住宅ローン 返済の遅延・滞納や払えなくなったらどうなる?
住宅ローンを組む時には返済できるはずと思っていても、様々な理由から返済が困難になることもあるでしょう。
重なる出費、給料の減額、ボーナスカット、思わぬ病気、離婚、リストラ・・・いつ何が起こるかは誰にも分らないですね。
このような事情からもしも返済が難しくなり、住宅ローンを滞納してしまったらどうなってしまうのでしょう?
今回は、住宅ローンを滞納した場合の流れや措置について詳しくお話していきたいと思います。
<もくじ>
住宅ローンを滞納した場合の法的措置とは
多少の滞納は大丈夫、と安心している方も多いかもしれませんが、実は、きちんとした対応をとらないと最悪の場合競売にかけられ、住む家を失ってしまうことになります。
競売に出されてしまうと、とても安い額で取引されてしまうため、必ずと言ってもいいほど残債が残るでしょう。この残債分はさらに支払い続けていかなければならないのです。
もちろん、競売による引っ越し費用も実費ですし、引っ越すタイミングも決められてしまいます。次に住むべき家の手配なども自分で行わなければなりません。
また、これらの情報は個人信用情報(ブラックリスト)に掲載されるため、長期間他の借り入れもできなくなるのです。もちろん、クレジットカードの申し込みなどもできません。
家を失い、引っ越し費用など少しのお金も借りられないのに、残債の支払いは追いかけてくるという、とても苦しい状態を強いられてしまうのです。
こうなってしまうと、もう状況を立て直すことが難しくなってしまいますね。
しかし、1度支払えなかっただけで突然競売手続きに入るというわけではありません。住宅ローンの滞納の回数と、滞納している方の対応次第で措置の方法は違ってくるのです。
最悪の事態を免れるためには、滞納の段階別の措置について把握し、どのような対応をするべきかを知っておく必要があります。
そこで、滞納した月数別の措置についてお話していきたいと思います。
住宅ローンを1~2か月遅延した場合
返済日に口座へ入金するのを忘れてしまったり、別の予定外の引き落としがあり、残高不足になってしまっていた、もしくは次のお給料が入るまでお金を用意できないなど、様々な理由から1~2か月、住宅ローンの返済が遅延してしまうこともあるでしょう。
もちろん、返済遅延は決して良いことではありませんが、1~2回程度であれば、金融機関側も待ってくれることが多いものです。
ただし、ただ待ってくれるわけではありません。住宅ローンを滞納すると延滞損害金というものを加算して支払いを請求してきます。
これは返済が遅れると直ぐに加算されていくものなので、遅れれば遅れるほど支払いがどんどん増えていってしまうのです。
さらに、電話で連絡も来るでしょう。もしくは郵便にて、住宅ローン返済のお願いの通知が届くかもしれません。
ここで重要なのは、連絡が来たらすぐにきちんとした対応を心掛けることです。
電話に出なかったり、お手紙を受け取ってもそのまま連絡しなかったり、あいまいな返事をして次の入金の約束もできないようであれば、早い段階で厳しい措置を取られてしまうかもしれません。
まずは、以下のことを金融機関にしっかりと伝えるようにしましょう。
・次の入金予定日
・現状と今後の見通しについて
・次の入金の予定が立たない場合は、可能な限りの返済計画(1か月の返済分に満たない金額でも、何日までにいくら等、現実的に可能な返済予定を自分なりに立てて伝える)
出来れば、金融機関から連絡が来る前に自分から電話をして、支払えない理由などを伝えたほうが好印象ですね。来店して、きちんとお話するという誠意を見せることも大切です。
金融機関側もたとえ返済が遅れたとしても、きちんと支払っていく意思のある方だとわかればお話も聞いてくれますし、約束を守ってくれる人だと判断されれば、3か月以上の延滞があっても待ってくれることもあるのです。
闇金のような厳しい取り立てなどは行いませんので、安心してください。
