住宅ローン 頭金の決め方 そもそも頭金は必要?
住宅を購入する予定のある方は、頭金をどれくらい用意しますか?
頭金は一般的に購入額の2割用意するといいと言われていますね。しかし、頭金を用意せずに住宅ローンを組む方も増えています。
では、実際に頭金は必要なのでしょうか?また、頭金を用意するとしたらどれくらいを目安に貯めるといいのでしょう?
今回は、住宅ローンを組む際の、様々な「頭金」に関する疑問を解消していきたいと思います。その上で、賢い頭金の決め方についてまとめていきます。
<もくじ>
頭金とは?
大きな買い物をし、分割払いの契約を交わした際、代金の一部を最初に支払うことがあります。これを「頭金」と言います。
住宅を購入する際も、たいていは一括で支払うことができないので、住宅ローンを組み分割で支払っていくことになりますね。この時にも、一部だけ先に「頭金」として支払うことがあります。
住宅ローンに頭金は必要?
住宅ローンを組む際、頭金は絶対に支払わなければならないという決まりはありません。
頭金がないとローンを組むのが難しい時代もありましたが、今はネットで完結できるという利便性の高いネット銀行なども勢力を上げてきているため、銀行同士の競争もどんどん激しくなってきているのです。
そのため、頭金なしでもOKなどとして借り入れ条件を緩くしたり、金利や手数料を引き下げるなどして、それぞれの金融機関が顧客獲得に力を入れてきています。
これにより、頭金がない方でもお金を借りやすい時代となってきているのです。
また、頭金どころか、住宅購入にかかる諸費用も全て含めて住宅ローンを組むことができる銀行もあるのです。これなら、所持金ゼロでも、安定した収入さえあれば借りることが出来そうですね。
ただし、頭金があってもなくても審査に全く影響がないし、条件などが変わることもない、とは言えません。
当然、頭金がある方が審査に通過し易くなりますし、金利が優遇されたり、特典が得られる場合もあるため、より好条件で借り入れができるようにはなるでしょう。
では、まず、頭金がある場合のメリットについて詳しく見ていきましょう。
頭金がある場合のメリット
頭金がなくても住宅ローンを組むことはできるのですが、頭金があると以下のようなメリットが得られます。
・より良い条件で借りることができる
・返済額を減らすことができる
・借入期間を短くすることができる
・支払う利息を減らすことができる
・物件の選択肢が増える
一つずつ説明していきましょう。
頭金を払うと住宅ローンの審査に通過しやすくなる
頭金があることで、住宅ローンの審査結果に違いが出てくることがあります。
これは、お金を貸す立場になって考えるとわかりやすいかもしれませんね。
例えば、年収は同額で、次のような方がいた場合、あなたならどちらにお金を貸したいですか?
Aさん・・・預貯金ゼロで、頭金も諸費用分も用意できないけれど、住宅ローンを組みたい。
Bさん・・・預貯金600万円。そこから諸費用を支払い、200万円程度は今後のために残し、300万円を頭金、足りない分を住宅ローンとして組みたい。
どちらも安定した収入がありますし、確実な支払いを約束してくれるなら安心ではありますが、Aさんは預貯金ゼロです。今まで働いてきたお金は全て使い切ってしまっているということですね。
住宅ローンを組むと、今までにはなかったローン返済が必要になってくるのに、今までのような使い方をしていて本当に返済を滞ることなく行ってくれるのでしょうか?
