フラット35とフラット35Sの違いは?
よく、フラット35やフラット35Sという名前を目にすることがあると思いますが、35の後ろについているSとは何のことでしょう?
もしかするとどちらも同じ住宅ローンと思っている方も多いかもしれませんね。
実際、フラット35もフラット35Sも、長期固定金利である点や最長35年の住宅ローンが組める点など、内容は同じになっています。
しかし、借入時の金利が違うのです。
フラット35Sの方が一定期間、フラット35よりも金利が引き下げられる仕組みとなっているからです。
金利引き下げとなるのであればフラット35Sを利用したくなりますが、誰でも利用できるわけではありません。フラット35Sが可能となる要件を満たした住宅を取得しなければならないのです。
今回は、フラット35Sの利用条件について詳しく見ながら、フラット35とフラット35Sの違いについて解説していきます。
フラット35とフラット35Sの違い
フラット35とフラット35Sで大きく異なるのは、次の2点です。
①借り入れ対象住宅の条件
②一定期間の金利
借り入れ対象住宅の条件
フラット35を利用する場合、借り入れ対象となる住宅は、以下の要件をクリアする必要がありますね。
・一戸建ての場合は床面積70㎡以上、共同住宅の場合は床面積30㎡以上であること。
そして、技術基準に適合しているかどうか、検査機関に検査を依頼し、適合証明書を発行してもらわなければなりません。
ここまででも銀行の住宅ローンよりも住宅に対する条件が厳しいように感じられますが、フラット35Sの場合は、フラット35の利用条件をクリアし、さらに以下のような一定の技術基準を満たした高性能な住宅を取得しなければ利用することが出来ません。
・省エネルギー性
・耐震性
・バリアフリー性
・耐久性、可変性
フラット35Sを利用出来るか否かは、申し込み本人の返済能力がどれくらいあるかよりも、どのような住宅を建設・購入するかにかかってきます。
低金利のフラット35Sを利用したい場合は、ローンの申し込みをする時ではなく、住宅を取得する時に「フラット35Sの要件を満たした住宅かどうか」のチェックをする必要がありますね。
一定期間の金利
フラット35、フラット20、フラット50の金利(2018年8月実行金利)は以下のようになっています。
ただし、ここで提示しているのは住宅金融支援機構で定めている金利の範囲になります。それぞれ窓口となる金融機関はこの範囲の中から適用する金利を決めていくので、どの金融機関を窓口に選ぶかによっては適用金利が違ってくることもあります。
・フラット35(団信付き)借入期間21年以上35年以下
融資率9割以下 | 1.340%~2.070% |
融資率9割超 | 1.780%~2.510% |
・フラット20(団信付き)借入期間15年位以上20年以下
融資率9割以下 | 1.290%~2.020% |
融資率9割超 | 1.730%~2.460% |
・フラット50(団信付き)借入期間36年以上50年以下
融資率9割以下 | 1.700%~2.200% |
融資率9割超 | 2.140%~2.640% |
※団信に加入しない場合は、上記の金利-0.2%
フラット35Sを利用する場合は、以下のように一定期間フラット35よりも低金利となるためお得です。
当初10年間 フラット35の金利から-0.25%
<フラット35S 金利Bプラン>
当初5年間 フラット35の金利から-0.25%
低金利となるのは一定期間ですし、引き下げとなるのも0.25%ではありますが、借入額によっては大幅に利息を減らすことが出来るでしょう。
フラット35Sの詳しい利用条件
フラット35とフラット35Sの大まかな違いはお分かりいただけたと思いますが、「省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性・耐久性、可変性で一定の技術基準を満たす」とは実際にどういうことなのでしょう?
どの様な住宅だと基準を満たしていると言えるのか、満たしていることを判断するためにはどうするといいのか、フラット35Sの詳しい利用条件を見ながらお話していきたいと思います。
※申し込む方に対する条件や借入期間、借入可能額などについては、フラット35と同じになります。
フラット35の詳しい利用条件については「フラット35の借り入れ条件は?」をご覧ください。
フラット35Sが利用可能となる技術基準とは?