実際、私が金融機関に勤めていた時も、6か月延滞しているけれど競売されずに返済を継続している方もいました。もちろんそれ相応の理由も必要ではありますが、きちんとした対応と、少しずつでもきちんと支払っていく意思や努力が感じられれば、このような特例の措置をとってもらえることもあるのです。
返済の目途が立たない、次の入金の約束ができないという場合でも、一番危険なのは逃げることです。連絡に応じない場合は、金融機関側からの信用を無くし、そのまま公的手段に進むこととなってしまうかもしれません。
まずは事情を話し、相談してみることから始めましょう。
ただし、金融機関によっては、数回の遅延では連絡をしない場合もあります。連絡がこないと「少しくらい大丈夫かな」と安心してしまうこともありますし、遅延していることに気づかないまま日にちだけ経過してしまうということもあるでしょう。
しかし、ある一定の期間を過ぎると突然厳しい内容の催告書などが届きます。こうなってから慌てても数か月分の支払いを一気に集めるのは難しくなりますね。
きちんと支払いが出来ているのか自分でも確認しておくことが大切ですし、例え金融機関から連絡がなくても、油断してはいけません。
住宅ローンを3か月以上延滞した場合
住宅ローンを3か月以上延滞が続いてしまうと、その情報はブラックリスト(個人信用情報のリスト)に掲載されてしまいます。
ここに掲載されてしまうと、新たなローンを組むことが出来なくなりますし、クレジットカード等を持つことも難しくなってしまいます。
また、3か月以上ではなくでも、1~2か月の延滞を何度も繰り返していると、ブラックリストに載ってしまうこともあります。
さらに、支払いを請求するはがき(督促状)が届くでしょう。(銀行によっては、1回目の延滞から送ってくる場合もあります)
そこには何か月延滞していて、遅延損害金がいくらで、全部でいくらの返済が必要なのかが記されています。
なるべく早い段階で支払いを行うか、もしくは支払いが難しい場合は金融機関に連絡し、相談しなければなりません。
このまま放置していると支払う額はどんどん膨れ上がっていきますし、最悪の場合、競売手続きにまで進んでしまうこともあります。
最悪の事態を免れるためにも、まずは金融機関に連絡を入れ、状況を伝えましょう。金融機関は確実な支払いをしてもらうことが目的ですので、現段階でできる一番いい方法を提案してくれるはずです。
住宅ローンを4か月~5か月延滞した場合
督促状を送っても返済がなく、連絡も付かない、もしくは約束したのに約束の期日に入金がない等という場合は、督促状よりも厳しい措置となってしまいます。
金融機関から、期限の利益喪失予告通知というものが届いてしまうのです。
「期限の利益喪失」というのは、月々分割して支払う権利を失うという意味です。つまり、期限の利益喪失予告通知とは、「今までのように住宅ローンとして分割払いをするのではなく、一括払いしか受け付けられなくなりますよ」ということです。
しかし、利益を喪失するかもしれない予告の通知ですので、突然住宅ローン全額の一括払いを命じられるわけではありません。
条件があるので、その条件をクリアできれば、住宅ローンを継続していくことができます。
条件とは、「期日までに延滞分全額の返済をすること」です。延滞分が消えてしまえば、今まで通りの分割払いを継続していくことができるのです。
この時に、延滞分を全額用意するのはとても難しいことだとは思いますが、それができないと競売まで進む可能性が非常に高くなってしまいます。
延滞分を解消できないと、すぐに期限の利益を喪失し住宅ローン全額返済要求があるからです。数回の支払いも難しい状態で延滞が続いているのに、ここにきて残債を全額一括で支払える人なんていないと言っても過言ではないですね。
つまり、住宅ローン全額返済要求をされてしまうと、家を売らない限り、保証会社による代位弁済の手続きに進んでしまうこととなるのです。
保証会社が代位弁済をしてしまうと、信用情報機関にその情報が掲載され、そのまま競売手続きとなってしまうでしょう。
つまり、期限の利益喪失予告通知の段階で、延滞分を解消できるか否かは、最悪の事態を免れられるかどうかのターニングポイントでもあるのです。
