事業ローンとは
事業用資金がたりない時に使える専用ローンがあることをご存知でしょうか。自分で仕事をしている人なら知っておきたい事業ローンの基礎知識を紹介します。
銀行や、その他貸金業者によってはビジネスローン・ビジネスサポートプランなど異なる名前がつけられていることもありますが、知っておきたい基礎知識は同様です。
キャッシュフローを安定させて経営の危機を乗り切るためのノウハウとして、ひと通り目を通しておきましょう。
<もくじ>
事業ローンとは
事業ローンとは、会社や個人事業主、経営者に特化したローンのことです。事業の運転資金やつなぎ融資など、いろいろなタイミングで活用できます。「売る商品を作るために仕入れが必要だけど現金がない」「お金が入ってくるタイミングと出ていくタイミングにギャップがあって、一時的にキャッシュフローが悪化する」など、いざという時に便利です。
売上がきっちり立っていて損益計算書上では優良企業のように見える会社も、現金が足りなくなって不渡りを出してしまうと、黒字倒産となりかねません。
中小企業特有の悩みを顕著に表す言葉として「勘定合って銭足らず」が有名です。売上が伸びるほど資金繰りが苦しくなるケースがあり、会社としては成長しているはずなのにお金がうまくまわらなくなって、資金ショートを起こしてしまうことがあります。
そんな状態を予防するには、窮地を乗り切る資金調達方法が不可欠でしょう。融資を待っていたのでは間に合わない状況では、事業ローンが役立ちます。
事業ローンとファクタリングの違い
資金繰りが苦しい時の手段として、ファクタリングも検討されます。ファクタリングとは、売掛債権を買い取ってもらって、現金化する仕組みのことです。
一定の手数料を割引した金額で買取がなされて、期日前に現金を手にすることができます。一般的には事業ローンのほうが現金調達コストは低く、有利な条件になるようです。
また、ファクタリングは個人事業主が使えないことも多いところがネックでしょう。ノンバンクのビジネスローンには、個人事業主も利用可能商品がたくさんあります。
事業ローンは総量規制の対象外で借入できる
事業ローンの大きな特徴として、総量規制の対象外とされている点があげられます。総量規制とは、対象業者から個人が借りられるお金の上限を年収の3分の1までとするルールです。
事業資金としての借りるお金は総量規制の計算対象から外れるので、ノンバンクとの契約でも上限が適用されることはありません。事業資金としてお金を借りる場合には、まとまった金額を希望する人もたくさんいます。年収との兼ね合いで即座にはねられる心配はないので、心配には及びません。
貸金業者の「事業ローン」を活用するメリット3つ
会社としてお金を調達する手段には、銀行の融資もあります。ここでは貸金業者の事業ローンを活用するメリットを整理しておきましょう。
銀行の融資より手続きが簡単
事業ローンはもともと銀行の中小企業向け商品として開発された経緯があります。公的機関や銀行で融資を受けるには、決算書や登記簿謄本、納税証明書などたくさんの書類を用意する必要があって、手続きが大変です。
計画的な借入ならまだしも、トラブルに際して資金繰りが悪化したケースのように緊急の状況では間に合いません。そこで活用したいのが事業ローン。ノンバンクが提供している商品の中には提出物が少なくてすむものも多く、利用しやすいメリットがあります。
スピーディーな借入も可能
ノンバンクの事業ローンの審査は、個人向けカードローンで培った独自のノウハウをもとに進めていくケースも多々あります。個人向け商品に準じた対応スピードで審査が進めば返答までの期間も短く、デッドラインが迫った状態での利用でも安心です。
最短即日融資可能商品まであり、急ぎの資金調達にも柔軟な対処を期待できます。普段の融資はメインバンクに依頼をして、どうしようもない急ぎのタイミングでは事業ローンで帳尻を合わせるなど、使い分けるのも良いでしょう。
担保や保証人なしでも利用できる
事業ローンの中には、不動産担保や保証人なしでも利用できるものがあります。自社ビルや事務所など不動産を持っていない経営者でも使いやすく、現金を融通しやすいところが特徴です。一定の資産があれば、あえて有担保ローンを選択することにより、金利を低くおさえることもできます。有担保ローンは抵当権設定などある程度は時間がかかる手続きも多いため、ゆとりを持ったスケジュールで考えましょう。
銀行以外の貸金業者「事業ローン」を活用する時の注意点
上手に活用すればメリットが多い事業ローンですが、気をつけたいポイントもいくつかあります。申込前に知っておきたい事業ローンの注意点について、ひと通り見ていきましょう。
銀行や公的融資と比較して高金利
銀行や公的機関の融資と比較して審査難易度が低めな分だけ利息水準は高く、長期的な資金調達には不向きです。まとまった資金を融通してもらったケースも同様で、会社の収支を圧迫する要因となりかねません。参考までに、主要な事業ローン商品と公的融資の金利水準を比較します。
日本政策金融公庫 普通貸付 2.06%~2.55% ※担保を不要とする融資の場合
審査の柔軟性や対応スピードの利がある分だけ、どうしてもコストがかさむところは難点です。できるだけ早く返済を進めることでコストを軽減できますから、お金の余裕があるタイミングでの前倒しも考えましょう。
将来価値や成長期待は考慮されにくい
銀行や公的融資の特徴として、今後の成長期待や商品開発が進んで実益化した時の価値も考慮される傾向があります。
事業ローンはあくまでも今の業績や経営状態をもとに審査が進むため、まとまった資金の枠がもらえないケースもあるはずです。研究開発や新規事業への投資としてお金が必要な場合には、依頼先を変える方法も考えましょう。調達しようとしている資金の性格に合わせて、いくつかの金融機関に打診します。
