住宅ローンの優遇金利とは
住宅ローンの金利には、優遇金利と基準金利(店頭金利)と実質金利(適用金利)があります。
さらに金利タイプとして、変動金利や固定金利がありますね。
住宅ローンを組む際、金利はとても重要な部分になってくるのですが、このように様々な金利の種類があると「どう選んだらいのか、わからない」と頭を悩ませてしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで、住宅ローンの金利について理解を深めるために、その要ともなる「優遇金利」について詳しく説明します。
住宅ローン 基準金利と優遇金利と実質金利
住宅ローンを組む際、一番先に注目すべき点は「金利」ですね。
この金利がどれくらいになるかによって、返済額や総支払額も大きく変わってくるため、借り入れる金融機関を選択する際、様々な銀行の金利をチェックすることでしょう。
しかし、この時、基準金利と優遇金利についてしっかり理解しておかないと、実際に借り入れするときに適用される金利が、思っていたものと違うということにもなりかねません。
そこで、優遇金利・基準金利・実質金利とはどのようなものなのか詳しく見ていきましょう。
基準金利とは
基準金利とは、多くの銀行で提示している基準となる金利になります。ネット上や店頭に表示されているものになるため、店頭金利や店頭表示金利、表面金利などとも言われていますね。
商品に例えた場合の「定価」と考えるとわかりやすいかもしれませんね。
こちらは、それぞれの金融機関が、市場の金利動向を見て決める金利になるため、若干高めの数字となっていますが、どの金融機関もそれほど大きな差はないでしょう。
優遇金利とは
優遇金利は、基準金利から差し引かれる金利のことを言います。基準金利が定価なら、優遇金利は「割引額」と考えるといいでしょう。
商品で例えると、1,000円の30%引きとなっていた場合、「1,000円」が定価である基準金利で、「30%引き」が割引額となる優遇金利です。
もし「1.5%の優遇金利」となっていた場合、表示されている基準金利(定価)から1.5%優遇された金利(割引)となります。
通常「金利は低い方がお得」と言われていますが、商品を購入する際、30%引きよりも40%引きや50%引きの方が嬉しいのと同じように、優遇金利も、その数字が高ければ高いほど割引率が上がるため、お得になるのです。
実質金利とは
基準金利から優遇金利を引いた後の金利になります。商品で考えると、割引後の実際に支払う金額です。
例えば、1,000円の30%引きとなった商品があった場合、「1,000円」が基準金利(定価)、「30%引き」が優遇金利(割引額)、そして「1,000円から30%引いた後の700円」が実質金利(実際に支払う金額)ということになります。
つまり、店頭に表示された基準金利が2.5%だった場合、優遇金利が1.5%だと、実質金利は2.5%-1.5%=1%となるのです。
このように実質金利というのは、融資される時に実際に適用される金利になるので、適用金利や借入金利、融資金利、引き下げ後金利などとも言われています。
なぜ住宅ローンには優遇金利があるの?
