住宅ローン ボーナス払いとは?メリット・デメリット
住宅ローンの返済をする場合、月払いかボーナス払い併用かを選択することができるようになっています。
クレジットカードの支払いにも、「ボーナス払い」という便利な選択肢があるため、住宅ローンのボーナス払いに抵抗を感じない方も多いことでしょう。
むしろ、ボーナス月には一気に元金を減らすことができるので、月払いのみよりもお得な支払い方法と思っている方も多いかもしれませんね。
しかし、クレジットカードなどのボーナス払いと住宅ローンのボーナス払いそれぞれの仕組みは大きく異なっています。
そして住宅ローンの場合は、活用方法を間違えると支払うべき利息が増え、損をしてしまうこともあるのです。
もちろんメリットもあるのですが、ボーナス払いの仕組みをきちんと理解していないと損をしてしまう可能性が高くなります。
そこで今回は、損をしないために、住宅ローンの「ボーナス払い」とはどのような仕組みになっているのか、また、利用する上でのメリット・デメリットについて詳しくお話していきたいと思います。
住宅ローン ボーナス払いの仕組み
クレジットカードのボーナス払いと言うのは、ボーナス月だけに支払いをするというものですね。たいていは1回払いと同じ様に、ボーナス一括払いも手数料無料で利用することができます。
今はお金がないけれど、ボーナスが出る時なら払えるという場合、ボーナス払いを選択しておくと、支払いは数か月後なのに、利息がかからないので助かりますね。
しかし、住宅ローンのボーナス払いは、ボーナス払いだけを単独で利用することができません。毎月払いと併用しなければならないのです。
そのため、ボーナス払いを希望する場合は、毎月払いと並行してボーナス月の支払いもしていくという形になってしまいます。年に12回払うローン(毎月払い)と年に2回払うローン(ボーナス払い)の2本立てのようなスタイルですね。
ボーナス月だけに支払いがあるクレジットカードのボーナス払いとは大きく異なっています。
住宅ローンのボーナス払いの仕組みを、さらに細かく見ていきましょう。
①割合を決める
住宅ローンのボーナス払いを利用する場合は、一番最初に、ボーナス返済分と毎月返済分の割合を決めることになります。
もし、3,000万円の借り入れをする予定なら、2,000万円を毎月返済、1,000万円をボーナス返済というようにあらかじめ分けておくのです。
この配分は金融機関に決められた範囲内であれば、契約者が自由に決めることができます。
一般的に、フラット35の場合は、ボーナス返済分の上限は借入額の40%以内、銀行では借入額の40~50%以内と言われていますが、金融機関によって違ってくるので、上限については借り入れする金融機関に確認してみるといいでしょう。
②ボーナス月を決める
ボーナス払い分は、6か月間隔で、年に2回支払いをしていきます。
たいていは6月と12月にボーナスが出るので、6月と12月や、1月と7月などをボーナス返済月とすることが多いですね。
③2本立ての返済開始
例)3,000万円の借り入れで35年で組んだ場合
毎月返済:2,000万円、ボーナス返済:1,000万円と設定すると、2,000万円は12か月×35年=420になるので、420回に分けて支払っていきます。
ボーナス返済の1,000万円は、年に2回しか支払わないので、2か月×35年=70となり、70回に分けて支払っていくことになります。
このように、毎月分は年に12回、ボーナス分は年2回の返済があり、ボーナス月は毎月分とボーナス分両方を返済していくことになります。毎月分とボーナス分は2本立てのローンと同じように同時進行で返済が進んでいくのです。
返済額を月5万円、ボーナス月に20万円で設定した場合、毎月5万円の返済を行い、ボーナス月は毎月の5万円+ボーナス分の20万円=計25万円の返済をすることになります。
ボーナス払いのメリット・デメリット
住宅ローンのボーナス払いの仕組みを見てみると、毎月払いとボーナス払いが並行して進んでいくというだけで、特別なデメリットもないように感じるかもしれませんが、実はボーナス返済を利用したほうが総支払額が増えるという大きな落とし穴があるのです。
