奨学金 繰り上げ返済のメリット・デメリット
奨学金を繰上返済するメリット・デメリットや、日本学生支援機構の繰上返還の手続き方法などを解説します。
日本学生支援機構の繰上返還
一般的なローンと同じように、日本学生支援機構の奨学金にも繰上返済のシステムがあります。
繰上返済とは、毎月の予定返済額とは別に借入金の一部、あるいは残額すべてをまとめて返済することで、日本学生支援機構の場合は「繰上返還」といいます。
奨学金を繰上返済するメリット
奨学金を繰上返済するメリットとしては、以下の3つが考えられます。
2)一括返済をすると今後の心配がなくなって気持ちが解放される。
3)機関保証の保証料の一部が戻る。
では、3つのメリットについて、ひとつひとつ考えていきましょう。
利息分の節約(総返済額が少なくなる)
繰上返済分はそのすべてを借入した金額の元金に充てられます。繰上返済に充当した金額分に付くはずだった利息分がそっくりなくなるので、最初に予定していた総返済額が減ります。
たとえば、日本学生支援機構の繰上返還例を参考に見てみると、
毎月の返済額は元金と利息と据置利息を含めて、9,430円、33回目までは月賦返還で返還終了しています。
34回目から43回目(10回)を通常返還した場合 → 94,300円((元金+利息+据置利息)×10回 )
34回目から43回目(10回)を繰上返還した場合 → 81,043円(当月分(元金+利息+据置利息)+(元金+据置利息)×10回 )
繰上返済では、上記例でいうと10回分のうち初回は当月分と考えその分に関しては利息がかかります。2回目以降の繰上分には利息がかかりませんので、10回分の繰上返済手続きをする場合には、9回分の利息を節約できるというわけです。
ちなみに、据置利息とは、貸与終了から返済開始になるまでの6ヶ月間に発生する利息のことで、据置利息に関しては繰上返済の場合でも支払わなければなりません。卒業すると奨学金の貸与が終了しますが、返済開始は翌月ではなく、7ヶ月目からになります。
上記の例で考えると、A子さんは34回目から43回目の10回分を繰上返済すると、94,300円-81,043円で13,187円の利息分の負担が軽減されます。
元金と利息は回数ごとに若干の変動があり、月ごとの額の詳細は日本学生支援機構「繰上返還例」のページに書かれてあります。
ここに書かれてある表を見るとわかるように、利息は返済回数の早いうちは高く、回数が重なるにつれ安くなっていきます。そのため、利息分をより節約することを考えるならば、早めに繰上返済をした方が良いと言えますね。
日本学生支援機構の繰上返済の手続きは手数料がかからないため、純粋に利息分だけを節約できるので、貯蓄に余裕があるならば繰上返済は大きなメリットと考えられるでしょう。
なお、日本学生支援機構の貸与型奨学金は、第一種と第二種とがありますが、上記のような利息がつくのは第二種奨学金です。第一種奨学金には利息がかかりませんので、繰上返済を利用した場合でも返済総額は変わらず、返済期間が短くなるだけです。
一括返済で今後の心配がなくなる(気持ちの解放)
残っている割賦額のすべてを一括で全部返済することを一括返済と言いますが、一括返済をすればその時点で返済はすべて終了となります。
返済というストレスを数十年持ち続けることは精神的に辛く感じることもあるでしょう。年齢とともに変化する生活の中では、最初は楽に思えていた額が、ふとした時に重くのしかかってくることもあるかもしれません。
もし一括で返済を終わらせることができたら、気持ち的に晴れやかになり将来的な不安も解消され、たとえば結婚など新しい人生の一歩を踏み出す勇気も持つことができるかもしれませんね。
機関保証の保証料の一部が戻る
日本学生支援機構の奨学金を申し込む際には、人的保証制度か機関保証制度のいずれかを選ぶ必要があります。
人的保証制度は、一般のローンなどと同じように連帯保証人を立てるものです。
一方機関保証制度は、保証機関である公益財団法人日本国際教育支援協会が連帯保証を請け負う制度です。この場合、毎月保証料の支払いが発生しますが、その代わり連帯保証人と保証人を立てなくても良くなります。
機関保証の保証料は、貸与額や期間、返還の期間などから決定され、その額は奨学生証に記載されるので確認できます。
支払い方法は、毎月の貸与額から差し引かれる形となっています。
そのため、全額繰上返還もしくは一部を繰上返還をして返済の期間が短縮し完了したり、返還免除になった場合、すでに支払い終わっている保証料の一部が保証期間から戻ってくる場合があるのです。
一度手元から離れていた金額が戻ってくる、というのは嬉しいですよね!
