フラット35「連帯債務」と夫婦ペアローンの違い
銀行の住宅ローンでは、夫婦それぞれの名義で契約する「ペアローン」という借り入れ方法がありますね。
ペアローンにすると夫婦それぞれの負担を分けることが出来るため、共働き家庭では利用するケースも増えてきています。
フラット35でも、同じように「ペアローン」という形での借り入れ方法があるのでしょうか?
実は、フラット35では、ペアローンでの借り入れ方法はありません。
しかし、フラット35はペアローンに代わって「連帯債務」という形の借り入れ方法があります。仕組みは少し違ってきますが、連帯債務を利用することで夫婦の負担を分け合うことが可能になります。
今回は、「フラット35の連帯債務」の解説や「ペアローン」と「フラット35の連帯債務」の違いなどを紹介します。
ペアローンとは
ペアローンというのは、1つの物件に対して債務を2つに分けた借り入れ方法です。
例えば借入額が3,000万円だった場合、夫が2,000万円、妻が1,000万円などと分け合い(分け合う割合は自由)、夫婦それぞれが別々にローン契約をしてお金を借ります。
それぞれの契約は独立しているため、印紙代や登記費用、事務手数料などの諸費用も2倍かかってしまいますが、ローンは2本になるため、1人で3,000万円の債務を抱えるよりも負担が軽減されますね。
更に収入も合算することが出来るため、借入可能額も増やすことが出来ます。
※ペアローンの詳しい内容については「夫婦で住宅ローンを組むペアローンのメリット・デメリット」をご覧ください。
連帯債務とは
フラット35ではペアローンでお金を借りることはできませんが、その代わり「連帯債務」という借り入れ方法を利用することが出来ます。
連帯債務というのは、ペアローンとは違い契約そのものは1本となりますが、夫婦それぞれが借り入れに対しての債務者となることができます。
さらに収入も合算して借入額を増やすこともできるため、ペアローンの仕組みとそれほど大きな違いはありません。
ペアローンと「フラット35連帯債務」の違い
では、ペアローンと見比べながら、連帯債務とはどのような仕組みなのか詳しくお話していきたいと思います。
「フラット35連帯債務」の利用条件
銀行のペアローンも、フラット35の連帯債務も、お金を借りる際には以下のような要件を満たさなければなりません。
・安定した収入があること
・同居していること
・親族に限ること
ただし、ペアローンの場合は、継続的な同居の可能性が低くなると考えられる場合、親族での申し込みでも審査に通過出来ないケースもあります。
例えば、兄弟や姉妹などでの申し込みですね。
親子や夫婦よりも将来的な同居の可能性が低いため、金融機関によっては申し込みを断る場合も多いのです。
また夫婦でも、入籍前や別性、事実婚等の場合は審査に通過できない可能性が高くなります。
更に収入に関しても、パートやアルバイト、派遣社員や契約社員では不可としている金融機関もあります。
このように銀行のペアローンは、条件が若干厳しめになっているのです。
一方フラット35の連帯債務は、収入合算する条件が以下のように定められています。
・申し込み本人の直系親族、配偶者(婚約者、内縁関係にある方も含む)
・申込時の年齢が70歳未満
・申し込み本人と同居される方
・連帯債務者となる方
しかし、親族が住むための物件やセカンドハウスを購入した場合は、同居する必要がありません。(セカンドハウスや親族が住む家を購入する際にも、フラット35を利用することができます)
また、入籍前の婚約者や内縁関係にある方でも、連帯債務者になることが出来ますし、収入合算する方が、パートやアルバイト、派遣社員や契約社員などでも申し込むことが出来ます。
銀行のペアローンよりも、利用出来る方の幅が広がりますね。
「フラット35連帯債務」の借入可能額
ペアローンの場合、収入合算出来る金額は合算者の年収の50%までという金融機関もあります。もちろん70%や100%可能という場合もありますが、金融機関によって違ってくるので、申し込む場所に確認する必要がありますね。
しかしフラット35であれば、窓口をどの金融機関にしても、収入合算者の収入全額まで合算可能です。
合算者の収入が少なくても、100%合算できることで借入可能額を増やすことが出来ますね。
ただし、50%以上合算する場合は以下のような計算式で、返済期間が決定します。合算者の年齢が高いと、返済期間が短くなってしまうので注意しましょう。
※1歳未満は切り上げ
収入合算者の合算が50%未満・・・80歳-45歳(申し込み本人の年齢+1歳)=35年の返済期間
収入合算者の合算が100%・・・80歳-51歳(合算者の年齢+1歳)=29年の返済期間
このように、合算者の合算割合と年齢によって、最長の返済期間が変わってきてしまいます。返済期間も考慮しながら、合算額を調整することも大切ですね。
またフラット35では、どんなに収入合算できたとしても、借入限度額は以下のように定められています。
・100万円以上8,000万円以下
・建設費または購入価額以内