ボーナス返済を利用した方が一気に元金を減らすことができるため、お得なように感じられるのに不思議ですね。
しかし、返済の仕方によってはボーナス返済を利用することで総支払額を減らすこともできます。上手に活用するか否かで、損もすれば得もするのです。
そこで、この損得の仕組みも含めて、ボーナス払いを利用した場合のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
住宅ローンのボーナス払い「デメリット」
①返済総額が増える
住宅ローンは、元金に対して利息が加算されるため、元金が少なければ少ないほど加算される利息も減っていきます。
ですから、毎月返済の場合は、今月よりも来月、来月よりも再来月というように、返済日が来るたびに元金が少なくなっているため、減った元金分、そこに加算される利息も少なくなっているのです。
元金均等返済だと利息が減っていくたびに返済額も減っていくのでわかりやすいですね。
元利均等返済の場合は常に返済額が一定なのでわかりにくいかもしれませんが、返済額の中の利息と元金の割合はどんどん変わっているのです。
返済日が訪れる度元金が減るので、そこに加算される利息も減っていくのですが、毎月の返済額を一定にするというのが元利均等返済の仕組みですので、返済額を一定にするために、減った利息分、元金で補っていく形になります。
そのため、最初は利息の割合が大きいのですが、返済を続けるうちに元金の割合の方が大きくなっていきます。
ボーナス返済も毎月返済と同じように、元金に対して利息が加算されるため、元金が減ると利息もどんどん減っていきます。
しかしボーナス返済の場合は、6か月に1回しか返済日がやってきませんね。
すると6か月間元金が減らずにそのまま据え置かれている状態になるのです。その据え置かれた元金には毎月利息が加算されているため、毎月返済していくよりも加算される利息が増えてしまうのです。
これにより、ボーナス払いを利用したほうが総支払額が増えてしまうことがあるのです。これが、よく言われている「ボーナス返済の落とし穴」です。
ただし、3,000万円の35年ローン、金利2%で50%をボーナス併用にした場合、増えるのは5万円程度です。
借入額や利息が何%かによっても違ってきますが、これくらいの差であれば気にならない方も多いかもしれませんね。
また、総支払額が増えるのは、期間を変えず、月々の返済額を減らした場合です。
もし、ボーナス返済を利用して、月々の返済額は変えずに期間を短縮させたとすると、短くなった期間分利息が減るため、総支払額はボーナス返済を利用した時の方が少なくなります。
②ボーナスがなくなったときに困る
ボーナスというのはお給料と違って、確実に支給されるものではありませんね。
その会社のその年の業績によって変動することも多く、場合によって支給されなくなってしまうこともあります。
ですから、もらえることが確実にわかっている場合はいいのですが、もしかしたらもらえなくなるかもしれないという場合、ボーナス返済を利用するのは危険です。
ボーナスをもらえなくなったときにローンの返済が困難になってしまう危険性があるからです。
ボーナス返済を利用しても、毎月ボーナス返済分を月々のお給料から少しずつ貯めていて、ボーナス月には貯蓄から支払うという形をとっておくことができるならいいのですが、ボーナスだけをあてにしていた場合、ボーナスが支給されなくなるとローンの返済が難しくなってしまいますね。
後からボーナス返済をやめて、毎月払いのみの返済方法に変更することは可能ですが、その場合変更手数料がかかってしまいます。
また、毎月均等払いにすると、突然月々の返済額が増えてしまうため、家計を圧迫してしまうかもしれません。
③錯覚を起こしやすい
ボーナス返済の割合を増やすと、毎月の返済分が少なくなるため、月々の返済額を抑えることができますね。すると、少なくなった返済額を見たときに、これくらいなら払えるかもしれないという錯覚に陥ってしまうことがあります。
