過去の滞納・延滞履歴は住宅ローン審査に影響する?
住宅ローンの審査を受ける時、申し込みをした本人の過去の借入状況をチェックされます。また、信用情報に滞納や延滞の履歴が残っていると、審査がスムーズに進まなくなる場合があります。
金融機関によっては、滞納や延滞の履歴を見ただけで、住宅ローンの審査を不合格としてしまう所もあるのです。
ですから、過去の滞納や延滞履歴は、住宅ローン審査に大きく影響すると言っても過言ではないでしょう。
今回は、住宅ローン審査に影響を及ぼす借り入れや、なぜ金融機関は過去の延滞を知ることが出来るのか?などを解説します。
住宅ローン審査でチェックする項目
住宅ローンの審査では、主に以下のような点をチェックしています。
・年齢
住宅ローンの借り入れ条件として金融機関では、借り入れ時の年齢や完済時の年齢に上限を設けていますので、定められた上限を超えていないか年齢を確認します。
・職業
信用できる方なのか、住宅ローンの返済能力がある方なのかどうかをチェックするため、職業や職種、勤続年数などを確認します。
公務員などの安定した職業や勤続年数が長い方、大手に勤めている方等、今後も確実で継続的な収入が見込めると判断できると、金融機関にとっても安心ですね。
・年収
年収に対する借り入れ希望額が妥当か、返済比率なども計算し、返済が可能かどうかのチェックをします。
・健康状態
住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険に加入することを義務付けている金融機関が多いです。
団体信用生命保険に加入していると、万が一加入者が死亡もしくは高度障害状態となった場合、保険金でローンを全額完済させることが出来るからです。
しかし、持病がある方や健康状態に不安がある方だと、団信に加入できなくなってしまいます。そのため、審査では団信に加入できる健康な方かどうかの確認も行われるのです。(フラット35の場合は団信加入は任意となっているため、銀行の審査ほど重視されません)
・担保評価
購入物件は、金融機関の担保となります。
そして、万が一借り入れ本人が返済できない状態になった場合、金融機関は担保物件を売却することで貸し付けたお金を回収することになるため、購入物件の評価額がどれくらいなのか確認します。
もし評価額が低すぎる場合や、評価額に対して借り入れ額が高すぎる場合は住宅ローンの審査に通過することが出来なくなってしまいます。
・借り入れ状況
他の借り入れがないかどうかも確認します。他社からの借り入れが金額・件数が多いと、住宅ローンを組んでも返済が困難になってしまうことが考えられるからです。
・過去の返済状況
過去の借り入れに対する返済が滞りなく行われているかどうかチェックします。
過去の返済がきちんと行われている場合は、住宅ローンを組んでも確実な返済が期待できますが、過去に滞納を繰り返している方だと、住宅ローンの返済も確実に行えない可能性が高いため、審査に通過できなくなってしまいます。
これらのチェック項目の中で今回注目したいのが、「借り入れ状況」と「過去の返済状況」です。
住宅ローンの審査では、借り入れの申し込みをしてきた方が、他社から別の借り入れがあるかどうか、どのような借り入れなのか、それに対する返済状況はどうなっているのか、必ず確認しているのです。
当然、過去に延滞等があると、住宅ローンの審査に通過するのは難しくなってしまうでしょう。そのため、過去の滞納や延滞は住宅ローン審査に大きく影響すると言われているのです。
では、過去の借り入れ状況は、どのようにして確認されるのでしょう?
実は金融機関同士で共有できる、「個人信用情報」というものがあるのです。住宅ローンの申し込みを受け付けた金融機関は、この個人信用情報をチェックして、申し込んできた方の借り入れや返済状況を把握しています。
個人信用情報とは?