フラット35Sには、10年間金利が引き下げられる「フラット35S Aプラン」と、5年間金利が引き下げられる「フラット35S Bプラン」があります。
それぞれある一定の技術基準を満たした場合に利用することが出来るのですが、BプランよりもさらにAプランの方が厳しい基準を超える必要があります。
それぞれの基準は以下のようになっています。
①フラット35S Bプランの基準(新築住宅と中古住宅共通の基準)
・省エネルギー性
住宅性能表示制度の断熱等性能等級4の住宅や、一次エネルギー消費量等級4以上の住宅が対象となります。
住宅性能表示制度とは、質の良い住宅を取得するために作られた、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度のことを言います。
断熱等性能等級4の住宅とは、断熱材の厚さがフラット35の基準の断熱等性能等級2の場合よりも厚く、開口部の断熱性能、日射遮蔽性能の基準を満たすなど、従来よりも高い水準の断熱性を実現した住宅のことを指します。
また、外壁や屋根を断熱構造とする場合、通気層を設置する必要もあります。
ただし、ここで使用する断熱材は、必要な熱抵抗を満たしていれば、複数重ねて施行することも可能です。
・耐震性
耐震等級2以上の住宅や免震建築物が対象となります。
具体的には、数百年に1度発生する地震(震度6強~震度7程度)の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度を想定して建てられた住宅を指します。
・バリアフリー性
高齢者等配慮対策等級3以上の住宅が対象となります。
具体的には、浴槽出入りのための手すりを設置したり、段差のない構造にするなど、高齢者や介助用車いすが移動する際の転倒や転落を防止し生活行為を容易にするための措置がなされた住宅を指します。
参考:フラット35S Bプラン 基準 高齢者等配慮対策等級3
・耐久性、可変性
劣化対策等級3の住宅で、維持管理対策等級2以上の住宅が対象となります。※共同住宅の場合は、一定の更新対策が必要です。
具体的には、建物に使用する材料の劣化を軽減させ、長持ちするよう配慮して建てられた住宅のことを指します。
参考:フラット35S Bプラン 基準 劣化対策等級3 維持管理対策等級2
②フラット35S Aプランの基準(新築住宅と中古住宅共通の基準)
・省エネルギー性
認定低炭素住宅(低炭素建築物新築等計画が認定された住宅)、一次エネルギー消費量等級5の住宅、性能向上計画認定住宅が対象となります。
参考:性能向上計画認定住宅
・耐震性
耐震等級3の住宅が対象となります。
具体的には、数百年に1度発生する地震力の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しないよう対策された住宅を指します。
・バリアフリー性
高齢者等配慮対策等級4以上の住宅が対象となります。 ※共同建て住宅の専用部分は等級3でも可。
具体的には、浴槽出入りのための手すりを設置したり、段差のない構造にするなど、高齢者や介助用車いすが移動する際の転倒や転落を防止し生活行為を容易にするための措置がなされた住宅で、なおかつ自走式車いす使用者とその介助者が、建物への出入りを容易に出来るように配慮された住宅を指します。
また階段は、回り階段、螺旋階段、曲がり階段など安全上問題があると考えられるものは用いることはできません。直進階段や屈折階段、中あき階段、矩折れ階段などは利用可能です。
参考:フラット35S Aプラン 基準 高齢者等配慮対策等級4
・耐久性、可変性
長期優良住宅の普及の促進に関する法律の規定にそって認定を受けた、長期優良住宅が対象となります。
また、建設地所管の行政庁に申請し認定を受けて、長期優良住宅の認定通知書を発行してもらう必要があります。
③フラット35S 中古タイプの基準(中古住宅だけが適用されるタイプ)
中古住宅を取得する場合は、以下のいずれかを満たしていると適用となります。
・開口部断熱の省エネルギー性
二重サッシ、もしくは複層ガラスを使った住宅。
・外壁等断熱の省エネルギー性
省エネルギー対策等級2以上か断熱等性能等級2以上で建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅。もしくは、フラット35S(外壁等断熱の省エネルギー性に適合する住宅)として登録された住宅。
・手すり設置のバリアフリー性
階段や浴室に手すりを設置している住宅。
・段差解消のバリアフリー性
屋内の段差(玄関、トイレ、浴室、洗面所、脱衣所、高齢者の寝室のある階のすべての居室、バルコニーなど)を解消させた住宅。
フラット35Sの対象住宅か判断するためには?
