事業資金「資金調達方法」まとめ

会社の資金調達は、経営者の大事な仕事です。キャッシュフローがまわらなくなってしまうと、利益は出ているのに廃業に陥る「黒字倒産」にもなりかねません。

個人事業主や中小企業の社長さんなら頭に入れておきたい資金調達方法の選択肢、それぞれの特徴やメリット・デメリットと注意点を一覧で見ておきましょう。

スポンサードリンク


 


日本政策金融公庫(日本公庫)から資金調達

日本政策金融公庫とは、政府100%出資・財務省管轄にて運営されている特殊な金融機関です。小規模事業者に対して公的なサポートを行う立ち位置にあり、創業間もないタイミングでの借入・経営再建に向けた資金調達などの相談を受けてくれます。

日本公庫から借りるメリット

民間の金融機関より低金利で借入しやすく、資金調達コストを削減できます。ビジネスで借りるお金はまとまった金額になるからこそ、少しでも低金利で借りられる金融機関が理想です。

非常に低金利で貸してくれる日本公庫は魅力的な選択肢と言えるでしょう。さらに、担保・保証人なしで資金調達できる仕組みもあって、担保にできる不動産がない・頼りにできる相手がいない状況でも相談にのってもらえます。

担保をつけない融資は少しだけ金利が上乗せとなりますが、民間金融機関より有利な水準であることには変わりません。

もう1つのメリットとして、長期間の借入も可能なことがあげられます。資金使途に応じて5年や7年、10年と無理がない返済期間が設定されることから、1回あたりの金額負担を苦にならない水準へと抑えられます。

日本公庫から借りるデメリット・注意点

日本公庫の手続きには提出書類が多く、一定の時間もかかります。急ぎの資金調達で活用するには、使いにくい金融機関と言えるでしょう。

公的な立ち位置ということで、手続きの進め方が「お役所仕事」になりがちです。状況に応じて審査を急いでくれたり、色づけした金額の借入を認めてくれたり。人情的な対応は期待しにくい特徴があります。

実務的には、創業時に余裕を持った資金調達を行い、当面の活動資金にする使い方が王道でしょう。創業間もないタイミングなら比較的融資を受けやすく、将来的な資金調達手段の確保にもつながることから、会社を興す際に活用する経営者が目立ちます。

通説として、日本公庫から創業融資を受けていると民間金融機関からも良い評価を受けやすいとも言われることも理由です。これから開業・独立を考えている方は、制度の詳細を調べておくと良いでしょう。

スポンサードリンク


 

助成金・補助金で返済不要の資金調達

雇用促進や商品開発、ものづくり産業の発展など特定の用途に使う資金なら、助成金・補助金を活用できることもあります。

助成金とは、原則的には支給条件を満たすだけでもらえるお金を指します。補助金には審査があり、公募期間内に応募があったものの中からいくつかの会社に認められる仕組みです。

助成金・補助金を使うメリット

助成金や補助金を活用する大きなメリットは、何といっても返済不要であることです。将来の返済を考える必要もなく、リスクを伴わずに資金調達する手段と言えます。

政府としても中小企業支援を積極的に行う流れにあり、補助金や助成金に関して分かりやすくまとめたホームページ(ミラサポ )も登場しました。

無料で情報交換できるコミュニティー、地域の相談窓口の検索もできるので、目を通しておくと役立ちます。

これからビジネスをスタートする事業者が使える補助金、小規模事業者の販路拡大を支援する補助金など、イメージするよりずっとたくさんの仕組みがあることを理解できることでしょう。

中小企業庁委託事業 ミラサポ

助成金・補助金を受けるということは、地域や社会のために役立つビジネスを行っていることの裏付けとも考えられます。会社のイメージアップ、特定地域での認知度向上を目指し、活用を検討するのもおすすめです。

デメリット・注意点

助成金・補助金は前もってお金がもらえるわけではなく、後払いとされています。後からお金が返ってくるとはいえ、一時的に立て替えする資金がないと乗り切れません。

手もとにあるお金で間に合わないようなら、ノンバンクの事業ローンや銀行の融資と併用しましょう。また、助成金・補助金を申請するための書類準備も時間がかかる作業です。専門家に依頼するコストが必要となるケースもあり、ある程度の労力と出費は覚悟しましょう。

スポンサードリンク


 

