預金連動型住宅ローンとは

「預金連動型住宅ローン」というものをご存知ですか?

実際に取り扱っている金融機関も少ないため、あまり耳にしたことがない方も多いかもしれませんが、金利ゼロで融資を受けられる可能性もあるという、とても魅力的な住宅ローンになっています。

ただし、全ての方にとって魅力的なものとなるわけではありません。メリットを受取れる方というのは限られてきてしまいます。

ある程度の資金を確保できる方や、短期間で完済したい方、繰上げ返済を何度も行う予定の方などは、一般の住宅ローンよりも預金連動型住宅ローンの方がお得になるかもしれないので、この機会にぜひチェックしてみてくださいね。

では、預金連動型住宅ローンとはどのようなものなのか、そのメリットやデメリットと併せてお話していきたいと思います。

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預金連動型住宅ローンとは

預金連動型住宅ローンとは、「預金と連動して金利が変動していく住宅ローン」のことで、住宅ローンのうち預金と同額分に対しては金利がかからないというものになるのです。

例えば、3,000万円の預金連動型住宅ローンを組んだとします。

この時、もしもその住宅ローンを組んだ銀行に2,000万円の預金があれば、住宅ローン2,000万円に対する金利がゼロになるのです。

2,300万円の預金があれば、2,300万円にかかる住宅ローン金利がゼロ、2,500万円の預金があれば、2,500万円に対するローン金利がゼロという仕組みです。

住宅ローン契約者は、住宅ローンとして支払うべき利息がカットされるため、預金をすればするほどお得になりますね。

そのため、他行に預けていたお金を集めて、住宅ローンを組んだ銀行へ預金するため、金融機関側も資金が増え運用しやすくなるのです。

この住宅ローンはアメリカで誕生したもので、日本では一番最初に東京スター銀行が商品を開発し、2003年に日本初の預金連動型住宅ローン「スターワン住宅ローン」が登場しました。

その後、以下のような銀行で取り扱いを開始しています。

・関西アーバン銀行
・北日本銀行
・山陰合同銀行
・西部信用金庫
・愛媛銀行
・荘内銀行
・大光銀行
・一部のJAバンク

※東京スター銀行では、当初高金利に設定していたスターワン住宅ローンの伸びが悪かったことを理由に2014年一時的に撤退していましたが、2016年に改定を行った後、再開されることとなりました。

当時よりも金利を引き下げ、住宅を購入する世代にとって利用しやすいローンに改善されています。

東京スター銀行 預金連動型再登場

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預金連動型住宅ローンのメリット・デメリット

預金連動型住宅ローンは、多額の預金を持っている一部の富裕層に向けられた商品のようにも感じられるかもしれませんが、実は活用次第では多くの方にメリットをもたらす住宅ローンになります。

例え数千万円単位で預金がなくても、数十万円、数百万円の預金がある方、もしくは今は持っていなくても今後預金していく予定の方であれば、通常の住宅ローンよりもお得になる可能性もあるでしょう。

ただし、当然のことながらデメリット部分もあるため、利用する際は、後悔しないためにも預金連動型住宅ローンのメリット・デメリットをシッカリと踏まえた上で申し込むようにしましょう。

預金連動型のメリット

①住宅ローンの金利がかからない

やはり最大のメリットは、住宅ローンの金利がゼロになる点ですね。(金利がなくなるタイプと、後から利息分がキャッシュバックされるタイプの2通りがあります)

例えば預金が100万円だったとしても、ローンのうち100万円に対しての金利がゼロになるため、3,000万円借り入れしても、2,900万円のローンを組んだのと同じ利息額になるのです。つまり、100万円頭金として入れたのと同じ利息軽減効果です。

頭金として入れてしまうと一時的に手元の資金がなくなり突然の出費に対応できなくなりますが、預金連動型であれば、頭金を入れていないのに、頭金として入れたのと同じだけのメリットを受取りながらも、手元に資金を残すことができます。