どんなに難しくても、家を守り住宅ローンを継続したいなら、ここで何としてもお金を用意する必要があります。
もしくは、金融機関に相談し、支払う意思があることをきちんと伝えてみましょう。誠意が伝われば、返済分全額に満たなくても、少しずつ返済していくことを許可してもらえるかもしれません。
住宅ローンを6か月以上延滞した場合
滞納し、それまで全く連絡がとれない、入金の約束もない、もしくは約束したのに入金がない、という状態で6か月以上連続の滞納があった場合は「催告書」というものが金融機関から送られてきます。
この催告書の内容はそれまでの督促状等とは違い、以下のように厳しい言葉が記載されています。
・返済がない場合は、期限の利益喪失(分割して支払う権利を失うという意味)となること
・期限の利益喪失し、残債の一括返済がない場合は、保証会社による代位弁済(保証会社が代わりに残債を一括して支払うこと)が行われること
・この事実は個人信用情報に記載されること
保証会社に代位弁済されてしまうと、保証会社は強制的に物件を売却(競売)し、資金回収を積極的に行うでしょう。
延滞している方の対応によっても若干違ってきますが、たいていの金融機関では、6回目の滞納後、このような催告書を送る仕組みとなっています。
住宅ローンを延滞し7か月経過した場合
催告書が送付されてきた後、そのまま放置していると保証会社の方から代位弁済の通知書というものが送られてきます。
保証会社が代わりに住宅ローンの残債を全額支払ったということを示す手紙です。
住宅ローンを組む際、保証会社に保証料を支払い、保証委託契約を結んでいるはずです。この契約は、住宅ローンの支払いが困難になった場合、保証会社が代わりに支払うことを約束するものになっています。
そのため、銀行側が支払いが困難だと判断すると保証会社へ連絡し、代位弁済の手続きをお願いするのです。
しかし、保証会社が代わりに支払ってくれたから終了というわけではありません。それでは保証会社は破産してしまいます。
立て替えてもらったことで、住宅ローン契約者と金融機関とのつながりは切れますが、代わりに支払ったお金を、今度は金融機関ではなく保証会社があなたに請求してくるのです。
つまり、住宅ローンを支払うべき場所が金融機関から保証会社に変わっただけのことで、住宅ローンがなくなったり優遇されたり、支払う額が少なくなったりすることは一切ありません。
さらに、ここまでくると残された選択肢は次の3つです。
・自分で行う任意売却
・残債全額を一括で支払い
残債全額を一括で支払うことが出来れば、家をそのまま持ち続けることが出来ますが、一括で支払えるようなお金があれば、この様な状況には陥っていませんよね。
残債を支払うためには、その家を売るしか方法がないでしょう。
すると、残される選択肢は2つです。競売か、任意売却ですね。
もちろん、有利な方法は任意売却です。
任意売却をすると、以下のようなメリットがあります。
・引っ越し費用も確保することができる
・引っ越す時期も、こちらの意思を尊重してもらえる
逆に、競売になってしまうと、以下のような多くのデメリットが発生してしまいます。
・市場価格の6割~7割程度というとても安い価格で売却されてしまうため、競売後も多額の残債に苦しめられる
・引っ越し費用は出ないし、自分で確保することも難しい
・状況などを無視して、強制的に家を追い出される
・残債は一括請求される
・残債の支払いができない場合は、銀行の口座や給与なども差し押さえとなってしまう
この内容を見ると、ここまで来たら任意売却するしかないと考える方が多いことでしょう。
しかし、代位弁済をすると、保証会社はとても早い段階で競売手続きに進んでしまいます。
その競売手続きをストップさせて、物件を任意売却させるというのは簡単なことではありません。任意売却するためには、物件の抵当権も外さなければならないからです。
