住宅ローン 無理ない返済額を決める3つの計算方法

住宅ローンの無理ない返済額とは、いくらくらいでしょう?

たいていの方は、金融機関の住宅ローン審査に通過して融資が決まれば、返済が可能だと判断されたも同然なので、「融資可能=無理のない返済額になる」と思うかもしれませんね。

しかし返済額が妥当かどうかを判断する際、金融機関の審査結果にゆだねると危険です。住宅ローン審査によってわかるのは「借入可能額」であって、「返済可能額」ではないからです。

今回は、自分で確認できる「住宅ローンの無理ない返済額」について解説します。

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住宅ローン「借入可能額」と「返済可能額」は違う

例えば、以下の様な状況があったとしましょう。

・お金のかかる趣味を持っている。
・子どもが3人以上で進学希望予定だ。
・子どもにたくさんの習い事をさせている。
・ペットをたくさん飼っている。
・妻が浪費家だ。
・外食や旅行が多い。

金融機関は、一人一人の性格やお金の使い方、今後の予定などを詳しく調査し、上に挙げたような状況なども踏まえて「住宅ローンを返済できるかな?」と考えて審査しているわけではありません。

あくまでも、安定した収入があるかどうか、収入に対して融資額が相応かどうかについて考えているため、金融機関が融資可能と判断したとしても、それは「借入可能な額」と言うだけであって、その人にとっての「返済可能な額」ではないのです。

ですから、住宅ローンの返済可能か?を判断する際、金融機関の審査結果にゆだねると、実際に返済が開始されてから苦しむことになるかもしれません。

住宅ローンを組む時、頭金を多めに入れよう、審査で不利になることは言わないでおこう、柔軟性のある金融機関を探そう、など、「審査に通過すること」を目標としがちですが、一番大切なことは「住宅ローンを返せるかどうか」です。

まずは自分の置かれている状況を把握し、収入や支出、貯蓄額をチェックしながら、ここでしっかりと「将来的に無理のない返済額」を知っておきましょう。

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住宅ローン「無理のない返済額」の算出方法

住宅ローンの無理ない返済額を知るためには、何を基準にして考えるかによって、算出方法が違ってきます。

基準とするべきものごとに分けてお話していきますね。

収支から住宅ローン返済額を考える方法

たいていは借り入れする際「収入」をもとに考えますね。もちろん収入も大切ではあるのですが、それと同時に支出もとても重要になってきます。

先ほどお話したように、同じ収入でも子供がいない家庭と子供が3人以上の家庭では支出額は大きく違ってきますし、趣味などに大金を使う、外食や旅行が多いなど、その人それぞれのお金の使い方によっても、住宅ローンの返済に充てられる金額が変わってくるからです。

収入が少なくても支出も少なければ、返済額が多少高くてもOKですが、高収入でも支出が多ければ、返済額を抑えないと支払いが困難になってしまうでしょう。

そこで、収支をシッカリ把握してから返済額を割り出す方法をお話していきたいと思います。

先に収支が把握できていれば、お金を借りてから「住宅ローンが予想外に家計を圧迫する」ということもないので安心ですね。

住宅ローンを組む前から、返済可能なこともわかっているので、安心して返済を継続していくことが出来るでしょう。

収支から住宅ローンの返済額を割り出すためには、計算式に自分の状況を当てはめていきましょう。

①計算式を知る
返済可能額を知るための計算式はこのとおりです。

(a.年間の収入-b.家賃以外の支出-c.住宅を購入した場合にかかる費用-d.将来的な教育費-e.貯蓄)÷12か月=毎月の返済可能額

年収からこのような様々な支出を引き、12か月で割るという方法ですね。教育費や貯蓄以外にも、今後かかるであろう支出があれば、その分も差し引くといいでしょう。

②年間の収入を確認する
計算式がわかったところで、「a」に当てはまる数字を確認します。ここでは源泉徴収票の総支払額ではなく、税引き後の実際に受け取る手取り年収を当てはめましょう。

ボーナスがある場合はボーナス分も含めて計算します。

妻の収入もある場合は合算してもいいのですが、その場合は、妻の収入がなくなることはないと判断できる場合に限ります。もしも妊娠や出産、育児などで収入がなくなってしまう可能性もあるのであれば、合算しないほうが安全です。