信用情報とは、クレジットやローンの契約、申し込みなど、個人の、信用にもとづいて行われる様々な借り入れに関する情報のことを指します。
私たちがクレジットカードの申し込みをしたり、ローンを契約するのも、信用にもとづいて行われる借り入れとなるため、このような情報が全て個人信用情報へ登録されているのです。
そしてこれらの情報は情報機関を通じて、様々な金融機関が顧客の信用を判断するための参考資料として、開示できるようになっているのです。
そのため、住宅ローンの申し込みをすると、金融機関はその人が信頼できる方なのかどうかを判断するために信用情報を開示し、過去の借り入れや返済状況を確認しています。
個人信用情報には、以下の様な内容が掲載されています。
・本人の情報
氏名、生年月日、郵便番号、電話番号など、本人に関する情報が記載されています。
・申し込み内容の情報
クレジットカードや様々なローンなどの申し込みや契約日、支払い予定日、終了予定日など、様々なローンの申し込みに関する情報が記載されています。
・支払い状況
請求額、返済額、延滞や破産などの有無、延滞が解消された日など、支払い状況に関する情報が記載されています。
・利用記録
クレジットカードで商品を購入した、カードローン口座から出金したなど、利用した日や利用目的、利用会社などの情報も記載されています。
日本の信用情報機関
日本で設置されている信用情報機関は以下の3つです。
・株式会社 シーアイシー(CIC)
信用情報機関として一番有名なのがCICです。貸金業法や割賦販売法に基づく機関で、クレジットカード会社やローンを取り扱う銀行、信販会社、一部の消費者金融、携帯電話会社など、多くの会社が加盟しています。
・株式会社 日本信用情報機構(JICC)
こちらも加盟会社が多いことで有名な貸金業法に基づく機関です。消費者金融やクレジットカード会社、リース会社、銀行、保証会社などが加盟していますし、CICとJICCの両方に加盟している金融会社も多くなっています。
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行協会が設置し運営している信用情報機関です。銀行はもちろんのこと、銀行系の金融機関、保証会社やローン会社なども加盟しています。
このような情報機関を通して、借り入れ状況がわかってしまうため、過去に滞納や延滞があれば、審査に通過するのは難しくなってしまうのです。
しかし、滞納したことがある方は今後2度と住宅ローンを組むことが出来なくなってしまうというわけではありません。
実際に支払うお金が用意できず返済できなかっただけではなく、残高不足でたまたま引き落としされていなかったという場合もあるでしょう。
それだけで住宅ローンを組めなくなってしまうのでは困りますね。
実はこのような不注意による1~2回の滞納では信用情報に記載されないことがほとんどなのです。(ただし、CICの場合、延滞した事実が記号によってわかるようになってしまうこともあります)
また、もし良くない情報が掲載(ブラックリスト入り)されてしまったとしても、ある一定期間を過ぎるとその情報は消される仕組みとなっているため、消された後に申し込みをすると、審査に通過することが出来ます。
個人信用情報の事故記録はいつまで残る?
個人信用情報に事故情報が登録されている期間は、その事故内容や情報機関によって違ってきます。
61日以上延滞・・・延滞解消日から5年
3か月以上延滞・・・延滞解消日から5年
任意整理、特定調停、個人再生・・・掲載されない
自己破産・・・5年
代位弁済・・・5年
強制解約・・・5年
・日本信用情報機構(JICC)
61日以上延滞・・・延滞解消日から1年
3か月以上延滞・・・延滞解消日から1年
任意整理、特定調停、個人再生・・・5年
自己破産・・・5年
代位弁済・・・5年
強制解約・・・5年
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
61日以上延滞・・・延滞解消日から5年
3か月以上延滞・・・完済日から5年
任意整理、特定調停・・・5年
個人再生・・・10年
自己破産・・・10年
代位弁済・・・5年
強制解約・・・5年
見てわかるように、信用情報に記載される事故記録は以下の場合です。
・返済が出来なくなり、保証会社による代位弁済が行われた場合。
・自己破産などの債務整理を行った場合。
・強制解約となってしまった場合。
もしこのようなケースに当てはまる方で、住宅ローンを検討している場合は、その情報が消える5年~10年待ってから申し込みをした方がいいでしょう。
また、このような場合にあてはまらないケースでも、掲載されてしまうことがあります。
それは以下の様な場合です。
①1~2回の延滞を何度も繰り返している場合
61日以内の延滞でも、1~2回の延滞を何度も繰り返していると、金融機関は度重なる延滞に対し「信頼を損ねる」として、登録してしまうことがあるのです。1~2回までであればブラックリスト入りしないから大丈夫という安心は禁物です。
②CICの場合
CICの場合、1回でも延滞すると、その月の欄にAという延滞を示す記号をつけます。
Aがついた段階ではブラックリスト入りというわけではありませんし、Aの記号も2年経過すると消えてしまうのでそれほど心配はありませんが、金融機関が判断する場合、Aマークがあるよりはない方が印象がいいですね。
