担保がないと事業ローンは申し込めない?

事業ローンは担保がなくても申込できる資金調達手段の1つ。担保がなくてももちろん申込はできて、一定の資金を調達できる見込みがあります。

ただし、あえて担保を入れることで得られるメリットも理解しておきたいところです。無担保事業ローンの商品特性とメリット・デメリット、選び方の基礎知識を見ていきます。

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担保とは

そもそも担保とはどのようなものかを理解しておかないと、お話が進みません。担保とは、借りたお金を返せなくなった時に備えて提供を受ける事物のことです。

100万円を貸す立場になったつもりで考えてみましょう。「この人は約束通りに返してくれる」と信頼できる相手なら契約書だけで貸すこともできますが、どんな人か分からない状態だったら不安ですよね。

「どんな人か分からない相手にお金を貸すことはできない」と感じる人もいるはずですが、そんな無理をお願いするのがローンです。

妥協案として「返せなくなった時、あなたの自動車をくれる条件だったら貸すことができる」と言ったとしましょう。契約が成立すると自動車が担保になり、お金を返してくれるまで預かったり形式的に所有権の譲渡を受けたりすることになります。

人的担保とは

担保には、人的担保と物的担保の2種類があります。人的担保とは、返済が難しくなった時に代わりに返済する人をたてるなど「人間関係」を担保にする方法です。

良く聞く言い方で「保証人」も人的担保の一種とされます。正式な書面を持って保証人になったからには、支払いが滞った際に請求を受けても仕方ない立場です。

現金が足らないと本人同様に財産の強制執行を受ける可能性があり、不動産や有価証券などをとられてしまうリスクもあります。

連帯保証も人的担保の一種ですが、保証人よりまだ重い責任が伴うものです。「本人にまず請求してほしい」「本人の所有不動産から強制執行するのが筋だ」などと主張する権利がなくなります。

物的担保とは

物的担保とは、先の例で見た自動車のように、特定の財産を担保に提供することを言います。担保の価値が維持できている間は貸し手が損する可能性は低く、人的担保より大きな信用力として扱われることが多いようです。

担保に対して抵当権を設置する方法だと返済できなくなった時点で売却、代金をもって支払いに代えることとなります。

質権の方式だと、ローン対価として担保を預かり、返済された時点で返却されるのが通常です。事業ローンの中には、証券担保ローン、不動産担保ローンのように、担保として提供する物があらかじめ指定されているケースもあります。

無担保事業ローンとは

ここまで見てきた担保の類いを必要としない事業ローンのことを「無担保事業ローン(無担保ビジネスローン)」と呼んでいます。

会社として経営している組織には経営者の連帯保証が求められるものも多く、厳格に見れば「全くの無担保」というわけではありません。

それでも、第三者に依頼する人的担保や物的担保がいらないというところは大きな安心材料です。会社所有の不動産や有価証券など担保にしやすい資産がなくても、資金調達することができます。

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無担保事業ローンのメリット・デメリット

無担保の事業ローンを使うと、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットと知っておきたいデメリットやリスクに関して、ひと通り確認していきましょう。

無担保で契約するメリットは?

まず、担保に関する手続きを省略できることによって、スピーディーな対応が期待されます。担保を出させたからには対象物の価値を把握する必要があり、不動産の査定など一定の時間が必要な作業も生じるものです。

査定が出ないと契約ができないため、どうしても待機期間ができてしまいます。無担保なら価値評価の作業を丸ごと省略できて、急ぎの資金需要に便利です。

提出した資料をもとに会社ごとのチェック基準に従って信用力を確かめることにより、契約できるかどうかが決まる商品と理解しましょう。

2つ目は、担保を処分される心配がなく、心の余裕ができることです。資金調達するからには明確な計画を建て、返済が滞ることがないように準備するのは当然ですが、うまくいかなかった時に担保をとられてしまうことがプレッシャーになりかねません。

会社所有の不動産ではなくマイホームなどを担保にしている場合、ビジネスが頓挫すると同時に自宅も失ってしまいます。最悪の事態が起こらないようにリスク管理を徹底するあまりに思い切った経営判断ができないと、会社の成長が滞る可能性も否めません。

3つ目は、第三者を巻き込むストレスがないことです。親戚や友人に連帯保証人を依頼することで人間関係がこじれると、大事な人を失う結果になってしまうリスクがあります。

自分が始めた会社だからこそ、親しい人を巻き込みたくないと考える人も多いものです。保証会社に依頼する必要もなく、自己責任での資金調達を実現できます。

無担保で契約するデメリットは?

メリットがたくさんある一方、デメリットも伴います。まず何より、金利が高くなるケースが多いことです。担保を提供する目的は、信用力の補完でした。

貸し倒れリスクが高くなる分だけ金利を高くしないと貸し手としては割に合わないこととなり、借入コストがかさみます。

高金利での契約に納得したとしても、希望限度額が認められるケースばかりではありません。まとまった金額の資金調達がしにくく、ビジネス展開が制限されるケースも出てくるでしょう。

担保がある時、ない時でどのくらいの差がつくかをビジネクストの事業ローンを例に見ておきます。それぞれ、以下のような条件とされていました。

保証人原則不要・担保不要 ビジネスローン
融資額:50万円~1,000万円
契約利率:8.0%~15.0%(100万円以上)/ 13.0%~18.0%(100万円未満)※実質年率