妻の収入に頼っていると、後々収入が無くなったときに対応できなくなるからです。

③家賃以外の支出を知る
次に「b 家賃以外」の支出について考えます。

家賃など住宅費以外の、年間にかかる支出額を算出しましょう。家計簿をつけている場合は、家計簿の中から家賃以外の年間の支出を合計します。

家計簿をつけていない場合は、水道光熱費、通信料、保険料、車の維持費、教育費、食費など、毎月かかる費用を12倍し、年払いの支出(クレジットカードの年会費、年払いの火災保険料、車税など)を加えます。

もしくは、去年の年収から、去年1年間に増えた貯蓄額を差し引くと言う方法でも、およその年間の支出額がわかります。

④住宅を購入した場合にかかる費用を知る
Dc 住宅を購入した場合にかかる費用」を考えましょう。

今現在も持家に住んでいるという場合は違いますが、賃貸の場合は、住宅を購入することで月々の返済額以外にも支出が増えることを頭に入れておきましょう。

戸建てかマンションかによっても違ってきますが、賃貸の場合はかからない以下の様な費用がかかってきます。

・固定資産税
・都市計画税
・管理費(マンションの場合)
・修繕積立金(マンションの場合)
・駐車場使用料(マンションの場合)
・駐輪場使用料(マンションの場合)

この他、家が広くなることで、以前よりも水道光熱費が1~2割増しになることも考えられます。住む場所によっては、現在よりも通勤・通学の際の交通費が上がることもあるかもしれませんね。

その差額分もプラスして、予想される合計額を算出しましょう。

⑤教育費
「d 教育費」に当てはまる数字を考えましょう。子どもがいる場合、その年齢によっては今後教育費がかさんでいくことも予想されますね。

塾や習い事の費用、授業料、給食費、通学にかかる交通費、進学にかかる費用など、教育関係の費用は子供の人数分多くなります。

今は大丈夫でも、今後増えていくことも踏まえて、教育費として年間どれくらい用意できればいいのか考えておきましょう。

⑥貯蓄
「e 貯蓄」に当てはまる数字を考えましょう。

僅かでも、月々貯蓄できると安心ですね。老後のための貯えにすることが出来ますし、教育費が足りなかった時のために貯めておくのも安心です。

また、戸建てを購入する場合、修繕はマンションとは違い自分で行わなければならないため、今後の住宅修繕費として貯蓄しておくことも大切です。

⑦a~eの数字を計算式に当てはめる

それぞれの数字を当てはめて計算してみます。その答えが、毎月の住宅ローンの返済可能額の目安になります。

さらに借入可能額を知りたい場合は、返済可能額を算出したうえで、借入期間を考えます。

定年が何年後なのか、何歳まで仕事を続けられるのか、年金からの支払いは可能なのか、などを考えると、借入期間を決めることが出来ますね。

例えば、35年の住宅ローンを組んだとしても、現在の年齢が40歳だと完済時は75歳になっています。職種によっては定年退職し年金生活を送っているかもしれません。収入が少なくなった老後も返済は可能でしょうか?

難しいようであれば、20年~25年の住宅ローンにして60歳~65歳頃までには完済させるようにしてもいいですし、年金での支払いも問題ないと考えるならば35年の住宅ローンでもいいでしょう。

また、20代で住宅ローンを組むのであれば、完済時も退職前なので安心ですね。このように、年齢や、完済時の収入状況を予想して、返済期間を考えましょう。

自分なりに住宅ローンの返済可能な期間が決まると、先ほど割り出した返済可能額を12倍し、さらに年数分をかけると、金利分を含めた借入額を割り出すことが出来ますね。

金利分が含まれた総額になるので、実際に借り入れる額とは違ってきますが、ある程度の目安を知ることが出来るでしょう。

そして、頭金をどれくらい入れる予定なのかによって、購入可能な物件がわかってきます。

家を決めてから住宅ローンを組み、返済額が決定する、という通常の住宅購入順序とは違ってきますが、このように住宅購入前に収入や支出をシッカリ把握し、可能な返済額から決めていくという方法は、後から焦ったり後悔することがないため、とても確実な住宅購入方法と言えるでしょう。

返済比率から住宅ローン返済額を考える方法

住宅ローンの返済が可能かどうかをチェックする際、よく目安として使われているのが「返済比率(返済負担率)」ですね。返済比率を算出できると、年収に対して住宅ローンの返済による負担がどれくらいになるかを知ることが出来ます。

