リフォームローンも団体信用生命保険に入る必要がある?
リフォームローンを検討していると「団体信用生命保険への加入が条件」「団信付きで安心」などの文言を目にすることもあるのではないでしょうか。
この記事では団体信用生命保険(団信)とはどのようなものなのか、リフォームローンを借りる際には絶対に加入しなくてはならないものなのか…など、リフォームローンと団体信用生命保険についてご説明します。
団体信用生命保険(団信)とは?
通称「団信」といわれる団体信用生命保険。いったいどのような保険なのでしょうか。
団体信用生命保険とは、保険会社を保険契約者、ローンの融資を受けている賦払債務者を被保険者、ローンを融資している銀行を受取人とする「生命保険」です。
あまり考えたくないことですが、ローンの契約者が死亡してしまったり高度な障害が残ってしまった場合には契約者の代わりに家族がローンの残額を返していかなくてはなりません。
しかし、住宅ローンという多額の借金をそう簡単に返せるわけではありません。その場合は、購入した家を手放したり、それでもなお返済に追われる可能性もあります。そうした事態にならないようにするのが団体信用生命保険です。
団体信用生命保険に加入していると、万が一のときにはローン残額相当分の金額を生命保険会社が銀行に払ってくれます。その保険金をもって残りのローンが完済となりますので家族がローンの残額を払っていく必要がなくなるのです。いわば、家族が家を失ったりローンの返済に追われなくて済むようにするための保険です。
どんなときに保険金が支払われるの?高度障害の基準って?
団体信用生命保険に加入した場合、保険料が支払われるのは次の2つにあてはまるときです。
2.保障開始日以後の傷害または疾病により、保険期間中に所定の高度障がい状態に該当したとき
死亡したとき…というのはわかりやすいですが、2の高度障害状態に該当したときというのは少し漠然としていますよね。
「高度障害状態」とは具体的にどのようなときをさすのでしょうか。
保険会社によって多少違いはあるかもしれませんが、日本生命保険相互会社の例をご紹介します。
「所定の高度障がい状態」とは
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系または精神に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
・胸腹部臓器に著しい障がいを残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
のことをいいます。
幅広く保障されていて安心!と思うでしょうか?
しかし、これらの障害についてもそれぞれ内容が細かく設定されており、知らないと「そんなはずではなかった」ということになりかねません。
「常に介護を要するもの」というのは、食物の摂取、排便・排尿・その後始末、および衣服着脱・起居・歩行・入浴のいずれもが自分ではできず、常に他人の介護を要する状態をいっています。仮に、どれかひとつでも自分でできるようであれば保険料は支払われません。
また、視力の障害についても、視力の測定は、万国式試視力表により、1眼ずつ、きょう正視力について測定すること、「視力を全く永久に失ったもの」というのは視力が0.02以下になって回復の見込のない場合をいいます。
さらに、視野狭さくや眼瞼下垂による視力障がいは視力を失ったものとはみなしません。視力の回復の見込みがあったり、視野狭窄などで起きた視力障害には保険料が支払われないということです。
そのほか、言語の機能を全く永久に失ったものについても
・脳言語中枢の損傷による失語症で、音声言語による意志の疎通が不可能となり、その回復の見込のない場合
・声帯全部のて摘出により発音が不能な場合
といった条件を満たす必要があります。これらの条件に該当しない場合は保険料は支払われません。
「そしゃくの機能を全く永久に失ったもの」というのも、流動食以外のものは摂取できない状態で、その回復の見込のない場合をさしています。
さらに、「上・下肢の用を全く永久に失ったもの」については、完全にその運動機能を失ったものをいい、上・下肢の完全運動麻ひ、または上・下肢においてそれぞれ3大関節の完全強直で、回復の見込のない場合をさしています。
…いかがでしょうか、どれも回復の見込みがない場合など、保険料が支払われる条件が思ったより限られていると感じたのではないでしょうか。
団体信用生命保険の特約とは?