保証人原則不要・不動産担保 ビジネスローン
融資額:100万円~1億円
契約利率:5.0%~15.0% ※実質年率

1,000万円以上の資金調達を行おうとするなら担保なしでは難しいことになり、土地や建物に抵当権を設置する必要があります。

契約利率にも数%の差がつく可能性が高く、総返済額に影響することを理解しましょう。

まとまった金額を借りた時ほど金利差の影響は大きくなって、経営を圧迫する要因となりかねません。無担保契約が最適な選択肢と言えるのかをよく考えて判断しましょう。

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無担保事業ローンの選び方

担保を必要としない事業ローンは、銀行の事業ローン・ノンバンク(消費者金融やクレジットカード会社)の事業ローンの2種類に分類できます。

数ある無担保事業ローンの中からどれを選べば良いのか迷った時に考慮したいポイントを見ておきましょう。

審査難易度

まず、審査難易度です。一般的にはノンバンクの方が甘めに設定されている可能性が高く、柔軟な対応が期待されます。デメリットのところで見たように、担保を提供しない分だけ審査に不利な状況と言わざるをえません。確実に審査を通したいなら、可能性が高いところをねらいましょう。

審査難易度を判断するには、申込条件も参考になります。「業歴(ビジネスを始めてから経過した年数)が2年以上」「債務超過・税金未納になっていない」など細かい条件が会社によって変わってくるため、現状に合う商品を選択しましょう。

対応スピード

次に対応スピードです。担保がない分だけ審査にかかる時間が短いと言っても、結果通知までに必要な日数は業者によって変わってきます。

急ぎの資金需要に対応するなら「最短即日融資」を掲げている業者を選択しましょう。ここでもやはり、ノンバンクの事業ローン有利です。

銀行の審査は数日から1週間、あるいはもっとかかるケースもあり、今日・明日中に資金調達できる見込みは薄いと考えてください。

金利水準

初回の借入は金利の上限あたりで決まることが多いため、上限金利が低い会社が良いでしょう。

上で見たビジネクストの場合だと、13.0%~18.0%の「18.0%」部分で比較するということです。

当然ながら低金利で借りられる業者が良いのですが、審査難易度と半比例の関係にあります。上限金利が低くて魅力的な商品のように感じても、審査に通らなければ資金調達できません。

可能性が高い中からなるべく有利な選択肢を考えてください。ノンバンクの上限金利は17.8%~18.0%くらいにしているものが多く、それより低い水準だったら良心的と考えましょう。

なお、事業ローンであっても利息制限法の対象です。元本が10万円以上100万円未満だったら20.0%、100万円以上1000万円未満だったら18.0%を超える部分は無効とされます。

全うな会社なら法律を守って経営しているため、どんなに高金利でも20.0%を超える条件にはなりません。この水準だけは頭に入れて、無担保ローン選びをしてください。

限度額

事業ローンに申し込むと、限度額の範囲で利用枠をもらうことになります。事業融資型のローンなら、限度額の範囲で貸してくれる金額が決まり、融資を受ける仕組みです。

限度額以上のお金が必要なのに少額しか借りられない会社に申込を行っても二度手間ですよね。ノンバンクの無担保事業ローンだと、限度額300万円・500万円水準が目立ちます。

借りたい金額に合わせて、適した業者を選択しましょう。2社に分けて少額ずつ借りる方法もありますが、短期間に何社にも申込をしたことで信用低下を招くリスクと隣り合わせの判断です。

できる限りは1社で希望金額借りることを目標に申込先を考えてください。

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日本政策金融公庫の担保不要融資も検討しよう

府出資が100%の公的な金融機関「日本政策金融公庫」でも担保不要融資を扱っています。

日本政策金融公庫とは、中小企業・小規模事業者の事業再編をサポートしてくれたりIT活用や人材雇用に必要な資金を貸してくれたりする機関です。

法人だったら無担保・経営者の保証のみ、個人だったら無担保・保証人不要で行う融資制度を設けています。

▽参考:日本政策金融公庫担保を不要とする融資

日本政策金融公庫を使うメリット

2018年6月現在の担保不要融資基準利率は、2.06~2.55%とされていました。ノンバンクの事業ローンと比較した場合はもちろんのこと、銀行ローンよりもかなり有利な条件です。

融資限度額4,800万円までと、まとまった借入も認められる可能性があるところもメリットでしょう。

指定された書類をきちんと整備して用途を説明、良い返事をもらえたら、しばらくは安心できる水準です。

日本政策金融公庫を使う際の注意点

融資が行われるまでにかかる時間が長くて、急な資金需要には対応しにくいところはデメリットです。

一部のノンバンクが売りにしているインターネット申込のようにオンラインで手続きができるわけではなく、電話相談した後に書類を整備して面談、必要に応じて店舗や事務所の訪問を受けて融資可否を判断するなど非常に手間がかかります。

書類をそろえるだけでも小規模事業者にとっては負担になりやすく、他の仕事が滞ってしまうリスクも伴うものです。

申込をしてから融資が行われるまでの期間は状況によって異なりますが、少なくとも1ヶ月は覚悟しましょう。「○日までにお金をそろえないと会社が危ない」といった切羽詰まった状況を乗り切る手段とは言えません。

最後に、要点だけおさらいします。担保がなくても事業ローンの申込は可能です。ただし審査難易度があがるリスクがあるため、背伸びしない選択が必要とされます。

審査難易度だけで考えるなら「ノンバンク→銀行→日本公庫」の順番です。その反面、審査難易度が高い資金調達先ほど低金利になる確率が高く、コストとしては有利になります。

このように、無担保でも資金調達できる可能性は十分にあるので、状況に応じた選択肢を考えてみましょう。

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