もちろん、販売時は抵当権設定したままで、売却する際に外すことになるので、抵当権を外してすぐに売却費用を保証会社が受け取ることができるのですが、抵当権を外すという行為は保証会社からするとせっかく全額肩代わりしたのに、その費用を取り戻すための物件を失う危険性を伴いますね。
そのため、保証会社に納得してもらえるよう、弁護士や司法書士などの専門家が仲介となり、説明して了承を得なければならないのです。
しかし、債権者の承諾が得られず競売となってしまうことももちろんあります。
任意売却は簡単ではないことを頭に入れておきましょう。
住宅ローンを延滞し8か月~10か月経過した場合
8か月経過した場合
保証会社が裁判所に競売申し立てを行います。すると、裁判所から差し押さえ通知書というものが送られてきます。この差し押さえに関しては法務局にも知らされ、登記簿謄本にも記載されてしまいます。
こうなってしまうと、もう任意売却はできません。
残された道は競売しかないのです。
債権者(保証会社)と相談し、任意売却の方法をとれる場合もありますが、この段階まで来てしまってから任意売却に進むことはとても難しいと考えておいた方がいいでしょう。
9か月経過した場合
担保不動産競売開始決定通知が届きます。
これは、債権者である保証会社が行った競売申し立てを、裁判所が受理したことを意味します。
ここまでくると、競売まであと少しです。
ここから約半年程度で家が安価で売られ、強制的に退去させられるでしょう。
10か月経過した場合
裁判所執行官による強制的な現況調査に進みます。鍵も勝手に開けられ、写真撮影や聞き取り調査等が行われるでしょう。
この調査の結果、競売の価格が決定されます。
住宅ローンを延滞し11か月以上経過した場合
競売の期間入札通知書が届きます。
この通知書には競売物件の入札開始~終了までの期間(1週間以上1か月以内)や開札日が記載されています。
その後、予定通り入札が開始され、一番高い価格を入れた方が物件を購入することになります。
こうなってしまうと、物件の所有者は購入者になってしまうので、強制的に引っ越しを命じられてしまいます。次の住まいが見つからなくても、引っ越し費用がなくても、出ていかなければならないのです。
こうなってしまってから、もっと早い段階で何とかしておけば良かったと思っても遅すぎます。
さらに、これで終了ではありません。
競売後、残債の一括支払い請求を命じられます。家を失ってもまだ、支払いがあるのです。これを支払えない場合は、給与や銀行口座なども差し押さえられてしまいます。
最悪の事態を免れるためには
1か月分の返済額を支払うことと、家を失いさらに残債を一括で支払うことを天秤にかけてみましょう。
どう考えても、1か月分の返済をしてしまう方が簡単ですね。
もちろん、様々な理由から住宅ローンの返済が困難となってしまうこともあるので、1か月分の返済もできない状況ではあるかもしれません。しかし、毎月分割で支払うと契約した住宅ローンですので、払えなくなってしまうと、契約違反として厳しい法的措置へと進んでしまいます。
何もせずにいると約1年ちょっとで家を失い、強制的な退去、口座の差し押さえ、ブラックリスト掲載等、非常に厳しい現状となってしまうのです。
そうならないために、住宅ローンの返済が難しくなったときはなるべく早い段階で以下のことを行うようにしましょう。
・毎月少しずつでも支払えるよう努力する
・支払いがどうしても困難だと思われる場合は、売却も考える
何もせず、金融機関からの連絡にも応じない、というのが一番よくありません。
そうなってしまうと、早い段階で競売手続きへと進んでしまうでしょう。そうなってから後悔してももう遅いので、まだ引き返すことが出来る段階で何かしらの手立てを考えることが大切です。
もし、毎月の返済額通りに返済していくことが難しくても、「毎月1万円ずつなら払えます」「2か月に1回ずつなら払えます」など、可能な限りの返済方法を提案し、それを実行していくことで金融機関の信用を取り戻すこともできます。
払う意思があり、どんなに長くても、滞納分を6か月以内に抑えておくことができると、法的措置を待ってくれることもあります。