本当に支払うことができるのならいいのですが、その錯覚によって借入額を高くしすぎると、ボーナス月の負担は大きくなり過ぎて、実際に返済が開始すると苦しくなってしまうことがあります。
住宅ローンのボーナス払い「メリット」
①月々の返済負担を軽くすることができる
ボーナス払いを利用せず、毎月払いのみだった場合、月々の返済額は増えてしまいますね。
例)3000万円・35年ローンの場合
・ボーナス払いを1000万円とした場合
利息を考えずに単純に計算すると、毎月払い分の2000万円÷420回=約47,619円
月々の返済額は47,619円程度になります。
・ボーナス払いを利用しない場合
こちらも利息を考えずに計算すると、3000万円÷420回=約71,428円
月々の返済額は71,428円程度になります。
ボーナス分の割合をどれくらいにするかによっても違ってきますが、この例で見てみるとボーナス払いを利用したほうが20,000円以上も返済額を減らすことができますね。
このように、ボーナス返済の割合が多ければ多いほど、月々の返済負担を軽くすることができるのです。
毎年ボーナスが確実にもらえる場合や、月々に余裕を持たせたいときは便利ですね。
②総支払額を減らすことができる
返済額を抑えるためにボーナス払いを利用すると総支払額が増えてしまうことがありますが、返済額を変えずに期間を短縮させる方法でボーナス払いを利用すると、総支払額を減らすことができます。
例)3,000万円(毎月返済分が2000万円、ボーナス返済分が1,000万円)の借り入れの場合
3,000万円を420回で支払ったとき、利息を考えずに単純に計算すると71,428円が毎月の返済額になりますね。
この月々71,428円という返済額を変えずにボーナス返済を利用すると、当然期間が短縮されます。
280回÷12か月=約24年
35年かかるはずだったローンが約24年で返済を終えることになるため、その短くなった11年分の利息は減っていきます。すると総支払額は当然少なくなるでしょう。
ただし、ボーナス返済分も増えるため、ボーナス月の負担はとても大きくなってしまいます。
24年×2か月=48回
ボーナス返済分の1000万円÷48回=約208,333円
ボーナス返済分は毎回約208,333円となります。
更に月々の返済分もありますね。
208,333円(ボーナス返済分)+71,428円(毎月の返済額)=279,761円
ボーナス月には、約279,761円程度の支払いが必要となってくるのです。
これは利息を無視した計算なので、利息を加算するとさらに返済額は増えていきます。
このような支払いが可能な場合は、ボーナス返済を利用しても総支払額を減らすことができるでしょう。
もしくは、ボーナス分の割合を減らして、短縮する期間も5年程度にとどめ、負担を減らしながらほどほどのお得感を得るという方法もあります。
上手に調整すると、それほど大きな負担やリスクを抱えずに、総支払額を減らすというメリットだらけの方法を手に入れることもできるでしょう。
住宅ローン「ボーナス払い」の失敗例、成功例
一般的に言われている、ボーナス返済を利用した場合の失敗例・成功例は以下のようになっています。
・失敗例「ボーナス返済分40~50%程度と高めに設定し、返済期間は35年のままにした場合」
月々の返済が不安だという場合、「ボーナス払いを利用すると月々の支払いが楽になりますよ」という金融機関担当者の言葉に乗せられてしまう方がいます。
そしてボーナスの割合を増やし、月々の返済に余裕を持たせすぎるくらい持たせてしまった場合、あまり得はできません。
もちろん月々の返済には余裕が出ます。
しかし、その分ボーナス月の負担が大きくなってしまうし、年間に支払う元金はボーナス返済を利用していない場合と同額だった場合、ボーナス返済を利用しない場合よりも利息が増え、総支払額も増えてしまいます。
こうすることで返済しやすくなると感じる方にとってはいいのですが、総支払額が増える、ボーナス月の負担が増える、というデメリットが気になります。