急ぎの資金調達ならノンバンクの事業ローン

急ぎで必要な資金なら、消費者金融や信販会社が扱っている事業ローンを検討できます。

事業ローンとは、ビジネスに関わる出費をまかなうためのローンです。個人のカードローンと基本的な仕組みとしては同じですが、基本的には対会社の貸付として扱われます。

事業ローンを使うメリット

即日融資が可能なくらいスピーディーな対応を売りにしている貸金業者もあり、いざという時に使いやすい資金調達先の1つです。

設定された限度額の範囲内なら何度も利用できる仕組みが多く、緊急時への備えとして契約しておく方法も一案でしょう。

もう1つのメリットは、インターネット経由での申込もできる点です。よく名前を聞く大手の業者は、ホームページに申込フォームを用意していることが多々あります。店舗の営業時間を気にすることなく申込ができるため、忙しい経営者も安心です。

事業ローンを使うデメリット・注意点

ノンバンクの事業ローンは金利水準が高く、長期の借入には不向きです。急な要り用を乗り切る仮の資金調達手段と考えて、落ち着いたタイミングで他の方法を検討する使い方が良いでしょう。

基本的には担保・保証人なしで使える商品が多いものの、信用状態や希望する金額によっては、連帯保証人を求められることもあります。

必要な金額、保証人の有無などいろいろな条件を加味したうえ、使いやすい会社を選択ください。

スポンサードリンク


 

銀行のプロパー融資で金融機関とパイプ作り

プロパー融資とは、信用保証協会の保証を受けずに契約する融資のことです。近年では金融庁の方針転換を受けて、創業期の融資も受付けられるケースがあります。

取引金融機関とのパイプが太いほど資金調達しやすくなって、いざという時に助けてくれる可能性も高まるものです。

経営状態が良好なタイミングは金融機関とのパイプ作りをするチャンスですから、メインバンク以外の選択肢も含めて考えてみましょう。

銀行のプロパー融資を使うメリット

ノンバンクの事業ローンよりは金利水準が控えめで、有利な条件がつく可能性が高くなります。

信用保証協会の保証料もかからず、純粋な金利だけで借入できる資金調達手段です。保証料とは、保証協会の保証を受けるための年会費のような位置づけにあります。

「毎年○万円」など決まった金額を支払う必要があり、完済するまで継続的に発生する費用です。1回あたりの出費は大きなものではなくとも、重なると収支を圧迫する要因にもなりえます。

保証付融資からプロパー融資への切り替えが認められるタイミングが来たら、早い段階での移行がおすすめです。

銀行のプロパー融資を使うデメリット・注意点

銀行のプロパー融資は審査難易度が高く、どんな会社でも使えるわけではありません。メガバンク、地方銀行などのうち、どの金融機関に相談するかによっても可否判断は変わってきます。

どこに話しを持ちかければ良いのか迷った時には、全国銀行協会の相談窓口でアドバイスを受けるのも良いでしょう。

東京近辺で営業している会社なら、千代田区丸の内の銀行会館で対面相談も受けられます。対面相談は予約制をとっているので、あらかじめ連絡したうえで訪問しましょう。

スポンサードリンク


 

ファクタリングサービスを活用する

ファクタリングとは、会社が保有している売掛債権や手形を買い取ってもらい、現金化するサービスです。期日前に資金調達できるうえ、取引先の倒産リスクも回避できます。

たとえば、7月に期日が来る100万円の売掛債権があったとします。5月の時点でファクタリング業者に80万円で売却、取引を完結させるイメージです。

これは一番シンプルな契約方式で、「取引先に知られずにファクタリングを行いたい」「取引先を信用しているから倒産リスクが回避できなくても構わない。その分の手数料を安くしてほしい」など、細かい希望に応じて様々な契約形態が考えられます。ざっくりとは「将来入ってくるお金を前倒しで受け取る仕組み」くらいにとらえておけば十分でしょう。

ファクタリングを使うメリット

ファクタリングは、債権の買取を依頼する方式です。お金を借りるわけではないため自社の経営状態や税金の滞納が問題視されにくく、銀行やノンバンクの審査に落ちてしまった状況でも活用できる可能性が高いと言えます。

もちろん、担保や保証人をたてる必要もなく、信用情報に影響することもありません。

また、申込をしてから実際に資金を確保するまでにかかる時間が短いこともメリットでしょう。依頼する会社によっては最短即日の資金調達もでき、スピーディーな対応が期待されます。

ファクタリングを使うデメリット・注意点

ファクタリング手数料は事業ローンより高めになることも多く、資金調達コストがかさみます。業者によって手数料水準が変わりますから、なるべく有利な条件を提示してもらえるところと取引しましょう。

また、どんな売掛債権でもファクタリングに使えるわけではありません。取引先と交わした契約内容によっては、利用が制限されることもあります。

具体的には、債権譲渡禁止特約がついた契約は譲渡が無効になってしまい、取引が成立しません。売掛先の信用状態が優れない場合も、ファクタリングに使えないことがあります。