先程説明した高度障害状態の条件の細かさに不安を覚えた方も多いかと思います。
「もう少し幅広く保障してくれたら安心なのに…」と思った方は「特約」をつけることを検討してみてはいかがでしょうか。
多くの方が心配なのは、”死亡したり高度障害にはなっていないけれど怪我や病気で働けずローンを返済していくだけの収入がなくなってしまった”という場合ですよね。
こうした場合、団体信用生命保険に加入しているだけでは保障されませんが、特約をつけて保障の幅を広げていればローン返済の必要がなくなるかもしれません。
特約には主に次のような種類があります。
がん特約
特約の保障開始日以降に生まれて初めてがんに罹ったと医師から診断された場合に条件を満たせば保険料が支払われる特約です。
リビニング・ニーズ特約
リビニング・ニーズ特約は、余命6ヶ月以内と判断された場合に保険料が支払われてローンの返済が必要なくなる特約です。がん特約や他の特約と一緒についている場合が多いです。
三大疾病特約
三大疾病とは、がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中の3つの病気のことをさします。これら3つの病気であることを診断され、その他の支払い条件を満たした場合にはローン残高と同じ額の保険料が支払われるためローンの返済の必要がなくなります。
八大疾病特約
八大疾病特約とは、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に加えて糖尿病・高血圧性疾患・慢性腎不全・肝疾患・慢性膵炎と診断され、その他の支払い条件を満たすと保険金が支払われて住宅ローン返済の必要がなくなる特約です。八大疾病特約の他にも、七大疾病特約や九大疾病特約というものもあります。
主に、これらの特約をつけることで保証内容を広くすることが可能になっています。ただし、これらの特約にも支払いには細かな条件が設定されていますので必ず確認するようにしましょう。
例えば、がんの場合は「皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんや上皮内がん(上皮内新生物)を除く」といった条件がつけられていることが多いです。
また、三大疾病特約や八大疾病特約に就業不能保障という保障がついている場合もあります。就業不能保障は、病気や怪我によって就業不能状態が1年以上続いた場合にも保険料が支払われてローンの返済が必要なくなるというものです。
心配だからつけれる保障はすべてつけておきたい…と思うかもしれませんが、特約をつけることによって保険料が上がることを忘れていはいけません。
リフォームローンの場合、住宅ローンに比べて返済期間が短いこともありますので、年齢の若い健康な方であれば八大疾病まではつける必要がないと判断できるかもしれません。
また、借り入れ金額がさほど多くなく、パートナーに収入があったり子どもが独り立ちしている場合には保険料を上乗せしてまで特約をつける必要はないという考え方もあるでしょう。
反対に、まだ住宅ローンが残っていて子どもも小さく借入金額も大きい、自分の年齢も若くないので不安…という場合は万が一に備えて疾病特約をつけておくという選択のほうが安心かもしれません。
借入金額や返済期間、家族の状況なども考えた上で特約を活用できるといいですね。
団体信用生命保険の保険料はどのように払うの?
団体信用生命保険の保険料に関しては「当行が負担いたします」「保険料込み」などと書かれていることが多く、自分で払っていくという感覚をもちにくいかもしれません。
しかし、リフォームローンを提供している銀行などの金融機関が負担してくれるように書いてあったとしても、実際は毎月のローン返済で払う金利の中に保険料が入っているのです。
団体信用生命保険に加入するだけでなく、特約をつけると、特約料がさらに金利に上乗せという形になることが多く、保険料を追加で払う必要がでてきます。
保障の内容に応じて0.1~0.45%ほど金利が高くなることが多いようですので、特約をつけることを検討している方は金利がどのくらい変わるのか確認してみましょう。
団体信用生命保険にはどうやって加入するの?
団体信用生命保険への加入には申し込みが必要です。申し込みは、ローンの仮審査申込み後やローンの仮審査通過後といったタイミングで行います。
申込み方法は、告知書を兼ねた申込用紙に記入する方法や、ネットで所定のフォームに入力していく方法があります。
健康状態について問われますので、ありのままを記入します。
どんなことが問われるの?
