住宅ローンの返済比率(返済負担率)の目安は?

返済比率というのは、年収に対しての年間返済額の割合のことを指します。

たいてい大きな買い物をする際、手元にあるお金と商品代金を照らし合わせ、買えるかどうかを判断しますね。

しかし住宅ローンを組む時は、手元にあるお金と照らし合わせることができません。今後入ってくる予定の未来の収入と照らし合わせなければならないのです。

しかし、何千万円の家と、未来の年収とでは、照らし合わせるのが難しいですね。

そこで必要になってくるのが、返済比率(返済負担率)です。

住宅ローンを組む際に返済比率を出すことで、自分の年収に対して、月々の返済の負担がどれくらいになるかということがわかるため、購入できる物件のおおよその金額を割り出すことができるのです。

家を購入する予定がある方は、返済比率の計算方法を覚えておくといいでしょう。

また、それぞれの金融機関でも「返済比率(返済負担率)の上限」というものを設けています。そして審査の段階で、この上限を超えない方のみ審査通過、としているのです。

こうすることで、お金を借りすぎたり、後々返済できず滞ってしまうという危険性を回避することができるからです。

では、この返済比率はどのように算出すると良いのでしょう?

また、返済比率はどれくらいだと返済が可能なのでしょう?

今回は、無理のない住宅ローンの返済を継続するための、返済比率の正しい目安についてお話していきたいと思います。

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<もくじ>

住宅ローン返済比率の計算方法

返済比率は以下のような計算方法で算出することができます。

「返済比率=年間返済額÷年収×100」

そして、たいていの金融機関では、返済比率30~35%程度を上限としています。ただし、計算する場合、次のような点に注意しましょう。

年収

返済比率を出す場合、自営業の方は経費等を差し引いた後の所得で計算しますが、会社員の方は社会保険料や所得税等の税金が引かれる前の、源泉徴収票の総支払額で計算されます。

税が引かれる前の額面金額で計算することで、金融機関が設定している上限を超えにくくなりローンの審査に通過しやすくなるため、審査にも有利ですし、返済比率があまり高く感じられないような計算方法だと購入者も安心して物件購入に踏み切れるので住宅メーカーにとっても好都合ですね。

しかし、これはあくまでも「一般的な計算方法」であり、リアルな返済状況を知りたい場合は年収の部分を「手取り額」で計算したほうがいいでしょう。

「購入したい物件を購入すること」や「審査に通過すること」だけにとらわれるのではなく、「購入できる価格の物件を購入し、今後確実な返済をしていくこと」が最も重要なことだからです。

ですから、審査に通過できるかどうかを判断することも大切ですが、その後で、実際に返済できるかどうかも知るために、総支払額での計算と同時に手取りの年収でも計算しておくことをお勧めします。

さらに、金融機関で提示している上限ではなく、20~25%程度の返済比率になるとより安心です。

年間返済額

住宅ローン以外の返済がない場合は、住宅ローンだけの年間返済額で計算していいのですが、もし、カードローンマイカーローン、クレジットカードのリボ払い等、住宅ローンの他にも借り入れがある場合は、それらの返済額も含めて計算し、返済比率を算出し、全ての返済が可能なのかどうか判断することも大切です。

住宅ローンの返済だけで考えていると、金融機関の上限をギリギリ超えないから大丈夫、と思っていても、実際に返済が開始されるとその他もろもろの返済に苦しめられ、返済が困難になるということも考えられるからです。

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金融機関で提示している返済比率の上限は30~35%

返済比率の計算方法がわかったところで、今度は目安について見ていきましょう。

先ほどもお話しましたが、金融機関で提示している返済比率の上限(目安)は、たいてい30~35%程度としているところが多いです。これくらいが、ギリギリ返済可能となる範囲だと考えられているからです。

例として、ある地方銀行の公式ホームページで提示されている返済比率を見てみましょう。

▼単独債務の場合
(年収)300万円未満・・・(基準)25%以内
(年収)400万円未満・・・(基準)30%以内
(年収)600万円未満・・・(基準)35%以内
(年収)600万円以上・・・(基準)40%以内

▼収入合算の場合
(年収)300万円未満・・・(基準)20%以内
(年収)400万円未満・・・(基準)25%以内
(年収)600万円未満・・・(基準)30%以内
(年収)600万円以上・・・(基準)35%以内

これは、例として地方銀行で提示している数字であって、どの金融機関でも同じというわけではありません。それぞれの金融機関でこのような基準を設けているので、実際に借り入れする予定の金融機関に確認しておくといいでしょう。

ただしフラット35の場合は、提供している場所は住宅金融支援機構であることに変わりないため、窓口がどの金融機関になったとしてもこの基準に変わりはありません。

フラット35の場合の基準は以下のようになっています。

(年収)400万円未満・・・(基準)30%以下
(年収)400万円以上・・・(基準)35%以下

返済比率の他にも、審査の基準となる項目は複数あるのですが、この返済比率を超えてしまうと、他の審査項目に問題がなくても通過することができなくなってしまいます。

住宅ローンの審査に無事通過するためには、提示されている返済比率の上限を超えないような金額の物件を購入するか、もしくは自己資金を入れ、借入額の調整をする必要があります。

しかしここで注意しなければならないのは、金融機関で提示している返済比率を超えないから絶対に返済ができるというわけではないということです。

金融機関が提示している返済比率上限は「貸すことができる範囲」であり、「その人が問題なく返済できる範囲」ではないからです。

金融機関が「貸せる」と判断しても、その他の借り入れが多かったり、思わぬ出費が増えてしまうと返済は困難になってしまいますね。

住宅ローンを組む時には、金融機関が提示する「貸すことができる範囲」を超えないかどうかチェックすると同時に、その返済比率が「問題なく返済できる範囲」なのかどうかもチェックしておくことが大切です。