また、将来価値や成長期待が考慮されにくいということは創業資金の調達は難しいという意味です。自己資金だけではまとまったお金が用意できない場合には、事業計画書をきちんと作成、公的融資や地方自治体が窓口の制度融資を考えましょう。
個人用カードローンとの使い分けも必要
一般的なカードローンの中には事業用資金として使っても問題ないものもあります。事業用には使えないカードローンでも生活資金をまかなうために利用、浮いた分をビジネスにまわすことは可能です。
「事業ローンの審査に通過する自信はないが、個人として使えるカードを持っている」場合は、あえて新規の申込をする必要はないケースもあります。
ビジネスに使うお金、個人の生活資金は分けて考えるのが基本ですが、いざという時には自分自身からお金を借りるイメージで柔軟な発想をしてください。
事業ローンの選び方 5つのポイント
事業ローンには数えきれないくらいの選択肢があって、どの会社に申込をしたら良いのか迷うものです。迷った時に注目したいポイントをまとめていきます。
審査スピード
即日融資に対応している会社は審査スピードが比較的早く、数日以内に資金を融通してもらえる可能性が高くなります。必要な書類を用意したり審査を待ったりする時間を考えて、余裕があるスケジュールを考えましょう。
どうしても急ぎの時には、お金が必要なタイミングまでに契約するにはどうしたら良いのかの問い合わせをおすすめします。教えてもらった資料はきちんと手もとに用意して、やり取りがスムーズに進むように協力しましょう。
営業エリア
銀行の事業ローンに多いのですが、支店エリア周辺に対象を絞って募集しているものもあります。インターネットで調べて申込をする場合はとくに営業エリアに注意しましょう。
せっかくたくさんの情報を入力して申込を行っても、エリア外では水の泡です。営業エリアを含めた申込条件をきちんと確認、契約できる可能性が高いところに決めてください。
返済方法
同じ金利水準で借りても、返済方法の違いによって支払い総額が変わってくるケースがあります。支払い総額が少なくなる方法が望ましい、毎月の支払いを一定にしたいなど事業の状況をふまえた返済方法を選び、無理なく返していきましょう。
具体的には、残高スライドリボ払い・元利均等返済・元本一括返済方式などがあります。ホームページの中に返済シミュレーションができるツールがあれば試算結果を確認して、無理なく返せるかを判断しましょう。
事業融資型・カードローン型
事業ローンには、主に銀行が扱う事業融資型商品・カードローン型商品の2種類があります。事業融資型商品は、決まった金額を融通してもらって、コツコツ返していくタイプです。一方のカードローン型は、限度額を設定されます。
個人で行うキャッシングのように審査によって決まった限度枠の範囲で、お金が必要になる度に借入するシステムです。どちらが良いというわけではなく、利用しやすい方を選択ください。
違法な金融業者でないこと
年末年始など資金繰りが悪化しやすいタイミングをねらって、悪質な業者が誘いをかけてくるリスクがあります。法人取引は個人よりも高額になるケースが多く、全うな金融業者とのおつきあいは大切です。
違法な金融業者かどうか調べる時には、日本貸金業協会の検索ツールが役立ちます。金融庁でも随時アップデートされた一覧表を出しているので、合わせて確認してみましょう。
お金が本当に必要な時ほど「どこでも良いから助けてほしい」という思考パターンになりがちです。大切な会社や仕事を守るためにも、信頼できる事業ローンを選択しましょう。
事業ローンに関する Q&A
事業ローンに関して、よくある質問と回答をまとめていきます。状況をふまえた資金調達を選択するには、正しい知識が大切です。気になる項目に目を通し、経営の危機に備えましょう。
事業ローンでどのくらい借りられる?
どのくらい借りられる?という質問にはっきりと答えることはできません。事業ローンで借入できる金額は、審査によって決まります。
上限金額が高い会社ほどたくさん借りられるとは限らないので、あくまでも目安として考えてください。おつきあいが長くなって実績を重ねていけば、まとまった金額を融通してもらえる可能性も出てきます。
事業ローンの利用条件は?
事業ローンの利用条件は、申込をする会社によって変わってきます。一般的には、法人もしくは個人事業主で十分な返済能力を有することが条件です。
法人で利用する場合、代表者の連帯保証とされるケースもあります。連帯保証人になると、会社が破産した際に責任逃れはできません。
個人としても返済が難しいとなると、代表者個人として破産の申し立てが必要です。前述のように保証人不要の会社も中にはあるので、申込先を選択する際の判断基準の1つとしましょう。
赤字でも事業ローンは使えるの?
赤字でも審査が通るケースはあります。決算内容が優れなくて銀行の融資が難しいため、事業ローンを選択する会社もあるようです。
銀行の扱っている商品よりもノンバンクのほうが柔軟な審査を受けられる可能性が高く、赤字でも利用できる見込みがあります。ノンバンク系ビジネスローンのビジネクストを例に出すと、ホームページにこんな記載がのっていました。
Q赤字決算でも可能か。
A過去の財務内容だけでなく現状のご商売に鑑み融資実行の可能性を検討してまいります。営業担当までお気軽にご相談ください。
引用:http://www.businext.co.jp/faq/
銀行のビジネスローンだと、最後の決算で債務超過がないことを条件にしていることがあり、門前払いにされてしまうリスクがあります。申込条件をよく読んで、可能性が高い会社に申込をしてください。