・2人の年収を合わせて400万円未満の場合は、総返済負担率30%以下
・2人の年収を合わせて400万円以上の場合は、総返済負担率35%以下
「フラット35連帯債務」の団体信用生命保険
ペアローンの場合は、夫の契約と妻の契約がそれぞれ独立しているため、当然のことながら、夫婦それぞれが健康で、団体信用生命保険に加入できなければローンを組むことが出来ません。
しかしフラット35の連帯債務の場合は、どちらか一方だけが団体信用生命保険に加入するという方法を取ることができます。
また、どちらか一方が加入した場合でも、加入された方が死亡もしくは高度障害状態となった場合、その方の持ち分や返済額に関わらず、保険金でローンが全額完済となります。
さらに夫婦で連帯債務となる場合は、以下の要件を全て満たすと、夫婦2人で加入する夫婦連生団信(デュエット)を利用することもできます。
・告知書を記入する時点で、満15歳以上満70歳未満であること
・地域担当幹事生命保険会社の加入承諾があること
・戸籍上の夫婦、婚約関係、内縁関係にあること
どちらか一方が加入する場合は、加入していない方が死亡や高度障害状態となってもローンは完済されないので、どちらが加入するかしっかりと考える必要がありますが、健康上加入したくてもできない場合でも、ローンをあきらめる必要がないのは嬉しいですね。
また、夫婦両方が加入できるデュエットの場合は、特約料が1人だけ加入の場合に比べて1.56倍となってしまいますが、どちらが加入するかを選択する必要もなく、どちらに万が一のことがあっても保険金で全額完済となるので安心です。
団体信用生命保険においても、銀行のペアローンよりもフラット35の方が柔軟性がありますね。
「フラット35連帯債務」の諸費用
ペアローンは1つの物件に対して契約が2本になるため、諸費用もそれぞれの契約に対して必要になります。つまり、1人で契約する時に比べ、諸費用が2倍になってしまうのです。
しかしフラット35の連帯債務の場合は、債務者が2人になりますが契約は1本のため、諸費用は1本分だけです。
ペアローンも連帯債務も夫婦で契約し夫婦で債務を分け合う点では同じになるため、諸費用を抑えられるフラット35の方がお得感がありますね。
「フラット35連帯債務」の金利プラン
ペアローンの場合は、物件は1つでも夫も妻もそれぞれ独立した契約を1本ずつ持つことになるため、金利プランを変えることが出来ます。
例えば、夫の契約は変動型、妻の契約は短期固定型、などというように自由に組み合わせることが可能になるのです。
しかし、フラット35は長期固定型しか用意されていませんね。
連帯債務になっても金利プランはやはり長期固定型のみです。変動や短期固定などを選択することはできませんし、当然のことながら、変動と固定を組み合わせるということもできません。
金利プランに関しては、ペアローンの方が自由に選択できるというメリットがあります。
住宅ローン控除
ペアローンの場合も、連帯債務の場合も、どちらも夫婦に収入があり、所得税を支払っているのであれば、住宅ローン控除を受けることが出来ます。
ただし妻が何らかの事情(妊娠、出産、育児など)により専業主婦になってしまうと、その時点から妻が住宅ローン控除を受けることが出来なくなってしまいます。
債務を分け合って、それぞれが控除を受けていたはずなのに、どちらか一方が控除を受けられなくなってしまうと、単独でローンの契約をして一人だけが控除を受ける時よりも損をしてしまいますね。
ローンを契約してから少なくとも10年間は共働きでいられるという自信がある場合に、ペアローンや連帯債務による借り入れ方法を利用したほうがいいでしょう。
ペアローンと「フラット35連帯債務」まとめ
このように、ペアローンも連帯債務も2人で債務を分け合うという点は同じになりますが、条件や諸費用、団体信用生命保険や金利プランなど、細かい部分に違いが出てきます。
さらに、いずれもフラット35の連帯債務の方がメリットが高いように感じられますね。
また、夫婦で契約する際は、ペアローンよりも連帯債務の方が自然な方法と言えるのではないでしょうか。
仮にペアローンにして契約を2本にしても、実際にしっかりと債務を分けて考え、別々のものと認識して返済も分けている方は少ないように思えるからです。
もちろん、収入も支出も夫と妻それぞれでしっかりと分けて管理している家庭もあるとは思いますが、お互いの収入を一緒に管理している家庭の方が多いのではないでしょうか。
収入も支出も一緒に管理するのであれば、連帯債務の方が管理しやすいですね。
フラット35にペアローンがないのはデメリットと感じる方も多いかもしれませんが、もしかすると夫婦としてより自然な返済方法(連帯債務)を提供してくれているだけなのかもしれません。
最初から銀行独自のローンを利用する予定で、ペアローンを検討してい場合はいいのですが、「フラット35のペアローンを利用したいけれど、ペアローンがないから銀行のローンに変更しよう」と考えている方は、「フラット35の連帯債務」も視野に入れて検討してみることをお勧めします。