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返済比率、本当の目安は20%

「問題なく返済できる範囲」を知るためには、他の借り入れ額も含め、手取りの年収で計算し、返済比率が20~25%以内に収まるかどうかを見てみるといいでしょう。

金融機関では、30~35%程度の範囲内にあれば、借入可能とされることが多いのですが、実際に返済する側の立場に立って考えると、35%では少し高すぎるように感じるからです。

家を購入するときは、住宅ローンの返済だけではなく、固定資産税がかかってきたり、マンションの場合は管理費や修繕積立金等が必要になります。一軒家だとしても、今後定期的な修繕が必要となるため、修繕費として月々貯めていくことも大切ですね。

また、駐車スペースがない場合は、駐車場料金が必要ですし、場合によって駐輪場料金などの費用がかかってくることもあるでしょう。

さらに、共働きで生計を立てている場合、今後、妊娠・出産・育児などにより一時的に妻が働けなくなることもあるかもしれません。すると収入が一時的に落ち込んでしまいます。

子供の進学によっては教育費がかさんだり、子供の一人暮らしのための仕送り等が必要になることもあるかもしれません。

この様な現実的な支出を考えると、金融機関や住宅メーカーが提示してくる返済比率をそのまま鵜呑みにして家を購入し住宅ローンを組むのは危険ではないでしょうか。

金融機関や住宅メーカーでは、「その人の今後の将来」ではなく「現段階でのこの住宅ローンの支払いに関してだけ」に目を向けているからです。

住宅メーカーが「買えますよ」と言っても、金融機関が「貸しますよ」と言っても、実際に買えるのか、本当に返せるのか、決めるのは物件を購入するあなたです。

まずは自分が抱えているローン(マイカーローン、キャッシングなど)と、今後支払うべきお金(管理費や修繕積立金、固定資産税など)を書き出し、さらに実際に物件を購入した場合の月々の返済額を見て、実際に返済が可能なのかどうか、少し厳しいかなと思うくらいに考えていくことが大切でしょう。

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住宅ローンの返済比率を計算する際の注意点

金利

計算する際、金利がどれくらいかによっても返済比率は変化していきます。今現在の金利が低いからとそのままの金利で計算すると、今後金利が上昇した時に返済額が増え、困難になってしまうこともあります。

4%程度の少し高めの金利で計算しておいた方がいいでしょう。

実際、銀行によってはその時の金利がどんなに低くても、4~5%で計算するようにしている場合もあります。

年収の5倍以内なら大丈夫?

返済比率を計算しなくても、借入額は年収の5倍以内なら大丈夫という考えもありますね。

しかし、同じ金額の借り入れでも、35年ローンなのか、30年なのか、25年なのかによって、月々の返済額が違ってきます。当然期間を短く設定すればするほど返済額は増えていきますね。

短期間で借り入れる場合は月々の負担も増えてしまうため、年収に対しては大丈夫でも、返済が困難になってしまうということもあります。

ですから、借入額だけではなく、何年で返済を終える予定なのかも考慮するため、返済比率を計算することが大切になってくるのです。

安定した職業の方

大手に勤めている方や公務員等、将来的にも安心感のある職業の方は、金融機関側からも好印象です。

今後も長く取引していくことで、定期預金などをしてくれる可能性もありますし、金融機関側からはメリットを感じるため、多少収入が低くても、返済比率が高くなってしまっても、将来的に見ると大丈夫だろうと判断され、中小企業だと通らない審査も通過できてしまうことがあるのです。

すると、返済比率が高く、月々の支払いが家計を圧迫する危険性を秘めながらも住宅ローンを組むこととなるので、実際に払い始めると返済が困難になってくるということもあります。

こうなってからでは遅いですね。

どんなに自信があっても、将来的に給料も上がる可能性が高くても、金融機関から「大丈夫ですよ。貸しますよ」と言われても、まずは返済比率の上限を20~25%程度と、自分で低く設定し、それを超えないくらいの借り入れをしていくことが大切です。

もしも返済を開始してから月々に余裕があると思えば、その分を貯蓄して後から繰上げ返済することもできますし、金融機関によっては返済額を増額するプランなどを用意していることもあります。

繰上げ返済をすると返済した元金にかかる利息分を全てなくすことができるのでお得ですし、期間を短くして早い段階で完済させることができます。

このように、返済に余裕がある場合は、後からいくらでも調整が可能なのですが、返済額が多すぎる場合はそれを調整するのは難しくなってくるため、始めは余裕を持たせておいた方が安心です。

 
このような注意点に気を付けながら、返済比率を計算し、借入額を考えていくようにしましょう。

ただし、目安とする返済比率は、価値観によっても変わってきます。

例えば、家よりも普段の生活を重視していて、家の他にも優先したいことがたくさんあった場合、返済比率が20%以内であっても住宅ローンが家計を圧迫しているように感じてしまうものでしょう。

その場合は、出来る限り返済比率が低くなるような借入額とする必要があります。

その逆で、素敵なマイホームに住むことが何にも変えることのできない幸せだと感じている場合、返済比率が35%を超えていても他の物を我慢することができるため、それほど住宅ローンが圧迫しているようには感じないかもしれません。

その場合は、40%程度でも返済は可能かもしれないですね。

その人それぞれの考え方や好み、価値観によっても感じ方はまるで違ってくるため、自分の中での優先順位を考え、マイホームがどれくらいの位置にあるのかも見極めておくことが大切です。

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