マイナス金利が住宅ローンに与える影響

マイナス金利とは、経済の活性化やデフレ脱却を図るために行われた政策ですね。このマイナス金利政策によって、住宅ローンを組む際にも影響はあるのでしょうか?

今回は、マイナス金利政策の内容や、住宅ローンへの影響について詳しくお話していきたいと思います。

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マイナス金利とは

最近よく耳にする「マイナス金利」。ヨーロッパ各地でもマイナス金利政策が導入され始めていますね。

日本ではもともと、景気回復を狙った策として、銀行間での取引の際の金利をほぼゼロにするという「ゼロ金利政策」を導入していました。

大手銀行が倒産してしまう等の、日本経済の危機的な状態を打開するための策だったのです。

しかし、金利をゼロにしても、借り手には効果があっても貸し手には利益がないため、思うような経済回復は見込めなかったのです。

金利がゼロになってもダメなら、金利をそれ以上どうすることもできませんね。そのため、その他の対策として、今度は量的・質的緩和を行ってきたのです。

量的・質的緩和とは、日銀が行った金融政策のひとつで、市場に出回る資金の量を増やすため、日銀が金融機関から国債や手形、リスクの高い金融商品などを買い取るというものです。

こうすることで当座預金の残高を増やし、その当座預金を資金として金融機関が運用し、結果的に景気回復につながると考えられていました。

しかし、これらの対策にも限界があったのです。

そこで2016年2月に導入されたのが、マイナス金利です。

マイナス金利政策というのは、その名の通り、「金利をマイナスにする」という政策になります。「マイナス金利」は、それまでの金利に対する考え方を大きく変えるものでした。

今まで預入することで受け取っていた利益(金利)が、ゼロになるだけでも大きな改革だったのに、今度は逆に手数料を支払うことになるのですから。

全く別の発想ですね。

しかし、「金利がマイナスになるなら、預金をすると損をするの?」と不安になる必要はありません。

今現在、実際に適用されているのは、金融機関が日銀に預け入れしている当座預金のごく一部だけになっているからです。

マイナス金利政策は日銀と金融機関との間でのことなので、個人が銀行に預けて入れすることで金利を支払わなければならないということは、今のところありません。

では、このようなほんの一部だけに適用されたマイナス金利は、私たちの生活に影響をもたらすことはあるのでしょうか?

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マイナス金利による影響

金融機関が日銀に預け入れしているごく一部の当座預金にマイナス金利が適用されることが、「マイナス金利政策」ですが、この政策がとられることで、金融機関は民間の企業や個人へ積極的にお金を貸し出すようになるのです。

すると、個人の私たちは、お金を低金利で借りやすくなります。

それは、なぜでしょう?

実は今まで金融機関は、莫大なお金を日銀に預けっぱなしにしていたのです。

金融機関がお金を日銀に預けっぱなしにして貯め込んでしまうと、市場に出回るお金が減ってしまいますね。するとデフレが進行してしまいます。

デフレが進行してしまうと、お金が市場に出回らなくなり、物を買う人が少なくなるため、物価が下がってしまいます。

それにより儲けが減るため企業の業績が落ち込み、給料も下がり、リストラが増え、倒産する会社も増えていくのです。

そうなるとさらに買う人が減っていき、物価が下がってしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。このようなデフレが進行してしまうと、日本経済はどんどん落ち込んでいってしまいます。

しかし、この預けっぱなしにしているお金にマイナス金利が適用されるとどうでしょう?

日銀に預けて利息を得ていたはずなのに、今度は逆に貯め込めば貯め込むほど、支払う利息が増え、金融機関は損をすることになっしまうのです。

例えば、預金の金利が0.1%だった場合、仮に100万円預けるとしたら1,000円の儲けになります。しかし、マイナス金利が適用されてしまうと、金利がマイナス0.1%と設定された場合、100万円預けることで1,000円支払わなければならなくなるのです。

預ける金額が増えれば増えるほど、手数料は莫大な金額になっていきますね。

預けることでさらに金利がもらえ、儲けが出るから積極的に預けていたはずなのに、逆に高額なお金を支払わなければならなくなるのなら、民間の企業や個人へ貸し出しして利息を回収したほうがお得です。