なんとなく不安が残りますね。今までのように使い切ってしまい、返済分を残すことが出来ない月も出てきそうな予感がしてしまいます。
一方Bさんの場合は、Aさんと同じ収入なのに、コツコツとお金をため、600万円も用意できているのです。さらに頭金や諸費用分を支払ったとしても貯蓄は残すことができます。
すると、これからもコツコツと貯めていけるような気がしますし、万が一職を失う様なことがあったとしても、次の仕事を見つけるまでの期間を貯蓄で賄うことが出来そうですね。
住宅ローンの支払いを延滞する可能性も、Bさんの方が低いように感じられます。
こうなると、Bさんは問題なく審査に通過できるけれど、Aさんは銀行によっては返済能力の点で不安だと判断されてしまうかもしれません。
そうなのです。このように、頭金となる預貯金があるかないかで、審査結果に影響が全くないとは言い切れないのです。
もちろん、今の時代は頭金がなくても借りられる銀行はたくさんあります。
頭金があるかないかだけではなく、その他にも勤続年数が長いこと、安定した収入が得られていること、クレジットカードや携帯電話などの支払いを滞ったことがないこと、他に借金がないことなど、様々な方向から審査は行われるので、他の項目で安心が得られれば好条件で借りられることも十分可能でしょう。。
ただ、他の項目にも安心があり、さらに頭金を用意できるだけの能力がある方は、さらに良い条件で審査に通過しやすくなるということは言えるのです。
より良い条件で借りることができる
ローンを組む際、審査に通過できるかどうかを知るために、いくつかの条件のいい銀行へ事前審査を申し込みますね。
頭金があってもなくても事前審査の申し込みはできるのですが、審査に通過できる確率は、頭金がある方が高いでしょう。例えば3つの銀行に申し込みをした場合、頭金のある方は3行とも通過できてしまうということも考えられます。
この場合、3つの銀行の中からさらに、より良い条件のローンを自分で選ぶことができますね。
選択肢の幅が広がるのです。
逆に頭金がない方は、返済能力を理由に事前審査を依頼した銀行のうち2行からお断りの連絡を受けるということも考えられます。その場合は、残った1行から借りるしか方法はありませんね。そこからの選択肢が消えてしまうのです。
また、銀行によっては、頭金がある方とない方の適用金利を分けている場合もあります。当然頭金がある方のほうが適用金利が低くなります。
銀行側も、返済能力のある方にはどんどんお金を貸したいので、頭金を貯めることができる方は返済能力も高いと判断され、より好条件で貸してくれることがあるのです。
適用金利が低くなり、選べる銀行の選択肢が増えるなら、頭金があった方がお得ですね。
返済額の減額・借入期間の短縮・利息を減らすことができる
例えば、3,000万円の住宅を購入したとして、300万円の頭金を入れた場合、借入額を2,700万円に減らすことができますね。利息分は借入額に対して○%なので、借り入れ額が少なければ少ないほど、支払うべき利息分も減っていきます。
また、自分なりに返済額や期間を調整することもできます。
3,000万円の借り入れの場合だと最長期間である35年でローンを組み、ギリギリ支払いが可能な返済額に設定せざるを得なかったかもしれないところ、300万円の頭金を入れることで、月々の返済額を減らし、毎月の支払いに余裕を持たせることができるでしょう。
もしくは、月々の支払いに問題がない場合は、返済額はそのままで35年ローンを30年や25年程度に縮めるという方法をとってもいいですね。
頭金を入れることで、期間や返済額にも選択肢を設けることができるのです。
頭金を支払うと物件の選択肢が増える
例えば、500万円を頭金として用意できたとしましょう。
3,000万円の家を購入するとしたら、頭金を500万円入れると2,500万円の借り入れになります。
しかし頭金を入れずに、3,500万円の家を購入し、頭金ゼロでローンを組むことも可能なのです。もちろん、この場合、頭金がある場合のメリットは得られませんが、ローンを組むことは可能です。
預貯金があることで、ワンランク上の家も選択肢の中に入れることが出来るのです。
このように、頭金は用意できるならしておいた方が、ローンを組むうえで様々なメリットが得られますし、選択肢の幅も広げることができるのです。
ただし、頭金を用意することで、デメリットが生じる場合もあるのです。
以下で、頭金を用意するデメリットについても見ていきましょう。
頭金を用意する場合のデメリット
頭金はあればあるだけ有利な気がしますね。用意できるならした方がいいとも思います。しかし、用意の仕方によっては以下のようなデメリットが生じてしまう場合もあるのです。
・今後の生活に余裕を持たせられない、突然の出費に対応できない。
・新しくなるのは物件だけで、家具や雑貨を揃えられない。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
物件購入のタイミングを逃す
頭金は用意したほうがいいのはもちろんですが、絶対に用意しなければならないものではありません。
むしろ、頭金準備に必死になりすぎると、せっかくいい物件を見つけても購入するタイミングを逃してしまう場合もあります。
もちろん、しっかりと準備してから、その後に見つけた物件でいいという強い気持ちがあればいいのですが、家というのは出会いですので、自己資金は不十分だけれど、この上ないいい物件に巡り合ってしまったということもあるでしょう。
こんな時、頭金がないからと泣く泣く諦めますか?