返済比率は次の計算式で算出することができます。

「返済比率=①年間返済額÷②年収×100」

返済比率が適正範囲内であれば、その返済額は返済可能な額ということになるため、無理のない返済額も同時に知ることが出来るでしょう。

たいていの金融機関の住宅路ローン審査では、返済比率30~35%を上限としています。つまりこれが適正範囲内であり、この範囲内であれば負担も大きすぎないため、融資も可能だろうと考えられているのです。

しかし、30~35%というのも実は「融資可能な範囲」であって「返済可能な範囲」ではないのです。

一般的な計算は、次のように行われるからです。

年間返済額・・・住宅ローンに関する返済額だけ
年収・・・源泉徴収票の総支払額

これでは、住宅ローン以外の支出は無視されていますし、税引き前の実際に受けとることはできない年収に対して考えるのも現実的ではありませんね。

年収からは高額な税金が引かれてしまいますし、どの家庭も毎月の支払いは住宅ローンだけではないでしょう。クレジットカードの返済や、保険料の支払い、車のローンなどがある方も多いはずです。

さらに家を購入することで固定資産税の支払いも増えますし、マンションの場合は管理費や修繕積立金なども必要になってきますね。

これらの支出も考えたうえで、実際の手取り額と照らし合わせなければ、リアルな返済状況を見つめることはできません。

そこでお勧めしたいのは、以下の様な計算方法です。

①年間返済額
自動車のローン、クレジットカードのリボ払いなど、住宅ローン以外の借り入れに対する返済額も含めて考えましょう。

また、今は住宅ローンの金利も低くなっていますが、今後どうなるかはわかりません。そのため、少し高めの金利で仮の返済額を計算しておくと、より安心かもしれません。

住宅ローンの返済額についてはまだ未定だとは思いますが、借入額に対して金利がどれくらいだと返済額がいくらになるかをシミュレーションできるサイトがあります。

仮にいくらくらい借りるなら、という形でシミュレーションし、仮の返済額を割り出してみましょう。

みずほ銀行 住宅ローン返済額シミュレーション

②年収
税引き後の、実際に受け取る予定の手取り額で年収を計算すると、よりリアルな数字を見ることが出来ます。

③20~25%を目安とする
金融機関や年収によっても定められる返済比率の上限は違ってきますが、例えば上限35%と金融機関から言われたとしても、20~25%程度に抑えておいた方が安全でしょう。

今後何があるかはわかりません。もちろん高額な返済になったとしても、返済可能な場合もあるとは思いますが、返済に余裕を持たせることが出来ないと、万が一予定外の出費が続き返済が困難になってしまうと、せっかく購入した家を手放さなければならなくなるかもしれませんね。

返済額を抑えておくと、何かあったときに対応できますし、余裕がある分は貯蓄に回しながら定期的に繰り上げ返済をしてく方法も取れます。

長く続く住宅ローンですので、用心をするに越したことはないでしょう。

また、お金のかかる趣味を持っている場合や、子どもやペットが多い家庭などは、20%よりさらに低い返済比率で考えたほうが安全かもしれません。

自分の希望している返済比率になったときの返済額が、無理のない住宅ローン返済額の目安となります。

※返済比率について、さらに詳しい内容は「住宅ローンの返済比率(返済負担率)の目安は?」をご覧ください。

借入額で住宅ローン返済額を考える方法

借入額が年収の5倍以内なら、無理ない返済額になるだろうと考える方法もあります。

年収400万円であれば、2,000万円まで
年収500万円であれば、2,500万円まで
年収600万円であれば、3,000万円まで

確かに、年収に対してこれくらいまでの物件であれば、購入できそうな気がしますね。しかし、同じ借り入れ額でも、期間が短ければ月々の負担も大きくなりますし、金利が高ければさらに住宅ローンの返済額も上がってしまいますね。

いくら借り入れ可能でも、期間や金利がどうなるかによって、住宅ローンの返済が難しくなることも考えられるのです。

ですから、借入額で考えるとしても、それと同時に返済期間や金利をある程度決め、シミュレーションで住宅ローンの返済額を割り出してから、「毎月の返済可能額=(a収入-b家賃以外の支出-c住宅を購入した場合にかかる費用-d教育費ーe貯蓄)÷12か月」の計算式で出した答えよりも多くないか、チェックすることが大切です。

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