住宅ローン控除は増改築でも適用される?

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅を購入した時に適用されるというイメージが強いかもしれませんが、増改築を行った際も適用となる場合があるのです。

さらに、住宅借入金等特別控除の他にも、増改築の種類によって適用される、別の特別控除もいくつかあります。

しかし、「控除の種類がたくさんあるなら、リフォームをしたらどれかに当てはまる」と安易に考えてはいけません。

増改築の際の控除は、どれも厳しい条件をクリアしなければならないのです。

ただ、その条件がどのようなものなのかを工事前に知っておくと、その条件内の工事に変更したり、調整することもできますね。

それにより、受けられなかった控除が受けられるようになることもあるため、ここで、増改築の控除の条件や内容について確認しておきましょう。

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控除の対象となる工事

住宅を購入した場合だけではなく、以下のような工事を行った場合、控除の対象となることがあります。

・増改築工事
・バリアフリー改修工事
・省エネ改修工事
・耐震工事
・多世代同居改修工事

増改築をした際に適用される控除の種類

・住宅借入金等特別控除(工事費用100万円超、年間限度額40万円、控除期間10年、ローン10年以上)
・特定増改築等住宅借入金等特別控除(工事費用50万円超、年間限度額12.5万円、控除期間5年、ローン5年以上)
・住宅特定改修特別税額控除(工事費用50万円超、年間限度額25~35万円、控除期間1年、ローン無し)
※年間限度額:省エネ25万円・太陽光発電設置35万円
・住宅耐震改修特別控除(工事費用決まりなし、年間限度額20万円~25万円、控除期間1年、ローン無し)
※年間限度額:8%の消費税が含まれている場合は25万円が限度、それ以外は20万円が限度。

一般的には、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が適用されるケースが多くなっていますが、省エネやバリアフリーの工事を行う際は、特定増改築等住宅借入金等特別控除や住宅特定改修特別税額控除も適用となる場合もあります。

また、耐震工事を行った際は、その物件によって住宅耐震改修特別控除が適用となることもあります。

適用条件は厳しいものとなっているので、実際には控除が受けられる方が限られてきてしまいますが、場合によって、全ての控除の適用対象となることもあります。

2つ以上の控除の対象となった場合、両方の控除が受けられる場合と、いずれか1つを選択しなければならない場合があります。

<両方の控除が受けられる場合>
・住宅耐震改修特別控除と住宅借入金等特別控除のどちらの適用条件もクリアできた時、両方の控除が受けられます。

<いずれか一つを選択しなければならない場合>
・住宅借入金等特別控除と特定増改築等住宅借入金等特別控除のどちらの適用条件もクリアできた時、どちらか1つを選択しなければなりません。
・住宅借入金等特別控除と住宅特定改修特別税額控除のどちらの適用条件もクリアできた時、どちらか1つを選択しなければなりません。
・住宅特定改修特別税額控除と特定増改築等住宅借入金等特別控除のどちらの適用条件もクリアできた時、どちらか1つを選択しなければなりません。
・住宅耐震改修特別控除と住宅特定改修特別税額控除のどちらの適用条件もクリアできた時、どちらか1つを選択しなければなりません。
・住宅特定改修特別税額控除と住宅借入金等特別控除と特定増改築等住宅借入金等特別控除の、どの適用条件もクリアできた時、いずれか1つを選択しなければなりません。

それぞれ、適用された場合の控除額や期間は違ってくるため、選択しなければならない場合は、どの控除が自分にとって一番お得になるのか考える必要がありますね。

また、一度選択するとその後の全ての年において、選択した控除だけが適用されることになり、途中で変更はできないため、慎重に決めることが大切です。

控除額の計算方法については、それぞれの控除についての説明欄に記載しています。計算し、どの控除のメリットが1番高いのか確認してみましょう。

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増改築の際に適用される住宅ローン控除とは

増改築工事を行った際に適用される控除は、先ほど挙げた4種類になります。(住宅借入金等特別控除・特定増改築等住宅借入金等特別控除・住宅特定改修特別税額控除・住宅耐震改修特別控除)