ネット上で言われている「ボーナス返済は危険」の理由はこのような返済方法をしてしまったケースのことを指しています。
・失敗例「ボーナス返済を利用して、期間を大きく短縮してしまった場合」
「期間を短縮したら得をする」という言葉を信じて、期間を大きく短縮させると、月々の支払いにも余裕が持たせられませんし、ボーナス月の負担はとても大きくなってしまいます。
もちろん、短くなった期間分の利息が減り、総支払額も当然抑えることができるので、収入に余裕がある方にとってはお得な方法と言えます。
しかし、無理に短縮させすぎると、場合によって返済が困難になってしまうことも考えられるので、危険です。
・成功例「ボーナス返済分を10%程度にとどめ、返済期間を5年程度縮めた場合」
ボーナス返済を10%程度にとどめ、期間を5年程度短くすると、月々の返済額はボーナス返済を利用しない場合よりも数百円上がります。月々の負担が軽くなるわけではありませんが、数百円であればそれほど気にならないのではないでしょうか。
さらにボーナス分もありますが、10%程度であれば、ボーナス月の負担もそれほど大きくはならないでしょう。
そして、期間が5年短くなるため、5年分の利息が減り、総支払額も減っていきます。
もちろん、ボーナス返済分10%で5年短縮と決める必要はありません。
このように少しずつ調整しながら、自分なりに返済しやすい割合や期間をシミュレーションして検討するといいでしょう。
このようにボーナス返済は、活用方法によっては、負担や総支払額が増減しますが、上手に活用すると負担をかけずに得することもできるのです。
ただし、これはあくまでも例に過ぎないので、「総支払額が増えたとしても少しなので、自分が支払いやすい方法を選択したい」「収入に余裕はあるので、返済が困難になる心配はない。支払わなくてもいい利息はどんどんカットしたい」等のように考えている方にとっては、失敗例でも成功となる場合もあるでしょう。
住宅ローンボーナス払いの誤解
ボーナス払いと言うと「得になる」「利息を減らせる」と考える方が多い反面、ネット上では「ボーナス返済は危険」「総支払額が増える」などという記事も目立っています。
そのため、色々な噂に振り回されて「ボーナス返済」に関して誤解してしまう方が増えているように感じます。
しかしボーナス返済は、人によっては失敗例も成功と感じられることがあるように、使い方や考え方、収入や支出、貯蓄など、その人を取り巻く環境によって善にも悪にもなるものなのです。
ですから、様々な噂やイメージ、友人・知人の経験談、金融機関担当者の誘導などにとらわれることなく、自分ならどうなのか、と、冷静に考え判断していくことが大切です。
返済シミュレーションなどを利用しながら、一番返済しやすくお得になる方法を自分なりに探してみるのもいいですね。
また、ボーナス返済を利用せず、ボーナス支給時に繰り上げ返済をするという方法もお勧めです。
ボーナスというのはその会社の業績に左右されるものなので、何十年と続く住宅ローンを支払っている間にボーナスがなくなってしまう危険性も秘めています。
そのためボーナスに不安がある方は、返済が苦しくなってから慌てることのないように、ボーナス返済そのものを利用せず、ボーナス支給があり、余裕がある時だけに繰上げ返済をしていくというのもいいのではないでしょうか。
繰上げ返済をして期間が短くなると、その分利息も減らすことができるので、ボーナス返済を利用して期間短縮した時と同じように得をすることができます。
さらに、決められたボーナス返済は何が何でも支払わなければなりませんが、繰上げ返済であれば自分で自由に行うことができるので、突然大きな出費があったときは繰り上げ返済をやめることもできるのです。
その時の状況に応じて対応できるので安心ですね。
ただし、その金融機関によっては繰上げ返済をするたびに手数料がかかる場合もあるので、このような方法を取りたい場合は、繰上げ返済手数料が無料のローンを組めるといいでしょう。