では、実際にどのようなことについて健康状態が問われるのでしょうか。
申込書の告知部分は基本的に「はい」か「いいえ」に丸をつける形式になっています。
保険会社によって詳細は異なる場合がありますが、基本的には以下の3つの項目について問われます。
1:最近3ヵ月以内に医師の治療(指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか?
2:過去3年以内に下記の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか?
<心臓・血圧>狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症、不整脈、その他心臓病
<脳・精神・神経>脳卒中(脳出血・脳梗塞・くま膜下出血)、脳動脈硬化症、その他脳の病気
精神病、うつ病、神経症、てんかん、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症
<肺・気管支>ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症
<胃・腸>胃潰瘍、十二指腸潰瘍、かいよう性大腸炎、クローン病
<肝臓・膵臓>肝炎(肝炎ウイルス感染含む)、肝硬変、肝機能障害、すい炎
<腎臓>腎炎、ネフローゼ、腎不全
<目>緑内障、網膜の病気、角膜の病気
<新生物>ガン、肉腫、白血病、腫瘍、ポリープ
<その他>糖尿病、リウマチ、膠原病、貧血症、紫斑病
<女性の病気>子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣のう腫3:手・足の欠損または機能に障害がありますか?または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか?
参考URL:https://journal.anabuki-style.com/wp-content/uploads/2017/07/20150930-140056-5736.pdf
気をつけたいのが1です。大きな病気でなくても3ヶ月以内に2週間以上医師の治療や投薬を受けたものがあれば忘れずに記入しなくてはなりません。例えば、風邪や花粉症といったものでも該当すれば「はい」に丸をつける必要があります。
「はい」に丸をつけるとなんとなく加入に不利なんじゃないかとか、このくらい申告しなくていいだろうとか思ってしまいがちですがきちんと書くようにしましょう。
3つの質問で「はい」があれば、その病気の具体的な内容や治療期間、入院や手術の有無、経過、服薬している薬、検査項目の数値、などについて詳しく書く必要があります。
何かしらの病気がある=団体信用生命保険に加入できない=ローンを組めない…と思い込んで、詳しく書かなかったり嘘を書いたりするのは絶対にしないようにしましょう。
既往歴があっても、きちんと治療して完治していたり病状が安定している場合には加入が可能と判断されることもありますので、なるべく詳しく書いたほうがむしろよい場合もあります。
また、仮に嘘を書いて加入できたとしても嘘が発覚すれば契約解除となったり、万が一の場合に告知義務違反や詐欺にあたるという理由で保障がおりないこともあります。
それではなんのために団体信用生命保険に加入するのかわかりませんよね。
このくらいなら申告しなくて大丈夫…と判断せず、正直に記入するようにしましょう。
リフォームローンで団信加入が必要な場合とは?
団体信用生命保険に加入するためには一定の条件を満たす必要があります。
条件に関しては団体信用生命保険を引き受ける保険会社により異なりますが、一例として次のような条件があります。
・申込日(告知日)現在で満 20 歳以上満 66 歳未満の方。
・金融機関との間に締結した借入契約の償還期間が 1 年(365 日)以上の方。
・引受生命保険会社が本契約への加入を承諾した方。
・融資実行額が 100 万円以上1億円以下の方。
引用:http://www.zenshinhoren.or.jp/document/danshin_gokanyu.pdf
つまり、リフォームローンを借りるにあたって、団体信用生命保険に加入したいと思っても各保険会社で多少の違いはあるにせよ、上記のような加入資格を満たさない場合には加入したくてもできないことになります。
さて、リフォームローンは大きく分けて有担保型と無担保型がありました。
有担保型のリフォームローンでは借りる金額も多いため団体信用生命保険への加入が借入に必須なことがほとんどです。この場合、団体信用生命保険への加入資格を満たさないとリフォームローンを借りることもできなくなってしまいます。
一方、有担保型に比べて借入金額の少ない無担保型のリフォームローンの場合は金融機関によっては団体信用生命保険への加入が必要がない(できない)こともあります。
ただし、借入金額が1000万円を超えてくるような場合には無担保型のリフォームローンであっても団体信用生命保険への加入が条件になる場合が多いようです。
また、金融機関の一般的なリフォームローンとは少し異なる性質のものですが、住宅支援機構が提供しているフラット35リフォーム一体型、フラット35リノベについては団体信用生命保険への加入が任意になっています。
リフォームローンを借りる際に、団体信用生命保険への加入が必須の場合や加入ができない場合は迷う必要はありませんが、任意で団体信用生命保険にできるという場合には加入すべきかどうか迷うと思います。
そのようなときは、借入金額や返済期間、家族構成や家族の収入状況を考えてみるとよいかもしれません。ローンの契約者が亡くなっても返済が可能かどうか、すでにほかで入っている生命保険や収入保障保険などがあればそれらで対応可能か保障内容を見直してから考えるのもよいでしょう。
団体信用生命保険に加入できずリフォームローンが組めないときの対処法は?