それぞれの控除の内容と条件について見ていきましょう。

住宅借入金等特別控除

こちらは、住宅を購入した際にも受けられる控除になっています。控除期間や控除額も、購入した時と同じになっています。

期間:居住してから10年間
控除額:年末借り入れ残高の1%
限度額:年間最大40万円
計算式:控除額=年末残高×1%

ただし、こちらも住宅を購入した時と同じように、自分が支払っている以上の控除は受けられません。年末残高の1%で40万円を限度として、そのうち、自分が支払っている所得税から還付されることになるため、実際に還付される金額が知りたい場合は、自分が支払うべき所得税の額を確認する必要があります。

また、平成11年~18年、平成21年~33年までに入居している方は、所得税で引ききれなかった分が住民税からも控除されます。平成19年~20年の間に入居された方は、住民税から控除はされませんが、その分所得税の控除期間が15年に延長されます。

限度額についても、入居した年によって違ってくるため、過去にさかのぼって申請したい場合は、以下のサイトから確認しておきましょう。

国税庁 №1216 増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

住宅借入金等特別控除の条件

工事する箇所や内容、費用等についても細かい規定があります。あてはまらないと控除は受けられないのですが、もしも控除が受けられるなら借入額の1%が所得税から引かれることになるので、しっかりと確認して、対象となる場合はぜひ申請しておきましょう。

1.工事に関する条件

以下のいずれかに該当する工事ではない場合、適用の対象外となってしまいます。

壁、柱、床、梁、屋根、階段など、全体の2分の1を超える規模の修繕。(間仕切り壁や間仕切り柱、最下階の床、外階段は除く)

マンションの場合は、共有部分ではなくその人個人が所有する部分の工事で、全体の2分の1を超える床、階段、壁について行うもの。

居室、台所、お風呂場、トイレ、洗面所、納戸、玄関や廊下の一室の床や壁全部の修繕・模様替え工事。

建築基準法に基づく構造強度、もしくは耐震のための工事。

以下のようなバリアフリー改修工事。
・手すりの設置
・お風呂場改良
・トイレ改良
・段差解消
・床の滑り止め
・引き戸へ取り換え
・階段の勾配緩和
・廊下の幅を拡大

※ただし、改修工事後、平成19年4月以降に居住すること。さらに平成33年12月31日までの工事に適用。

以下のような省エネ改修工事。
・床の断熱
・壁の断熱
・天井の断熱
・太陽光発電装置設置

ただし、これらの工事は、居室全ての窓の改修工事と併せて行われた場合に限ります。また、改修工事後、平成20年4月以降に居住すること。さらに平成33年12月31日までの工事に適用されます。

このように、見てわかるように一般的な水回り工事や壁紙張替えなどの、ちょっとしたリフォームでは適用とはならないのです。

ただし、増築に関しては、何平方メートル以上の増築でなければならないなどの規定はありません。

2.住宅に関する条件

本人名義の家やマンションで、本人が住んでいる住宅の増改築工事であること。
工事後の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が居住用であること。
100万円以上の工事費用がかかり、居住用の工事費用はその2分の1以上かかっていること。

3.本人に関する条件

増改築から6か月以内に居住し、適用を受ける年の12月31日まで住んでいること。
所得の金額が3000万円以下であること。
10年以上のローンを組んでいること。(勤務先等から無金利もしくは金利0.2%未満の借り入れは対象外)
居住した年を含め、その前後2年間(計5年間)に長期譲渡所得の課税の特例措置などの適用を受けていないこと。

これらの条件を満たしたときに、上にあげたような控除を受けることができます。大規模なリフォームを考えている場合は、可能であれば、この条件に当てはまるような工事を含めるといいでしょう。

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特定増改築等住宅借入金等特別控除

省エネ改修工事やバリアフリー改修工事、多世帯同居改修工事を行った場合、一定条件をクリアすると、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けることもできます。

しかし、住宅借入金等特別控除と特定増改築等住宅借入金等特別控除を併用することはできないので、両方の条件をクリアできた場合は、どちらかを選択することになります。

特定増改築等住宅借入金等特別控除の内容や条件については、工事の種類(省エネ、バリアフリー、多世帯)によって若干違ってくるため、それぞれ分けてまとめていきます。

省エネ改修工事の場合

1.控除の内容

<平成26年4月1日~平成33年12月31日までに居住した場合>
期間:5年間
控除額:最高12万5千円
特定増改築等住宅借入金等特別控除限度額:250万円
増改築等の住宅借入金等年末残高の合計の限度額:1000万円まで
計算式:控除額=a.年末の借り入れ残高のうち特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる金額×2%(年末の借り入れ残高ーa)×1%