金融機関はお金を融資することで利息を回収し、利益を得ています。
そのため、返済能力のある方にはどんどんお金を貸して、利息を回収したいと思っています。
しかし、「借りたい」という方がいないと融資することができませんね。
そこで借り手を増やすため、優遇金利を設けて、他行との差別化を図っているのです。
同じ商品を購入するとき、定価のものと割り引かれているものがあれば、当然割り引かれている商品の方が嬉しいですね。
住宅ローンも同じです。条件が同じ住宅ローンがあった場合、定価の金利しかない金融機関と、定価から割り引かれる優遇金利がある金融機関では、優遇金利がある金融機関の方が魅力的に見えることでしょう。
このように、なるべく魅力的に見えるよう優遇金利を提示し、住宅ローンを組みたいと思ってもらえるよう力を入れているのです。
また、マイナス金利が導入されたことにより、貯め込むよりも企業や一般の方にお金を貸し付けたほうが利益が得られるようになったため、さらに金融機関同士の競争は激しくなってきています。
実際、店頭金利をそのまま適用させる金融機関は少なくなっています。
たいていは優遇金利を用意していて、一定条件を満たした場合、優遇金利を適用するような仕組みとなっています。もし条件の良い方であれば、優遇幅をさらに大きくするなどして、より低金利で融資することもあるでしょう。
住宅ローン 金利の種類
優遇金利にも種類があります。当初優遇と全期間(通期)優遇です。さらに金利タイプにも変動と固定の2種類ありますね。
どの金利をどのように選択するかによって、適用される金利も変わってきてしまうため、ここでそれぞれの金利についても理解しておきましょう。
変動金利とは
短期プライムレートを基準に変動する金利で、半年に1度(年に2回)見直しが行われます。短期プライムレートは国の情勢や景気などによって変わっていくため、見直しされるたびに金利が変わることももちろんありますし、それに伴い返済額も変わっていってしまいます。
ただし、返済額に関しては5年ごとの見直しとなるため、その間に金利が変動しても5年間は返済額は変わりません。
しかし金利が変わるごとに利息と元金の割合は変動していくため、金利が上がれば上がるほど利息分が増え、返済しても元金がなかなか減っていかないということも起こり得ます。
固定よりも変動の方が低金利となりますが、国内情勢が上向きになると金利もどんどん上がっていくため、予定よりも利息分が増え、固定で組むよりも総支払額が増えてしまうということもあります。
ずっと低金利のままだと固定よりもお得になるのですが、今後どうなるかは誰にもわからないため、リスクの高い金利タイプと言えるでしょう。
固定金利とは
10年物の国債に連動した金利となっています。
常に変動金利よりも高めに設定されていますが、3年固定、5年固定、10年固定、全期間固定等様々な種類が用意されていて、選択した期間内の金利は常に一定となります。
長期間の固定を選択すると金利はさらに高めになってしまいますが、その期間内、金利も返済額も変わらないため、安心感は得られるでしょう。
金利が低い時期に長期的な固定金利に設定しておくと、その後の情勢により金利が高くなっていっても低金利のままなので、安心です。
返済額や利息が一定なので、今後の返済計画も立てやすくなりますね。変動と比べるとリスクの低い金利タイプと言えるでしょう。
当初優遇とは
一定期間だけ優遇金利が適用され、一定期間を終了すると優遇幅が狭まる形式を、当初優遇と呼んでいます。たいていは固定金利を選択した時に適用されます。
当初優遇を選択すると、ローンを組んでから一定期間内だけ大きく優遇された金利が適用され、約束した期間が終了すると金利が高くなってしまうのです。
例えば10年固定の場合、「当初10年間は1.5%優遇、その後0.8%優遇」などとして段階的な優遇を行う形となります。
最初の優遇幅は全期間優遇よりも大きくなるため、お得なように感じられますが、後半は優遇幅が狭まってしまうため、借入期間や借入額によっては損をしてしまう危険性もあります。
また、当初優遇が終了した時点での基準金利が高めだった場合、その時点の金利からの優遇になるため、突然返済額が上がるということも考えられます。
全期間優遇(通期優遇)とは
全期間優遇(通期優遇)の場合、借入期間中はずっと同じ優遇金利が適用されます。完済まで優遇金利に変動がないため、当初優遇のように、途中からガクンと高金利になるということもありません。