そのため、マイナス金利が導入されることで、金融機関は積極的に企業や個人へお金を貸しす出ようになるのです。

預金をそのまま貯めこむことなく、融資という形でうまく運用し、儲けを得ようと考えるからです。さらに、一般の方からも「借りたい」と思ってもらえるように、金利を引き下げて貸し付けるようになっていきます。

こうすることで、私たちは借りたいお金を簡単に借りることが出来るようになり、今まで買えなかった高額な商品(車や住宅など)を買うことが出来るようになり、それにより市場に出回るお金が増え、景気の回復が期待できるのです。

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マイナス金利によるメリット

「マイナス金利」と聞くと、「預けても利息がマイナスになる」という悪いイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実際には経済の活性化やデフレ脱却を目指した、私たちのための政策になります。

そのため、以下のようなメリットが生じるのです。

①低金利の融資

金融機関は、損をしないためにお金を積極的に貸したくなります。そのため、借りやすくするために金利を引き下げるのです。

住宅ローンや車のローンなども、低金利となるため、とても借りやすくなるでしょう。

②審査の緩和

金融機関は多くの方にお金を貸すことが目的ですので、それまで厳しかった審査も柔軟になっていきます。そのため、今まで借りられなかった人も、マイナス金利が適用されたことで借りやすくなってくるのです。

③企業の業績アップ

住宅ローンや車のローンが低金利で組みやすくなると、私たちは積極的に家や車を購入するようになりますね。すると、車販売業者や不動産業者の業績はアップしていきます。

様々な企業の業績が上がると給料も上がり、給料が上がるとお金を使う人が増え、他の企業も好調になっていきます。

④円安

日本の金利が下がると、外貨の金利で儲けようとする人が増えます。そのため、外貨への両替が増え、結果的に円安になります。

円安になると海外からの旅行者が増えていきます。これにより日本の景気もアップしますし、観光業者や旅行業者の儲けにもつながります。

⑤デフレ脱却

低金利での借り入れが可能になると、人々はお金を借りて積極的に購入するようになります。すると販売業者は儲けが出るため、給料アップにもつながっていきます。

給料が上がる会社が増えると購入者も増えていきます。すると市場にお金が出回っていくので、景気が回復していきます。

マイナス金利によるデメリット

マイナス金利にすることは、経済を回復させるための画期的な対策であり、多くの方にメリットを与えますが、もちろんデメリット部分もあるのです。

それは、以下のようなものになります。

①預金の利息引き下げ

実際には、マイナス金利が適用されているのは日銀と金融機関の間でのごく一部の当座預金に関してのみです。

そのため、私たち個人の預金への影響は少ないようにも思えますが、金融機関は一斉に預金の金利引き下げを行っています。

すると、借り入れする際の低金利は嬉しいのですが、預入に対して金利がほとんどかからない状態になってしまうので、預金のメリットがあまり感じられなくなってしまいます。

このまま引き下げが進行してしまうと、私たちが預入している普通口座も、マイナス金利となってしまう時代がくるかもしれません。

そうなると預入する人が減り、現金を自宅に確保するようになり、金融機関がお金を運用できなくなってしまいます。

②手数料の引き上げ

金融機関は貸し出しを積極的に行い儲けを得るだけではなく、ATMの利用手数料や振込手数料からも儲けを得ようと考える傾向にあります。そのため、これらの手数料が値上がりする可能性もあります。

③金融機関の低迷

日銀は金融機関への影響を最小限にするために、マイナス金利政策を適用しているのはごく一部だけにしていますし、金利も0.1%、0%、マイナス0.1%と3段階に分けて、配慮しています。

しかし、企業や個人に積極的に貸し出ししても、しっかりと回収できなければ赤字になってしまいますし、預金の金利を引き下げると預金者が減ってしまい、預金を運用できなくなってしまいます。

今現在、マイナス金利は0.1%と抑えられていますが、もしもマイナス金利が0.1%よりも下がってしまうと、金融機関のさらなる低迷が考えられるでしょう。

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マイナス金利で住宅ローンにどんな影響があるの?