しかし、やっと自己資金が十分になった時には、いい土地や物件を見つけられないかもしれません。
必ずしも、物件との出会いと頭金の準備のタイミングが同じとは限らないのです。
頭金がないからと購入をあきらめたり、頭金があるのに物件探しに時間がかかるなどして購入のタイミングを逃してしまうと、ローンを組む年齢もどんどん上がっていってしまいます。
すると、ローン完済時には定年退職後となっているかもしれません。こうなると、退職後の生活が不安ですね。
それなら頭金がなくても、いい物件を見つけたときに早い段階でローンを組んでしまった方が、定年する前に完済することができ、定年後にゆとりをもたせられるかもしれません。
今後の生活に余裕を持たせられない
頭金の他にも貯蓄がある場合はいいのですが、貯めたお金を全額頭金として入れた場合、今後の生活に支障が出てしまうことも考えられます。
頭金があることで月々の返済額にゆとりを持たせられたり、金利の優遇を受けるなどのメリットが得られるとは思うのですが、預貯金がゼロになってしまっているので、ローンを組んだ後に万が一働けなくなったり、思いがけない出費が重なってしまうなど、突然の思いがけない出来事があったときに対応できなくなってしまいますね。
生活や心にも余裕を持たせられなくなってしまいます。
頭金を用意するのはいいことではありますが、今後の生活のことも考えたうえで可能な額を頭金として入れたほうが安全です。
新しくなるのは物件だけで、家具や雑貨を揃えられない
新しい家を購入すると、その家に合わせたカーテンや絨毯が必要になりますし、家具やソファーなども家のサイズに合わせたものを準備したくなりますね。
しかし、ローンを組む際に頭金としてお金を入れてしまったばっかりに、欲しい家具も用意できないということも考えられます。
今まで使用していたサイズの合わないカーテンなどで対応するのももちろん悪いことではありませんが、ちょっぴり残念な気持ちにもなりますね。
このように、「頭金を用意しなければ」と必死になることが必ずしもいい結果を生むとは限りません。
では、頭金はどうしたらよいのでしょう?
準備するべき?準備しなくてもいい?準備するならいくらくらい?
そこで、次に頭金の決め方について考えてみましょう。
住宅ローン「頭金」の決め方
頭金があった方が審査に通過しやすく、好条件で借りることができるとお話ししましたが、預貯金をかき集めて全額を頭金としてつぎ込むのはあまりいい方法とは言えないのです。
先ほどお話したように、物件購入のタイミングを逃してしまうかもしれませんし、欲しい家具も用意できなくなるかもしれません。
また、手元に残すお金がないことで、住宅ローンを組んだ後、予想外の突然の出来事に対応できなくなってしまいます。
突然病気で倒れ、急遽入院費が必要になってしまうかもしれませんし、思いがけず妊娠出産が重なるかもしれません。出産のために奥さんが働きに行けなくなったり、育児休暇などをとることで収入が一時的に減少してしまう危険性もありますね。
また、親戚の冠婚葬祭等、予定外の出費が増えてしまうということも考えられます。
世帯主に万が一のことがあり、収入がなくなってしまうという可能性もゼロではありません。いつ何があるかは誰にもわからないのです。
万が一の時、貯えがゼロではとても不安ですね。
そこで私がおすすめしたいのは、「可能な限り用意して、諸費用と必要な預貯金以外を頭金へ」という方法です。
住宅ローンの頭金は、基本的には購入額の2割が相場と言われていますね。もちろん2割の頭金を用意したうえで、手元に残すお金も作ることができるのが理想ではあります。
しかし、現実はそう甘くはありませんね。貯めたくてもなかなかたまらないのがお金です。貯めていたのに、しっかり貯まる前に物件と出会ってしまうこともあります。