当初優遇よりも優遇率が低くなるため、最初のお得感はあまりありませんが、長い目で見たときは、全期間優遇の方がお得になることもあります。
ただし、全期間優遇だから全期間返済額が変わらないということではないので注意が必要です。
変わらないのは、あくまでも「優遇金利」だけです。
全期間固定金利型を選択していた場合は、そのまま金利も返済額も変わりませんが、もし変動金利を選択していた場合は、優遇金利が一定でも基準金利が変動するたびに以下のように実質金利が変わってきてしまいます。
基準金利が2.5%になると、実質金利は1.5%
基準金利が2.7%になると、実質金利は1.7%
基準金利が2.3%になると、実質金利は1.3%
全期間優遇金利だから、返済額も利息も一定というわけではないのです。
当初優遇と全期間優遇のどちらがお得になるかは、借入額や借り入れ期間によっても変動してきますが、ある程度の目安を知りたい場合は、現段階での金利でそれぞれの総支払額を計算してみるといいでしょう。
住宅ローン「優遇金利」の注意点
金融機関が、基準金利のまま融資することはあまりなく、優遇金利を提示し基準金利よりも低い金利が適用になるケースがほとんどとなっています。
また、金融機関によって、優遇の幅も、基準金利も、適用条件も違ってきます。
そのため、借り入れする際は、基準金利、優遇金利、実質金利、優遇金利適用条件などをしっかりチェックする必要があります。
しかし、チェックしても実際に希望していた優遇金利が適用されるとは限りません。また、優遇金利だけを見てお得だと思っていても、思わぬ落とし穴が用意されている場合もあるのです。
そのため、以下のような注意点に気を付けてローンを組むようにしましょう。
①基準金利チェック
いくつかの金融機関の金利を比較する際、気になるのは実質金利ですね。
しかし、もし実質金利が同じになる金融機関が2つあった場合は、実質金利だけではなく基準金利もしっかりチェックしておきましょう。
実質金利が同じならどちらを選んでも変わらない気がするかもしれませんが、選び方によっては優遇期間が終了した時に損をしてしまう危険性もあるからです。
基準金利も優遇金利も同じ場合はどちらを選んでもいいのですが、もしも優遇金利が高いことで実質金利が下がっていた場合は、当初の優遇が終了した時点で、突然高金利になってしまうかもしれません。
例えば、以下のようなA銀行とB銀行があった場合で見てみましょう。
A銀行
基準金利:2.7%
優遇金利:1.7%
実質金利:1%
当初5年間は1.7%優遇、その後0.5%優遇
B銀行
基準金利:2.3%
優遇金利:1.3%
実質金利:1%
当初5年間は1.3%優遇、その後0.5%優遇
この場合、実質金利は同じなので、他の融資条件が同じ場合はどちらを選んでも変わりないような気がしますね。さらに優遇金利を見てみると、A銀行の方が高くなっているため、A銀行の方がお得なように感じられます。
しかし、基準金利が0.4%も違いますね。
当初5年間を過ぎたとき、優遇は共に0.5%となってしまうため、基準金利が高いと5年後の金利に差が出てきてしまいます。
もちろん、5年過ぎた段階で両方の銀行の基準金利も変わってくるため、どちらがお得か実際のところはわからないのですが、現段階で高めの基準金利を表示している場合、5年後も高めであることが予想されます。
もしも5年後も基準金利が変わらなかったとすると、B銀行の場合は2.3%-0.5%=1.8%となりますが、A銀行の場合は2.7%-0.5%=2.2%となってしまいます。
A銀行とB銀行では0.4%の差が出てしまいますし、A銀行の場合は1%だった金利がいきなり2.2%まで上がるため、突然返済額が上がり慌てることも考えられます。
もしも全期間優遇だった場合は、優遇金利は高い方がお得ですが、当初優遇を選択する時は、現段階での実質金利が同じだった場合、なるべく基準金利が低い方を選択したほうがリスクが少ないと言えるでしょう。
②当初優遇か全期間優遇か
「当初10年間1.5%優遇、その後0.9%優遇」という当初優遇と、「全期間1.0%優遇」という全期間優遇の場合、どちらがお得になるのかイメージがつかめませんね。