さらに、家族の預金(50%まで)も連動の対象となる銀行もあるのです。

もしも他行に預けていたお金や家族分の預金を集めて、ある程度のまとまった額にすることが出来るなら、一般の住宅ローンを組むよりも利息削減できるかもしれませんね。

ただし、東京スター銀行の場合は、連動できるのは借入額の7割までと上限を設定しています。

つまり、3,000万円の借り入れで、3,000万円の預金があったとしても、7割である2,100万円までしか金利がゼロにはならないということです。

また、JAバンクでは50%までと上限を設定しています。このように上限が100%ではない金融機関も多くあるため、預金連動型住宅ローンを検討している方は、どの預金がどの範囲対象となるのかチェックしておくといいでしょう。

②預金の入出金OK

預金残高に対して住宅ローンの金利がゼロになるなら、預金は担保のような扱いになってしまうように感じるかもしれませんが、そんなことはありません。

預金はいつでも入出金出来るため、使いたいときに自由に使うことが出来ます。

JAバンクでは定期貯金を対象としてしますが、この定期貯金も途中解約もできますし、満期解約も可能です。

ただし、普通預金の場合も定期の場合も、出金してしまうとその分対象となる金額が減ってしまうため、住宅ローンに支払う利息分が増えてしまいます。

③繰り上げ返済と同じ効果

一定のお金を貯めることが出来たとき、たいていの方は繰り上げ返済を考えるかもしれませんね。

もちろん、繰上げ返済分は元金に充当させることが出来るので、繰り上げ返済した分にかかる利息を一気に減らすことができるお得な方法ではあります。

しかし、繰り上げ返済に預金を全額使ってしまうと、一時的に手元の資金がなくなってしまいますね。そのため、突然の出費にも対応できるよう、その他にも手元に残すお金を用意しておかなければなりません。

そのため、どれくらい貯まったら繰り上げ返済をするといいのか、タイミングで悩む方も多いはずです。

こんな時、預金連動型住宅ローンであれば、「繰上げ返済をして利息を減らすか、手元に残しておいてもう少し貯まるまで待とうか」と悩む必要がありません。

貯まったお金は預金しておくだけで、繰上げ返済をしたのと同じだけの利息が減らされ、さらに万が一の時にはその預金を使うこともできるのです。

④住宅ローン控除

預金がある場合、少しでも利息を減らす為に「頭金をたっぷり入れて少ない金額でローンを組もう」と思う方も多いかもしれません。

しかし、頭金を多めに入れてしまうと一時的に手元の資金が減ってしまいますし、少ない金額で住宅ローンを組むと、住宅ローン控除額も減ってしまいます。

例えば、3,000万円程度の物件を購入し、500万円の頭金を入れて2,500万円で住宅ローンを組んでしまった場合、年末の残高は2,500万円以下(返済をすることで年末には2,500万円よりも少ない残高になるため)になってしまいますね。

住宅ローン控除とは、年末のローン残高に対する1%が減税される仕組みとなっているため、その2500万円以下の金額に対する1%しか控除が受けられなくなってしまうのです。

しかし500万円を頭金として入れず、3,000万円のローンを組んでおくと、3,000万円弱の残高に対する住宅ローン控除を受けることが出来ます。

これを実現させてくれるのが、預金連動型住宅ローンです。

預金連動型住宅ローンなら、頭金に入れる予定だった500万円を預金するだけで、頭金を入れたのと同じだけ利息を減らすことができ、さらにローン自体は頭金を入れていない状態になるため、3,000万円弱に対する住宅ローン控除も受けることができるのです。

さらに、住宅ローン控除はローンを組んでから10年間受けることが出来るため、この10年の間に繰り上げ返済できるだけの資金がたまっても、繰り上げ返済する必要がありません。返済しなくても、預金しているだけでその分の利息を削減できるからです。