団体信用生命保険に加入してリフォームローンを借りたいけれど、団体信用生命保険に加入できなくて困ってしまった…そんな場合はどうしたらよいのでしょうか。団体信用生命保険に加入してリフォームローンを借りるための対処法をご紹介します。
借り入れる金融機関を変える
団体信用生命保険の引受会社は金融機関によって異なります。たとえば、A銀行とB銀行は〇〇生命、C銀行とD銀行は△△生命…といったような具合です。
A銀行で団体信用生命保険に加入できずリフォームローンが組めなかったとしても、C銀行やD銀行では組めるという場合もあります。これは、保険会社によって団体信用生命保険加入の可否を判断する基準が異なるからです。
なので、借入先の金融機関を変えてみるというのも一つの手です。ただし、A銀行で組めず同じ引受会社を採用しているB銀行に申し込んでも結果はやはり借入不可となる可能性が高いですので注意しましょう。
ワイド団信を取り扱っている金融機関にする
ワイド団信は、通常の団体信用生命保険よりも引受範囲が広く、糖尿病やうつ病などの持病があっても加入することが可能です。ただし、持病があっても絶対に加入できるというわけではなく、審査に通らなければ加入できません。
通常の団体信用生命保険よりも加入の審査基準がやさしいというだけで、審査なしというわけではないのです。
さらに、ワイド団信でローンを組む場合は金利がだいたい0.3%ほど上乗せになることも忘れていはいけません。
また、通常の住宅ローンを借りる場合でさえワイド団信の取扱がある金融機関は限られており、リフォームローンでワイド団信を申し込めるところとなるとさらに限られてきます。
一例として、りそな銀行がリフォームローンでもワイド団信に対応しています。
完治している病気があれば3か月または3年間病院にかからない
完治している病気があれば3か月や3年間病院に行かないで1や2の質問に「いいえ」で答えられるようにするという手もあります。
ただ、医師から定期的に受診するように指示がある場合は絶対に受診してください。団体信用生命保険に加入したいがために病気が悪化するようなことがあっては大変です。
例えば、胃潰瘍を患ったけれど服薬を続けて医師から完治したので来院の必要がないことを告げられている場合、3年以内であれば告知書に書く必要がありますが、3年経過してその間病院にかかる必要がなかったら書かなくて済みます。
リフォームローンと団体信用生命保険「まとめ」
団体信用生命保険は万が一のときにローン残額相当分の保険金がおりるため、ローンの返済をしなくてよくなります。
基本的には死亡時と高度障害状態のときのみの保障ですが、特約をつけることで保障の幅を広げることができます。ただし、保険金が支払われるためには細かな条件を満たしている必要があります。
リフォームローンにおいては、有担保型の場合や無担保型でも借入金額が大きくなると団体信用生命保険への加入が必要になってきます。
しかし、借入金額が低い場合は団体信用生命保険への加入が必要なかったり、加入条件を満たさないため加入したくてもできないという場合もあります。
リフォームローンを組む際に団体信用生命保険に加入するかどうか迷うような状況になったときは、年齢や家族構成やパートナーの収入、現在入っている保険などを考えるとよいでしょう。