マイナス金利による日本経済への影響ついて、メリット・デメリットなどを踏まえながら見てきましたが、このような動きを踏まえて、住宅ローンへの影響について、見ていきたいと思います。

①住宅ローン金利引き下げ

実際にマイナス金利が導入されてから、様々な金融機関で住宅ローンの金利の引き下げを発表しています。それまで1%以上あった金利が、ほとんどの金融機関で1%程度や1%を切る金利となってきたのです。

これは、住宅ローン金利は、政策や国債と大きな関係性があるからです。

住宅ローンの変動金利は、政策金利と連動していますし、さらに固定金利は10年物の国債の利回りと連動しているのです。

金融機関は、預入すると損をするため、企業や個人へ積極的にお金を貸し出すのと同時に、国債に投資する動きもでてきます。国債の購入が増えると国債の価値が上がりますね。

国債の価値が上がるとその利回りは下がる仕組みとなっているため、国債の人気が上がれば上がるほど、住宅ローン固定金利は下がっていくのです。

もちろん今現在でもとても低い金利となっているため、このままさらに下がり続けるというのは考えにくいですが、このような低金利はもう少し続いていくだろうと予想されます。

②実質的マイナス金利

もし、このような低金利の時に住宅ローンを組み、住宅ローン控除を受けることになると、支払う利息よりも減税される額の方が増え、「お金を借りているのに得をする」という、実質的なマイナス金利状態となるかもしれません。

住宅ローンを借りる際にかかる諸費用分も考えると、必ずしも戻ってくるお金の方が大きいとは言えませんが、諸費用が安い金融機関を選択すると、得をする可能性はゼロではないでしょう。

実際、今から低金利(1%未満)で10年以内のローンを組むと、住宅ローン控除額は年末残高に対して1%になっているため、住宅ローン控除によって減税される額の方が上回るケースが多くなります。

高額な借り入れを10年で返済し終えるというのは難しいかもしれませんが、もし10年程度で支払ってしまいたいと考えているなら、低金利の今が借り時です。

ただし、この低金利の状態がいつまでも続くわけではありません。金利が下がりすぎると金融機関の経営が厳しくなってしまいます。そのため、去年から若干金利を引き上げている金融機関も出てきています。

それでも、1%か1%を切る低金利に変わりはありませんし、ここから突然大きく跳ね上がることも考えにくいでしょう。

住宅購入や借り換えを検討している方にとっては、低金利の今が買い時(借り換え時)かもしれませんね。

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③審査方法の変化

金融機関は、お金を貯めているよりも貸し出しして運用したほうがお得になるため、低金利でも金利を回収できるなら積極的に融資したいと考えています。

そのため、それまでの審査よりも柔軟性が出てきそうなところですが、金融機関の経営も厳しくなっているため、誰にでもどんどん貸し出すということはしていません。

もしも回収が出来なければ赤字となってしまうからです。

そのため、返済能力のある人とそうでない人とで、融資方法を変えるなどの手法を取ることも考えられます。

実際、頭金がある方とそうでない方で金利を変えているケースもありますね。頭金を用意できる方は低金利、頭金がない方は金利上乗せとしてなるべく返済能力の高い人に貸し出しを行い、貸し倒れのリスク回避をしているのです。

今後もこのような低金利が続くと、金融機関もさらなるリスク回避のために、柔軟な審査を導入しつつも、しっかりと返済能力があると見込める方だけを優遇するような融資方法に変わっていくかもしれません。

④積極的な回収

住宅ローンの支払いが滞ってしまった場合、これまでも金融機関は滞納回数に応じて督促状や催告書などを送付し、最悪の場合競売手続きに踏み切っていましたが、今まで以上に回収に力を入れていくと考えられます。

 
海外では、住宅ローンにもマイナス金利を適用しているところもあります。そのため、日本でも適用される可能性はゼロではないかもしれませんね。

しかし、逆に金利を引き上げてくる可能性もあるため、住宅ローンを検討している方は、今後、日本でもマイナス金利がどのように影響してくるかチェックしながら、借り時を見逃さないようにしましょう。

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