩まされる
無事大学を卒業できたとしても、その後就職してから返済が始まります。4年生の大学を卒業した場合、その返済は10年~場合によっては20年弱かかってしまうこともあります。
結婚し子供を授かり、家を購入するなど、一番お金が必要となる時期にも、奨学金の返済は続くのです。上手に繰り上げ返済をして行かないと、自分の奨学金の返済と同時に自分の子供の教育費が重なってくる可能性もあります。
給付は入学してから
入学金や前期の授業料は入学する前に必要になることがほとんどですが、奨学金の申し込み時期は入学後で、給付は5月以降になってしまうため、必要な時にお金を受け取れないというデメリット部分があります。
このように、奨学金というのは一見メリットだらけの制度の様に感じられますが、まとまったお金が必要な入学前に利用出来ない点や、誰でも利用できるわけではない点は、少し残念ですね。
さらに、将来的に奨学金の返済に苦しめられるという話はよく耳にするものです。卒業後の返済についてもしっかり考え、慎重に利用することが大切です。
※奨学金について詳しくは以下をご覧ください。
2.教育ローン
教育関係の経費の為に貸し付ける制度のことを教育ローンと言います。大学に限らず、高校や高専などに進学するための入学金や受験料、授業料を賄うために利用することも出来ます。
その他、通学の為に一人暮らしをする場合の家賃など、直接的ではなくても、間接的に教育に関係することであれば、幅広く活用することが出来るので便利です。
申し込み時期も、奨学金のように決められていないので、必要に応じて利用することが出来ます。
ではまず、この教育ローンの種類について見ていきましょう。
①教育ローンの種類
公的な教育ローン(国の教育ローン)
融資限度額は350万円までと限られていますが、金利は固定で2.05%となっており、民間のローンよりも低く設定されています。
収入の上限は決められてしまいますが、収入が少ない方でも利用しやすい様に考慮されているところは嬉しいですね。
返済方法も元金据え置き型を選択すると、在学中は利息のみの返済となります。在学中のお金がかかる時期に返済額を抑えることが出来ると言うのは助かりますね。
民間の教育ローン
民間の教育ローンは、銀行、労働金庫、信用金庫などで取り扱っている教育ローンのことです。
それぞれのローンによって詳細は変わってきますが、利率は国の教育ローンよりも高めの3%~5%程度になり、融資限度額は300万円~500万円と少し高めになります。
有担保のものと無担保のものがあり、有担保の方が金利も低く融資額も高めになります。
大学の提携教育ローン
大学が用意している教育ローンです。その大学によって、民間の金融機関と提携してローンを提供している場合があります。
直接金融機関へ申し込むよりも大学を通して申し込んだ方が優遇されるケースもあります。利用したい場合は進学予定の大学へ問い合わせてみましょう。
また、通常教育ローンは保護者が申し込むべきものですが、大学の提携教育ローンの場合学生本人が申し込むことを可能としている場合もあります。
奨学金制度と少し似ている部分があると言うのが特徴です。
では、一般的な教育ローンの内容について見ていきましょう。
※大学の提携教育ローンの場合は、学生本人が申し込むこともあります。
・申し込み場所:金融機関
・申し込み時期:自由
・融資時期:申し込んでから約2週間後
・融資方法:必要な額を一括で振り込んでもらうことになります。
・返済開始:借り入れした翌月から開始されます。
教育ローンのメリット
利用したい時に申し込むことが出来る
奨学金は、申し込み時期が毎年決められていますし、実際に給付されるのは入学後です。教育ローンであれば、自分のタイミングで申し込むことが出来、いつでも利用できるので、入学前の受験料や授業料前払いの時期も困りませんね。
融資も申し込んでから2週間程度で可能となるので、この点では教育ローンの方がスムーズですね。
学力や能力を問わない
奨学金のように、学力による基準がありません。
教育ローンのデメリット
在学中も利息発生
奨学金の場合は在学中の利息はかかりませんが、教育ローンは在学中から返済が始まりますし、当然利息もかかってきます。
親の返済能力がないと申し込むことができない
利用者は保護者である親です。親の個人信用情報に問題がある場合は利用することはできません。
3.奨学金と教育ローンどちらがお得?
全体的に見て、どちらにもメリットデメリットが存在しています。
ですから、お金を必要とする時期によって借り入れする場所を変えるという方法をお勧めします。
奨学金の方が金利も低く、良心的なローンの内容となりますが、申し込み時期が春と決められており、給付時期も5月以降になってしまいます。
これでは入学金や前期分の授業料前払いまでに間に合いませんね。
受験料、入学金、通学のための引っ越し、教材購入費、前期分の授業料など、入学前に必要なお金を賄うために利用したいのであれば、教育ローンを選択するといいでしょう。
しかし、後期分や次年度からの学費を工面したいのであれば、奨学金・教育ローンどちらも利用可能です。
ただし、先ほども述べましたように、奨学金の申し込みは春で、給付は入学後の5月以降です。ですから次年度分の学費を賄うために奨学金を利用しようと考えるのであれば、入学してすぐに申し込み、その年に給付金を受け取っておき、それを次年度使用するようにしなければなりません。
翌年になって授業料の支払いを目の前にしてから奨学金を申し込んでも、給付は翌年の5月以降になってしまうので、前期授業料支払い期限までには間に合いません。
また、奨学金は子供が支払うべきもの、教育ローンは親が支払うべきもの、という点もきちんと考慮して行きたいですね。
奨学金の返済は将来的に子供の負担となっていくかもしれませんが、だからこそ本人にも責任感が生まれ、学ぶことに積極的になれると言うメリットがあります。
留年してしまうと大変ですので、留年しないよう学業に励むことでしょう。
一方教育ローンと言うのは親が負担していくものですので、学生本人の負担を減らすことが出来ます。
それぞれの良さを知った上で、どの様な貸付制度を利用して行けばいのか学生本人ともしっかり相談した上で決めていきましょう。