<平成20年4月1日~平成26月3月31日までに居住した場合>
期間:5年間
控除額:最高12万円
特定増改築等住宅借入金等特別控除限度額:200万円
増改築等の住宅借入金等年末残高の合計の限度額:1000万円まで
計算式:控除額=a.年末の借り入れ残高のうち特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる金額×2%(年末の借り入れ残高ーa)×1%

2.条件

・本人の所有する住宅で、一定の省エネ改修工事(※)を含む増改築の工事を行った場合。(平成28年4月1日以降の工事であること)
・工事をした日から6か月以内に居住し、その年の12月31日まで住み続けていること。
・5年以上の住宅ローンを組むこと。
・所得金額が3000万円以下であること。
・工事後の床面積が50平方メートル以上で、2分の1以上が居住用であること。
・工事費用が50万円を超え、その2分の1以上が居住用部分の工事費用であること。
・居住した年を含み、前後2年の計5年間、長期譲渡所得の課税の特例等を受けていないこと。

※一定の省エネ改修工事とは、全ての部屋の全ての窓の改修工事、もしくはその工事と併せて行われる天井・床・壁の断熱工事や、それらの工事を併せて行われる太陽光発電装置設置など。

省エネ改修工事の際の特定増改築等住宅借入金等特別控除に関して、さらに詳しい内容については、以下のサイトをご確認ください。

国税庁 №1217 借入金を利用して省エネ改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)

バリアフリー改修工事の場合

1.控除の内容

<平成26年4月1日~平成33年12月31日までに居住した場合>
期間:5年間
控除額:最高12万5千円
特定増改築等住宅借入金等特別控除の限度額:250万円
増改築等の住宅借入金等年末残高の合計の限度額:1000万円まで
計算式:控除額=a.年末の借り入れ残高のうち特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる金額×2%(年末の借り入れ残高ーa)×1%

<平成19年4月1日~平成26年3月31日までに居住した場合>
期間:5年間
控除額:最高12万円
特定増改築等住宅借入金等特別控除の限度額:200万円
増改築等の住宅借入金等年末残高の合計の限度額:1000万円まで
計算式:控除額=a.年末の借り入れ残高のうち特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる金額×2%(年末の借り入れ残高ーa)×1%

2.条件

・本人が所有する住宅で、一定のバリアフリー改修工事(※)を含む増改築工事を行い、平成33年12月31日までに住んでいること。
・工事をしてから6か月以内に居住し、その年の12月31日まで住み続けていること。
・所得金額が3000万円以内であること。
・工事後の床面積が50平方メートル以上で、その2分の1以上が居住用であること。
・5年以上の住宅ローンを組んでいること。
・工事費用が50万円を超え、その2分の1以上が居住用の工事費用であること。
・居住した年を含み、前後2年の計5年間、長期譲渡所得の課税の特例等を受けていないこと。

※一定のバリアフリー改修工事とは、50歳以上、要介護・要支援の認定を受けている、所得税法上の障害者、65歳以上の高齢者と同居している親族、の、いずれかに該当する方が行う、高齢者が自立した日常生活を営むための工事のことを指します。

バリアフリー改修工事の際の特定増改築等住宅借入金等特別控除に関して、さらに詳しい内容については、以下のサイトをご確認ください。

国税庁 №1218 借入金を利用してバリアフリー改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)

多世帯同居改修工事の場合

1.控除の内容

期間:5年間
控除額:最高12万5千円
特定増改築等住宅借入金等特別控除限度額:250万円
増改築等の住宅借入金等年末残高の合計の限度額:1000万円まで
計算式:a.年末の借り入れ残高のうち特定増改築等住宅借入金等特別控除の対象となる金額×2%(年末の借り入れ残高ーa)×1%=控除額

2.条件

・本人が所有する住宅で、一定の多世帯同居改修工事(※)を含む増改築工事を行い、平成33年12月31日までに住んでいること。
・工事をしてから6か月以内に居住し、その年の12月31日まで住み続けていること。
・所得金額が3000万円以内であること。
・工事後の床面積が50平方メートル以上で、その2分の1以上が居住用であること。
・5年以上の住宅ローンを組んでいること。
・工事費用が50万円を超え、その2分の1以上が居住用の工事費用であること。
・居住した年を含み、前後2年の計5年間、長期譲渡所得の課税の特例等を受けていないこと。