保証料の目安は、日本学生支援機構の「保証料の目安」を参考にしてください。
奨学金を繰上返済するデメリット
次は、繰上返済をした場合のデメリットにはどんなものがあるか考えてみましょう。
貯蓄がなくなる
当然ですが、繰上返済はまとまったお金を支払うことになります。
上記にあげたように、利息分の節約や返済期間の短縮のことばかりに気をとられ繰上返済に重点を置いてしまうと、貯蓄に余裕がまったくなくなってしまうことが考えられます。
突然の病気や事故による入院、会社でのおつきあい、友人へのお祝い等で、思いがけず出費が重なることも多々あります。
そんな時に、繰上返済してしまったので貯蓄がまったくない、などという状態では、結果他のローンなどに頼らざるを得なくなり、気づけば利息分を節約した以上の借金を負ってしまったりしては本末転倒です。
高金利ローンの負担が増える場合がある
卒業後には急な出費以外にも、マイホームやマイカーの購入など大きなお金が動く買い物をすることもあるでしょう。
奨学金の繰上返済をしてしまい貯蓄がないと、頭金を用意できずに住宅や車等の費用全額をローンで賄うことになってしまいます。
住宅ローンやマイカーローンはカードローンに比べてると利率が低く設定されていますが、奨学金はそれらのローンに比べても利率はさらに低く設定されていますので、借入額プラスそのローンの利息がかかってしまいます。
せっかく繰上返済をして奨学金の返済を減らしたのに、結局は奨学金と合わせての借入総額がトータルで考えると高くなってしまうことも考えられます。
奨学金の繰上返済をするだけの余裕があるのなら、近い将来に訪れるかもしれない住宅購入やマイカー購入の際の頭金に回して新しい借入額は少なくした方が賢明ですね。
奨学金を繰上返済しないメリット
繰上返済をする場合のメリット・デメリットを考えて来ましたが、あえて繰上返済をしない場合のメリットも考えてみましょう。
働くモチベーション
月々に返済する金額がある、ということを意識していることで、日々働くモチベーションを高めることができる、という利点もあるようです。
卒業し、就職をすると、学生時代のころにはなかったような、ストレスやプレッシャーを感じ、日々の生活に疲れてしまい、仕事へ行くことに辛さを感じてしまうこともあるものです。
そんな時に、奨学金を返済する、という目的をしっかりと持てていると、働く意欲も湧いてくる、という一面もあるでしょう。
奨学金「繰上返済」のポイント
上記にあげたメリットやデメリット等を考えた上で、繰上返済をする際の注意点をまとめます。
●収支のバランスをとる
収入と支出とのバランスを考えましょう。余裕があるから返済、と安易に考えず、その後の収入の予定もしっかりと把握しておくことが大切です。
●他のローンとのバランス
生活をしていく上で他のローンを利用するようになった場合は、繰上返済をする余裕があるようなら、他のローンをいくら利用したいのか、その利息を含めた返済額はいくらになるのか、奨学金を繰上返済した場合としなかった場合とにその分を新しいローンの頭金に回した時に、総返済額はどれくらい変わってくるか、などをしっかり確認しましょう。そして月々の返済の合計額も把握し、無理のない返済生活を送るよう注意しましょう。
●資金に余裕があるときにする
急な支出にも対応できるように、資金に余裕がある時にする。
奨学金の繰上返済の手続き方法
日本学生支援機構の繰上返済は手数料はかかりません。申し込みは以下の方法で行えますので自分の都合に合わせて申し込みましょう。
インターネットによる手続き
「スカラネット・パーソナル」を利用して申し込みます。
申込期間:繰上返還を希望する月の前月中旬~当月中旬
郵送・FAXによる手続き
〒162-8412 東京都新宿区市谷本村町10-7 日本学生支援機構 奨学事務センター まで、繰上返還申込書に必要事項を記入して申し込みます。
申込期間:繰上返還を希望する月の1か月前に締め切り(締め切り前3か月間が申込期間)
電話
奨学金返還相談センター(0570-666-301【ナビダイヤル】)に連絡をして申し込みます。
申込期間:繰上返還を希望する月の前月