ですから、実際にはそこまで用意できなくても大丈夫です。
より好条件でローンを組み、月々の支払いも楽にして、なるべく得をしたいと思うのは当然のことですが、大切なのはそれだけではありません。
余裕のある生活、心のゆとりも必要です。
頭金に迷ったら、以下のような要領で金額を決めていきましょう。
②少なくとも100万円程度は手元に残す。
③手元に残す100万円の他にいくらかあるなら、そのお金を諸費用に充てる。この場合は、頭金はゼロ。
④手元に残す100万円と諸費用分を除いてもお金が余るなら、それを頭金にする。
もちろん、預貯金そのものが全くないという方もいるでしょう。
この場合は、不安は残りますが、諸費用分もローンを組み、頭金ゼロで住宅ローンを組める銀行を探すことになります。今後の生活に不安を抱えることにはなるため、返済計画や生活設計はしっかりと行うことが大切です。
しかし、購入額の2割まではいかないけれどある程度の預貯金がある場合は、上のような流れでお金を振り分けていくと、自分にとっての可能な頭金がどれくらいなのか見えてくるのではないでしょうか。
ただし、頭金を入れなくても、最終的には頭金と入れた場合と同じくらい得となる方法もあるのです。
それが、繰上げ返済です。
繰上げ返済の活用方法についても見ていきましょう。
頭金なしで「繰上げ返済」する方法も
住宅ローンには、元利均等返済と元金均等返済がありますね。
元利均等返済
毎月の返済額は一定で、利息と元金の内訳が変化していく返済方法です。最初は元金より利息の割合の方が上回っているのですが、返済を続けるうちに少しずつ変化していき、徐々に元金の割合が増えていくという仕組みです。
元金均等返済
元金は一定で、利息分の割合に応じて返済額が変わってくる方法です。最初は利息の割合が大きいので、一定の元金+割合の大きい利息分での返済となるので、月々の返済額も利息に応じてとても高くなってしまいますが、返済を続けていくうちに利息が減るため、返済額がどんどん減少していきます。
しかしどちらにも共通して言えるのは、利息の割合は住宅ローンを組んだ当初のほうが大きいということですね。
ですから、元利均等返済でも元金均等返済でも、ローンを組んだ当初の、利息の割合が大きい時に繰り上げ返済をすると、繰上げ返済分は元金に充てることができるので、その時の元金にかかっている利息分を全てなくすことができるのです。
同じ金額の繰上げ返済でも、30年後に繰上げ返済した場合と、借り入れして5年後に繰り上げ返済した場合では、消える利息分がまるで違います。
つまり、ローンを組んでから早い段階で繰り上げ返済をすると、頭金を入れてローンを組んだ時と変わらないくらい、利息分を減らせるかもしれないということです。
無理に頭金を用意して、後々生活に余裕が持てなくなるくらいなら、ローンを組んだ後、お金の出入りが落ち着いてから、まとまったお金が用意できたときに繰り上げ返済をするというのも賢い返済方法と言えるでしょう。
頭金については以下のことを頭に入れておくといいですね。
・頭金があった方がローンを組む時有利
・頭金を用意できないときは、無理に集めるより今後の生活分に残しておいた方が安全
・住宅ローンを組んでから早い段階で繰り上げ返済すると、頭金を入れたときと同じくらいの利息を減らせる
ただし、住宅ローンの金利や返済期間、今後のお金の使い方、予定外の出費の有り無し、その人の性格等によっても、損得は大きく変わってきます。
そのため、頭金の決め方については絶対に正しい方法というのは存在しません。
このような、頭金を用意する場合のメリット・デメリットなどを踏まえたうえで、自分の状況とも照らし合わせ、最適な方法を探してみてくださいね。