※一定の多世帯同居改修工事とは、他の世帯との同居に必要となる設備の増加による増築、改築、修繕、模様替えのことを言います。(台所、お風呂場、トイレもしくは玄関のうち、2つ以上がそれぞれ複数になること)

多世帯同居改修工事の際の特定増改築等住宅借入金等特別控除に関して、さらに詳しい内容については、以下のサイトをご確認ください。

国税庁 №1223 借入金を利用して多世帯同居改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)

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住宅特定改修特別税額控除

省エネ改修工事を行った場合、特定増改築等住宅借入金等特別控除の他に、住宅特定改修特別税額控除が受けられることがあります。

住宅特定改修特別税額控除が適用されるのは1年だけですが、工事費を現金で支払ったとしても(ローンを組まなくても)受けることが出来ます。

ただし、住宅特定改修特別税額控除だけではなく、住宅借入金等特別控除や特定増改築等住宅借入金等特別控除のどの適用条件もクリアできた場合、いずれか1つを選択しなければなりません。

1.控除の内容

<平成26年4月1日~平成33年12月31日に居住した場合>
期間:居住年のみ
控除額:工事費用の10%
限度額:一般的な省エネ改修工事の場合は250万円を限度として、その10%、太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は350万円を限度として、その10%。
計算式:控除額=工事費用×10%(※100円未満切り捨て)

<平成21年4月1日~平成26年3月31日に居住した場合>
期間:居住年のみ
控除額:省エネ改修工事費用の10%
限度額:一般的な省エネ改修工事の場合は200万円を限度として、その10%、太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は300万円を限度として、その10%。
計算式:控除額=省エネ改修工事費用×10%(※100円未満切り捨て)

2.条件

・一定の省エネ改修工事(※)を行い、平成21年4月1日~平成33年12月31日までに居住していること。
・50万円を超える工事であること。
・所得が3000万円以下であること。
・工事の日から6か月以内に入居していること。
・工事後の床面積が50平方メートル以上で、2分の1以上が居住用であること。
・工事費用の2分の1以上が居住用部分の工事費用であること。

※一定の省エネ改修工事の内容など、詳しくは、以下のサイトをご確認ください。

国税庁 №1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)

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住宅耐震改修特別控除

住宅の耐震改修工事を行った際、住宅耐震改修特別控除が受けられることもあります。

住宅耐震改修特別控除と住宅借入金等特別控除のどちらの適用条件もクリアできた場合は、両方の控除を受けることが出来ますが、住宅耐震改修特別控除と住宅特定改修特別税額控除のどちらの適用条件もクリアできた場合は、どちらか1つを選択しなければなりません。

1.控除の内容

<平成26年4月1日~平成33年12月31日までに耐震改修を行った場合>
期間:居住年のみ
控除額:住宅耐震改修工事費用の10%
限度額:8%の消費税が含まれている場合は25万円が限度、それ以外は20万円が限度。
計算式:控除額=住宅耐震改修工事費用×10%

<平成21年4月1日~平成26年3月31日までに耐震改修を行った場合>
期間:居住年のみ
控除額:住宅耐震改修工事費用の10%
限度額:最高20万円
計算式:控除額=住宅耐震改修工事費用×10%

2.条件

・現在の耐震基準に適合するものであること。(※)
・居住用の家屋であること。
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。

※現在の耐震基準についてなど、詳しい内容については以下のサイトをご確認ください。
国税庁 №1222 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)

増改築の際、控除を受けるための手続き

増改築の際も、住宅を購入した時と同じように、確定申告をすることで初めて控除を受けることが出来るようになります。

もし、住宅を購入し、今現在住宅ローンの控除を受けている最中だったとしても、改めて確定申告をすることで、両方の控除を受けられるようになるため、お得ですね。

手続きが面倒と思う方も多いかもしれませんが、住宅特定改修特別税額控除と住宅耐震改修特別控除については、減税されるのが1年のみですので、控除してもらう年に申請することになりますし、住宅借入金等特別控除と特定増改築等住宅借入金等特別控除の場合も、控除が5年~10年続きますが、確定申告をするのは初年度のみで、その後は年末調整となるため、それぞれ1つの控除に対しての手続きは1度だけで大丈夫です。

せっかく条件をクリアしていても、申告をしないと控除が受けられないので、必要書類を準備してきちんと申告するようにしましょう。

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