ファクタリング業者としては期日到来までに売掛先が倒産してしまうと損失なので、取引に応じるわけにはいかないためです。

他にもいろいろと制限事項が出てくるため、あらかじめ目ぼしい数社に声をかけて、細かい条件や手数料水準、具体的な話しを持ちかけてから契約、振込までにかかる日数の目安などを聞いてみましょう。

話しを聞いた中から会社の要望に合うところと契約します。資金調達に備えた日頃の準備が安定経営の秘訣です。転ばぬ先の杖という意識を持ち、リスクヘッジを行ってください。

スポンサードリンク


 

親戚や知人・友人から個人的にお金を借りる

自己資金を補完する位置づけとして、親戚や知人、友人からの借金に頼る選択肢も考えられます。

比較的自由な条件での約束がしやすく、人脈が広い人にとっては有効な資金調達手段の1つでしょう。

銀行やノンバンク、日本公庫からお金を借りる時のように審査があるわけではありません。相手が納得してくれさえすれば、今すぐにでもお金を手にすることはできます。

個人的にお金を借りるメリット

個人的にお金を借りる方法なら、申込書類の準備や身分証の提示など時間がかかる手続きはありません。

相手との関係にもよりますが無利息でお金を借りることもでき、ビジネスが行き詰まったタイミングでは心の支えになり得ます。

なお、個人間のやり取りでも利息制限法の制限は受けます。10万円未満なら20.0%、10万円以上100万円未満なら18%を超える水準にはならないことを理解しましょう。

お金を貸してくれないか頼む時に利息水準についてもきちんと確認、お互いの同意を持って書面化しておくと、思わぬトラブルを阻止できます。

個人的にお金を借りるデメリット・注意点

個人の価値観や性格にもよりますが、お金の貸し借りを快く感じない人はたくさんいます。

情に訴えてお金を融通してもらったり何度も繰り返し借金をしたりすれば、その後の関係にも影響するもの。資金使途が明確で返せる見通しがある状況なら、他の手段を優先するのが筋でしょう。

言うまでもないことですが、経営者自身に預貯金がある場合は自己資金が優先です。経営者から会社に貸すという選択肢まで含めて他の資金調達手段を考慮、どうしても困った状況になってはじめて親戚や知人に話しをします。

スポンサードリンク


 

個人投資家(エンジェル投資家)の出資を受ける

世の中には「エンジェル投資家」と呼ばれる人たちがいて、関心を持ったビジネスに資金援助をしてくれることがあります。

おもしろいサービスや社会的な意義が大きいビジネスをやっていると投資家の関心をひきやすく、銀行やノンバンクの事業ローンを使えない状況でも資金調達可能です。

もちろん、ただで出資を受けられるわけではありません。株式の一定割合を投資家に渡したり収益の一部を配分したりと、お互いに合意した条件に沿った対応が必要です。

投資家の出資を受けるメリット

投資家自身も事業を行っている経営者であることが多く、ビジネスについてのアドバイスやノウハウ提供を受けられることがあります。

創業間もない経営者にとっては心強い味方となるでしょう。有名な経営者が味方につくことで、取引先や金融機関からの信用にもつながります。「○○さんが認めているなら」と良い取引につながったり顧客を紹介してもらえたりするケースもあるものです。

どのくらいのサポートを受けられるかは、投資家の性格によっても変わってきます。「お金は出すけど、口は出さない」「リターンだけきちんと支払ってくれたら良い」という方針の投資家もいるので、誰にお願いするかは重要です。

投資家の出資を受けるデメリット・注意点

株式の一定割合を渡した場合はとくに投資家の影響が大きくなります。単なる資金調達よりも重い意味を持つことを理解しましょう。

経営者の意見と投資家の意見が食い違った際、考えているのとは全く違うビジネス展開を要求されることがあります。最悪の場合は会社の乗っ取りを受けるリスクもあり、よく考えて決断しないと危険です。

エンジェル投資家と似た立ち位置の出資者として、ベンチャーキャピタルから資金調達する方法もあります。

ベンチャーキャピタルはビジネスとして出資を行う立場にあり、より積極的な関与を受ける可能性が高い選択肢です。

経営者としてのノウハウを身に付けたい人には良いのですが、自分のやり方にこだわりたい人にとっては堅苦しく感じるリスクがあります。

出資を受けることを軽く考えず、自社にとって良い選択と言えるのかを判断しましょう。

このページの先頭へ