今後の金利がどのように変動していくかによっても、総支払額は変わってくるため、現段階でどちらがどうお得かということは言えないのですが、後から突然返済額が上がり慌てることのないよう、シミュレーションなどで総支払額を先に計算しておくと、ある程度のイメージがつかめるかもしれません。
また、全期間優遇というのは、優遇金利が全期間一定というだけで、返済額が変わらないわけではないということも忘れないようにしましょう。
優遇金利がいくら一定でも、基準金利が変わればそれに合わせて実質金利もどんどん変わってきてしまいます。全期間優遇だから返済額も利息も変わらないので安心と思っていると後から慌ててしまうので、注意しましょう。
③団体信用生命保険の保険料や諸費用もチェック
団体信用生命保険の保険料は、金融機関によっては金利に数%上乗せという形で支払いになるケースがあります。
その場合「団信保険料:0.3%金利上乗せ」などと表示されています。
団信保険料が金利上乗せだった場合、実質金利が1%だったとしても、0.3%増しの1.3%の金利が適用されることとになるのです。
ですから、団信保険料の支払い方法についてもチェックする必要があります。
また、金利がいくら優遇されていても、その会社によって高い保証料が必要な場合や、融資手数料が高額な場合があります。すると総額を考えたときに損をしてしまうことがあるのです。
また、繰り上げ返済にも手数料が必要な場合と無料の場合があります。今後定期的に繰り上げ返済を行っていく予定の場合は、毎回手数料がかかると損をしてしまいますね。
金利は一番気になる点ではありますが、金利だけではなく、このような諸費用についてもしっかりとチェックしておくことが大切です。
④誰もが最大の優遇金利適用となるわけではない
優遇金利が提示されていても、誰もが最大の優遇を受けられるわけではありません。
優遇金利は仮審査の段階で決定するのですが、審査状況によっては適用金利が変わってきてしまうのです。
金融機関も、返済能力のある方には大きな優遇をしてでも貸し出したいと考えていますし、返済能力に不安がある方の場合は、ある程度高金利で貸し付け、金利で先に回収しておこうと考えるからです。
そのため、以下のような条件を満たせない場合は、優遇幅が若干狭まってしまうこともあります。
・自己資金がある
・他社からの借り入れがない
・安定した職業(公務員、大手企業など)
・返済状況が良好
・その銀行の普通口座が給与振り込み口座
・定期預金を持っているなど、長期的な取引がある
もちろん、審査方法はその金融機関によって違ってくるため、この条件を満たせなくても、最大の優遇金利が適用となる場合もあります。
しかし、収入が安定していなかったり、他社からの借り入れが多い、自己資金が用意できない、取引がないなどの場合は審査も厳しくなってくる傾向があるため、その場合は以下のような点を満たすよう努力してみるといいかもしれません。
・銀行提携のクレジットカードを作る
・銀行のカードローンの申し込みをする
・他社の借り入れを返済してしまう
・自己資金を用意する
・その銀行で定期預金を作るなど、取引の実績を作る
ただし、このような条件を満たしたら必ず優遇が受けられるというわけではありません。
さらに、もし最大の優遇金利が適用になったとしても、実際に適用となる金利は融資実行時の基準金利をもとに優遇されたものとなるため、融資実行時に店頭の基準金利が上がってしまい、結果的に高金利となってしまう可能性もあります。
⑤延滞した場合の措置
たいていの金融機関では、「延滞をすると優遇金利の適用をなくす」というルールを定めています。
しかも、返済能力がないために返済を滞ってしまった場合だけではなく、たまたま残高不足で引き落としができなかったという時でも優遇がなくなってしまうことがあるのです。
その他、その家を別の人に貸してしまうなど、ローンを組んだ当初の約束に違反するような行為が見つかった場合も、優遇がなくなってしまうことがあります。
優遇がなくなってしまうと、突然金利が上がり返済額が増えてしまいますね。
もちろん約束をシッカリ守り、延滞もしないよう努力することが一番大切なのですが、万が一返済が滞ってしまったり、転勤などで一時的に他の家に住まなければならなくなった時などに慌てることのないよう、優遇金利が適用される場合は、適用条件や延滞した場合の措置などについてもシッカリと確認し理解しておく必要があります。
このルールについては契約書にしっかりと書かれているので、初めにきちんと読んでおきましょう。