更に繰り上げ返済をしないのでローン残高は減らず、10年間ずっと住宅ローン控除を最大限活用することが出来るようになります。

⑤資金確保

住宅ローンを組む時、どれくらいを頭金として入れるべきか、どれくらいを手元に残すべきか、頭を悩ませる方が多いかと思いますが、預金連動型住宅ローンであれば、考える必要がありません。

老後の生活資金や、いざというときの預金を確保したまま借り入れしても、預金分を全額頭金として入れたのと同じだけの利息を削減させることができるからです。

手元資金がなくなるリスクを回避できますし、利息も軽減させられるという、頭金を入れた時と入れない時の両方のいいとこどりができますね。

⑥団信

預金連動型住宅ローンの場合も、団体信用生命保険に加入することになります。

団体信用生命保険とは、契約者が亡くなったり高度障害状態となったときにローンを全額肩代わりしてくれるという保険ですね。

もしも契約者に万が一のことがあったとき、預金を頭金として入れてしまっていたり、繰上げ返済をしてしまっていると、少なくなった残債がゼロになるだけで終了してしまいます。

しかし、預金は預金として残して置ける預金連動型であれば、万が一の時、保険で残債がゼロになる上に、預金もそのまま確保することが出来ます。

例)

・通常の住宅ローンの場合
3,000万円の借り入れで、1,000万円の繰り上げ返済をした後、亡くなった場合、2,000万円の残債がなくなるだけ

・預金連動型住宅ローンの場合
3,000万円の借り入れで、1000万円を預金したままでも、1,000万円の繰り上げ返済をしたのと同じだけの利息軽減効果。

その後亡くなった場合、3,000万円のローンが全額なくなり、さらに1,000万円の預金も手元に残すことができる。

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預金連動型のデメリット

①金利が高め

預金連動型住宅ローンは、通常のローンよりも高金利に設定される傾向にあります。一般的な住宅ローンよりも1~2%程度高いところが多いでしょう。

そのため、一定額以上の預金がない方は、金利の低い一般的な住宅ローンを利用して、定期的に繰上げ返済を行っていた方がお得かもしれません。

利用する銀行の条件や金利、借入額や借り入れ期間などによって違ってくるので、シミュレーションしてみるといいでしょう。

②預金に対しての利息が実質ゼロ?

東京スター銀行の場合、連動の対象となる普通預金に利息は付きません。その他の銀行でも、利息が付く場合と付かない場合があります。

今現在普通預金の利率も低いため、預金に利息がつかなくてもそれほど気にならないかもしれませんが、今後利率が上昇するようであれば、預金の利息ゼロという点が気になってくるかもしれませんね。

③取り扱い銀行が少ない

近くの銀行で気軽に利用できるという住宅ローンではありません。

預金連動型住宅ローンを取り扱っている金融機関は少ないため、利用したくても店舗が近くにないために利用できないという方も多いかもしれませんね。

④それぞれの金融機関では条件がある

例えば、東京スター銀行の場合、預金連動型を利用する場合には、メンテナンスパックを利用しなければならないという決まりがあります。このメンテナンスパックを利用する為には、金利が0.300%~0.702%上乗せとなってしまいます。

また、金融機関によっては、手数料や保証料が高く設定されているなど、それぞれ独自の条件を設定しているので、損をしないために申し込む前にしっかりチェックしておく必要があります。

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預金連動型住宅ローンが向いている人

一定の資金がなくても、今後貯めていく予定がある方は預金連動型住宅ローンはお得な商品となるでしょう。

ただし、今現在資金がなく、今後貯める予定だったけれどなかなか予定通り貯まらないという場合、預金連動型の住宅ローンの方が金利が高めになっているため、返済に苦しめられてしまうという危険性もあります。

そのため、きちんとした返済計画を持って、資金を確実に貯めて行く必要があります。

預金連動型が向いている方は以下のような方でしょう。

・借り入れ予定額に近いお金や、それを上回るだけの預金を持っている方
・家族分も合わせて、一定額の預金を集めることができる方
・ローンを短期間で返済してしまいたい方(10年程度)
・計画的に必ず預金をしていける方
・自営業などで手元資金を多めに持っている方