取得する住宅が、フラット35Sの対象住宅かどうか判断するためには、工事請負業者か販売代理業者に確認しましょう。
また、適合している場合は適合証明書を発行してもらうことが出来ます。申込時に適合証明書を提出する必要はありませんが、資金実行手続き前までに適合証明書を提出する必要があるので、実行までに準備しておきましょう。
フラット35S 受付期間
フラット35Sには予算金額が設定されていて、予算に達する場合受付終了となってしまいます。
そのため、申し込む際には、申し込み受付期間かどうかを確認する必要があるのです。
受付終了する際は、終了の3週間前にフラット35の公式サイトで発表されるので、チェックしておきましょう。
既存建築物がある場合
新築部分と既存建築物が接続した状態では、フラット35Sを利用することはできません。
ただし、以下のように性能的に分離している場合は利用することが出来ます。
省エネルギー性・・・界壁、界床、廊下のドアで断熱区画されている。
耐震性・・・エキスパンションジョイント等で分離されている。
バリアフリー性・・・内部で行き来できない構造。
耐久性、可変性・・・構造的に分離され、配管等も新築部分だけで完結している。
他行からの借り換え時でも対象住宅であればフラット35Sが利用できる?
住宅ローンの借り換えの際にフラット35Sを利用することはできません。また、フラット35の申し込みをして、資金を受取ってからフラット35Sに変更することもできません。
ただし、フラット35を申し込んだ後でも、資金を受取る前で、当初の申し込み受付時期がフラット35Sの申し込み受付期間内である場合、フラット35からフラット35Sへの変更手続きが可能となる場合があります。この場合は窓口となる金融機関に確認してみましょう。
フラット35Sの技術基準を満たした場合のメリット
フラット35Sの技術基準を満たすことで、一定期間低金利でフラット35を利用することが出来ますね。
また住宅においても、高性能になるため、長い目で見たときにお得感が得られることでしょう。
例えば・・・
・省エネルギー性の住宅の場合
夏は涼しく冬は暖かい家になるため、冷房と暖房の使い方が変わってきます。省エネルギー性ではない住宅よりも、冷暖房等の電気代を節約することが出来るでしょう。
・耐震性の住宅の場合
地震から家と家族を守ることが出来ます。地震保険も割引されるため、保険料も節約することが出来ますね。
耐震性ではなかった場合、地震によって崩壊してしまう恐れもあるため、その場合の建て直し費用も考えると、耐震性の住宅を購入しておいた方が安上がりかもしれません。
気持ちの面での安心感も得られますね。
・バリアフリー性の住宅の場合
お年寄りや体の不自由な方が一般の住宅に住んでいると、健常者にはわからない不便がたくさんあります。バリアフリー性の住宅にすることで家族全員が住みやすい環境を整えることが出来るでしょう。
・耐久性、可変性の住宅の場合
丈夫な造りになるため長持ちさせることが出来ます。将来的に修繕等の費用も節約させることが出来ますね。
このように、一定の技術基準を満たした住宅は高額なイメージがあるかもしれませんが、長い目で見るとお得な住宅と言えるでしょう。
フラット35Sのデメリット
①返済額が変更する
フラット35よりも一定期間低金利が実現するため、お得ではあるのですが、金利引き下げ期間が終了すると元の金利に戻ってしまいますね。
フラット35は「借り入れから完済まで金利も返済額も変わらず一定」と言うのが売りになっていますが、フラット35Sだと5年後もしくは10年後に1度返済額が変わってしまうため、「長期固定金利」とはちょっと違うと感じてしまうかもしれません。
また、金利引き下げが終了する時、返済額が少し上がってしまうため、急に返済負担が大きくなったように感じてしまうかもしれません。
②借り換えが不可
フラット35Sは、新築購入時でも、中古購入時でも利用できますが、「新規購入」という原則があります。
そのため、借り換えの際にフラット35Sを利用することはできません。技術基準を満たしている対象物件だとしても、新規に購入しなければならないのです。
ただし、このようなデメリットはあるものの、フラット35Sを利用できる方にとっては、フラット35でお金借りるよりもメリットはとても高いと思います。
途中で返済額が上がったとしても、フラット35の通常の利率に戻るだけなので、損ではありませんね。
また、最近はフラット35Sの基準を満たすような住宅もどんどん増えてきています。
住宅を取得する際は、ぜひ技術基準をチェックしてよりお得な住宅ローンを利用できるよう検討してみましょう。