基本的には61日以上の延滞に注意が必要ですが、住宅ローンの申し込みを考えているのであれば、できれば1度も延滞することのないよう確実な返済を継続しておく方が安全です。
③多重申し込みの場合
一度に複数の会社へ借り入れ申し込みをしてしまうと、多重申し込みとして信用情報に記載されてしまうこともあります。
この場合は多重申し込みとなってから6か月間掲載され続けるため、3社以上に申し込みをしたことがある方は6か月以上経過してから、次の会社へ申し込みをした方が安全です。
この様に、長期的な延滞をしたわけではなくても掲載されてしまうこともあるため、実際に自分の信用情報がどのようになっているのか気になる場合は、自分で開示してみるといいかもしれませんね。
自分の個人信用情報は、費用はかかってしまいますが、申請すると自分で開示することが出来ます。
滞納の事実を金融機関い隠さない
もしも、個人信用情報に過去の滞納などの情報が記載されてしまった場合、それを隠そうとしたり嘘の申告をすることは避けましょう。
どんなに隠そうとしても、信用情報を開示してしまえばわかってしまうことだからです。
もし嘘の申告がバレてしまうと、「信用できない人」としてさらに印象は悪くなり、審査に通過することはできないでしょう。
それよりも、金融機関が開示する前に滞納した事実を伝え、いつ、なぜ滞納してしまったのか等詳しい理由を明確に伝えた方が印象が良いでしょう。
もしその理由が正当なものであれば、金融機関側も多めに見てくれることがあります。
住宅ローンも、物件を担保として提供はするものの、やはり信用に基づいた融資となるため、金融機関との信頼関係を作るためにも嘘偽りない、誠実な対応を心掛けることが大切です。
住宅ローン審査に影響する意外なもの
自動車のローンやカードローンなど、「ローン」として契約したもの等であれば、少なからず住宅ローンの審査に影響するものとして自分なりに注意しやすいと思うのですが、実際には「ローン」という意思を持ちづらい借り入れも多く存在していますね。
例えばクレジットカードです。
クレジットカードでショッピングすると、その代金は後日口座から引き落としされる仕組みですね。そのため、お金を借りているという感覚が薄れやすいのですが、これも借り入れの一種で、もし返済を滞ってしまうと当然住宅ローンの審査にも影響します。
このように、意識しづらいけれど注意すべき借り入れについてご紹介していきます。
①携帯電話やスマートフォーンの機種代分割払い
携帯電話やスマートフォンは毎月利用料を支払っていますよね。
しかしこの時、実は毎月の利用分と一緒に機種代を分割払いしているというケースも多いのです。
携帯電話の料金システムは複雑でわかりにくいこともあり、実際に機種代を分割払いしているという意識がない方も多くいらっしゃいますが、このような分割払いも借り入れであり、もし支払いを滞ってしまうと住宅ローン審査に影響するものと言えるため、確実な支払いを心掛けましょう。
②家族カードの返済
家族カードや妻名義のカードなど、夫の年収をもとに作っているクレジットカードの場合、それらのカードの支払いが遅延していても、夫の個人信用情報に登録されてしまいます。
そして、夫名義で住宅ローンを組んだ時に、家族の支払い遅延によって審査に通過できないこともあるのです。
自分は大丈夫と思っていても、家族カードがある場合は、妻や子供に渡している家族カードの返済がどうなっているか、きちんとチェックしておきましょう。
③キャッシング機能つきのクレジットカード
たいていはクレジットカードにキャッシング枠が設定されていますね。
全く使ったことがないという方も多いかもしれませんが、キャッシング枠があるということは、いつでも借り入れできる状況と言えるため、カードローンを持っているのと同じように受け取られてしまうことがあります。
もちろん、クレジットカードを1枚持っているだけではそれほど大きな影響はありませんが、会社の付き合いや友人に頼まれて、などとクレジットカードを複数所持している場合は注意が必要です。
特にゴールドカードなどで、キャッシング枠が大きい場合はさらに住宅ローンへの影響も大きくなってしまうでしょう。
もし、キャッシング枠付きのクレジットカードをたくさん持っている場合は、この機会に使っていない不要なカードは解約しておくといいでしょう。
もしくは、電話で依頼するとキャッシング枠を外すことも出来るので、キャッシングを利用していないのであれば外しておいてもいいかもしれませんね。
④リボ払い機能付きのクレジットカード
キャッシング機能付きと同様、リボ払い機能つきのクレジットカードも、住宅ローン審査に影響してくることがあります。
リボ払いの利率は高めに設定されているため、利用していなくてもカードローンやキャッシングの契約をしているのと同様に見られてしまうことがあるのです。
もし利用していないようであれば、解約してしまった方が安全でしょう。
もちろん大手に勤めている、年収が高い、収入が安定している、返済能力がある、毎月滞りなく返済を行っている等、安心材料が多くある方は問題ありませんが、もしひとつでも不安材料があるのであれば、確実な住宅ローンの審査通過を目指すため、影響を及ぼしそうなものは排除しておいた方が安全です。