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預金連動型住宅ローンを取り扱っている主な銀行

では、預金連動型住宅ローンを取り扱っている金融機関を見ていきましょう。

東京スター銀行

「スターワン住宅ローン」

最大預金連動可能枠:70%

※ローン金利計算は毎日行うため、預金の引き出しは自由だけれど、引き出した分ローン金利負担が増えます。

基準金利(2018年6月現在):変動2.400%、3年固定2.800%、5年固定2.850%、10年固定2.950%

最大引き下げ金利(2018年6月現在):変動0.800%、3年固定0.800%、5年固定0.850%、10年固定0.950%

融資金額:500万円~1億円以内

事務手数料:融資金額×2.16%

※メンテナンスパックに加入する必要があり、加入すると0.300%~0.702%金利上乗せとなります。

⇒東京スター銀行 預金連動型スターワン住宅ローン

関西アーバン銀行

「預金連動型住宅ローン」

最大預金連動可能枠:100%(3か月ごとのキャッシュバック方式)

※家族分の預金も組み込むことが出来るけれど、家族分の預金はその50%までしか対象になりません。

金利(2018年6月現在、変動金利型のみ):2.675(借入額が購入額の80%以下)、2.875%(借入額が購入額の80%超)

融資金額:6000万円以内

事務手数料:54,000円

⇒関西アーバン銀行 預金連動型住宅ローン

JAバンク あいち

「堅実家計」

最大預金連動可能枠:50%(定期貯金残高に応じて6か月ごとのキャッシュバック方式)

※定期貯金金利が住宅ローン金利を上回ると、キャッシュバックはされません。

金利:住宅ローンの金利+0.10%

融資金額:10万円以上8,000万円以内

⇒JAバンクあいち 貯金連動型住宅ローン「堅実家計」

山陰合同銀行

「預金連動型」

最大預金連動可能枠:その月の預金平均残高と月末の住宅ローン残高50%のうち低い金額(返済の翌月キャッシュバック方式)

金利(2018年6月現在)

・2段階固定金利の場合  1.00%~1.20%(10年間)、1.80%~2.00%(11年目~)

・固定変動金利選択型の場合 2.60%(変動金利)、2.50%(3年固定)、2.50%(5年固定)、2.95%(10年固定)

※当初固定期間は0.70%~1.10%

融資金額:1億円以内

事務手数料:54,000円

⇒山陰合同銀行 預金連動型住宅ローン

北日本銀行

「新・家族愛」

最大預金連動可能枠:100%(6か月ごとのキャッシュバック方式)

※家族分の預金の場合は50%までが対象となります。

金利(2018年6月現在、変動金利型のみ):3.10%

融資金額:50万円~6,000万円以内

事務手数料:融資金額×1%

⇒北日本銀行 預金連動型住宅ローン「新・家族愛」

その他の預金連動型住宅ローン

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預金連動型住宅ローン「まとめ」

こうして見てみると、やはり預金連動型住宅ローンの金利が高いのが気になります。

2018年6月現在では、一般的な住宅ローンの変動金利は低めで、0.5%前後の金融機関が増えてきています。さらに、長期固定金利でも1.0%~1.5%程度のところが多いですね。それらと比べると、預金連動型の金利は1%程度かそれ以上高い金利になっていますね。

多くの預金をして、その預金残高分の金利をゼロにすると、低金利で住宅ローンを組んだのと同じ程度の利息とはなりますが、もしも預金を使い切ってしまったり、貯める予定がなかなか貯まらないという状態が続いてしまうと危険です。

預金連動型住宅ローンとは、住宅ローン控除を最大限活用できる点や、手元の資金を確保して置ける点等、良い点は多いのですが、「絶対に貯める自信がある」という方ではない限り、やはり元々ある程度の貯蓄がある方にお勧めしたいローンと言えます。

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