個人事業主でも住宅ローンの審査に通る?

住宅ローンの審査に通過するためには、年齢や頭金の有無、健康状態や物件の評価額等、様々な点で金融機関の定める基準を満たさなければなりませんね。

しかし、何よりも重視されるのは「安定した収入があること」です。

収入が無かったり、増減が大きく不安定だったりすると、毎月決まった額のローン返済を継続できない危険性があるからです。

個人事業主の場合、公務員や大手企業に勤めている正社員などと比べると、不安定さは拭えません。そのため、個人事業主の場合、住宅ローンの審査に通過するのは難しいと言われています。

しかし、正社員でなければ住宅ローンを組めないのかというとそうではありません。

今回は、個人事業主でも住宅ローンの審査に通過できる方法についてお話していきます。

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個人事業主でもフラット35なら審査に通りやすい

住宅金融支援機構のフラット35であれば、個人事業主でも住宅ローンの申し込みも可能ですし、実際に審査に通過し、お金を借りている方もたくさんいらっしゃいます。

住宅金融支援機構の審査は、銀行などで行われる審査と重視する点が少し違ってくるからです。

銀行は、年齢や職種や年収、預貯金や過去の借り入れ状況、健康状態など、主に借り入れ本人に対する審査を重視していますね。しかし住宅金融支援機構では、申し込み本人よりも住宅や返済比率等を重視しているのです。

もちろん、年齢や過去の借り入れ状況等もチェックし、一定の基準を満たしているかどうかの判断はしますが、銀行に比べると、申し込み本人に対する審査に関しては柔軟性があると言えるでしょう。

そのため個人事業主はもちろんのこと、派遣社員や契約社員、パートやアルバイトなどでもフラット35の申し込みをすることが出来るのです。

実際、住宅金融支援機構に電話で確認したところ、「1度でも確定申告をしていて、収入が確認できる書類が用意されている場合、年度が変わってからであれば申し込み可能としています」とのことでした。

ただし、住宅金融支援機構では「確定申告書1期分でOK」としていても、実際に申し込む金融機関によっては、「確定申告書3期分必要」としているところもあるそうです。

そのため、申し込む予定の金融機関の必要書類を確認することが大切になってきますが、銀行の住宅ローンよりはフラット35の方が審査通過の可能性が高いと言えますね。

ただ、住宅と返済比率については、以下の様な住宅金融支援機構の基準を満たしていなければ、どんなに返済能力がある方でも審査に通過することが出来ません。

そこで、住宅と返済比率に関しての基準について少し触れておきたいと思います。

①住宅に関する基準

フラット35の申し込みをする場合は、以下の様な基準を満たした物件かどうかのチェックをしてみましょう。

<住宅金融支援機構が定める技術基準の概要>

・一戸建ての場合の床面積は70㎡以上
・マンションなどの共同住宅の場合の床面積は30㎡以上
・接道については一般の道に2m以上接すること
・2つ以上の居住室と、炊事室、便所、浴室の設置
・木造の場合は、一戸建てか連続建てのこと
・外壁、天井、床下などに所定の厚さ以上の断熱材を施工すること
・耐火構造、準耐火構造、耐久性基準に適合していること
・点検口などが設置されていること
・中古住宅の場合は、建築確認日が昭和56年6月1日以降であること
・中古住宅の場合は、土台や床組などに腐朽や蟻害がないこと

など。

中古住宅や新築住宅、一戸建てかマンションかによって満たさなければならない基準は違ってきますが、物件検査を受け、適合証明書を発行してもらうことが出来ると、フラット35を利用することが出来ます。

詳しい技術基準については以下をご確認ください。

フラット35 技術基準の概要

住宅に関する審査は厳しくなってしまいますが、検査を受けて適合証明書の交付が可能となれば、取得する住宅は優良住宅であることが証明されたということになります。

これから長く住む家であれば、優良住宅である証明は安心材料でもありますね。

個人事業主の場合、銀行の住宅ローン審査に通過するのが難しい傾向にあるため、購入する際は優良住宅を中心に検討し、フラット35を利用出来るようにすることをお勧めします。

②返済比率の基準

住宅金融支援機構の審査では、収入が多い少ないよりも、収入に対しての借り入れ額が妥当かどうかが重要になってきます。

つまり収入が少なくても、借入額を抑えることで利用可能となるのです。住宅金融支援機構では、返済比率に関しては以下の様な上限を定めています。

<返済比率>

・年収400万円未満・・・30%以下
・年収400万円以上・・・35%以下

この上限を超えないような借り入れ額に設定することで、審査に通過することも可能でしょう。

このように借り入れ額の調整が可能で、優良住宅を取得することが出来る場合は、開業して1年未満の場合など、銀行の審査に通過するのは難しい状況の個人事業主でも、フラット35であれば利用出来る可能性が高くなります。

もちろん、その他の審査項目もあるため、他社からの借り入れが多かったり、延滞した履歴が残っているなど、不安材料が多いと審査通過も難しくなってしまいますし、申し込む金融機関によっては1期分の確定申告では受け付けてもらえない場合もありますが、銀行の住宅ローンの審査と比べると、フラット35の方が倍以上の可能性があると言えますね。

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個人事業主が銀行の住宅ローン審査に通過しやすくするために

銀行の住宅ローンの場合、フラット35より審査に通過するのは難しくなってしまいます。そのため、個人事業主が審査に通過するためには少し工夫が必要になってくるのです。

住宅ローン審査通過のための工夫について、いくつかご紹介していきたいと思います。

①確定申告での所得金額

個人事業主の場合税金対策のために、所得を実際よりも少なめに申告している場合も多いと思います。

しかし、住宅ローン審査で見られる「収入」というのは、売り上げから経費を引いた「所得金額(利益)」になるため、どんなに売り上げがしっかりあることが分かったとしても、少なく調整された所得で住宅ローンの申し込みをすると、その金額で審査が行われてしまいます。

その結果、審査に通過しにくくなったり、借入額を減額されてしまう危険性があるのです。

ただし、だからと言って修正申告するのもお勧めできません。

実際、確定申告時期が過ぎてからでも修正することは可能なので、申し込みをする前に修正申告をして所得金額を増やしておくという事もできるのですが、修正申告をした場合、その事実も金融機関に知られてしまいます。

さらに、修正申告書の提出を依頼されたり、修正した理由を聞かれることもあるのです。

この時、「住宅ローン審査に通過させるため」と話してしまうと、「審査通過のための水増し」と考えられてしまいます。

実際には税金対策のため所得を少なめに報告していただけで、修正後の金額が正しいものだとしても、住宅ローン申し込み直前の修正というのは、金融機関に良い印象を与えるはずがありませんね。

実際、水増し申告だとしたらなおさらです。

しかも、修正するためにはそれなりの手間や費用がかかってしまいますし、所得金額を修正するという事は、支払う税金も増えることになります。

手間をかけて修正し、高額な税金を支払って、さらに住宅ローンの審査に落ちてしまったら、努力が水の泡ですね。

確定申告した所得金額では審査通過が難しいと考えられる場合は、次回の確定申告まで住宅ローンの申し込みを待ってみたほうがいいかもしれません。

次回の申告の際に所得を調整して提出し、その後住宅ローンの申し込みをすると、急遽修正申告した後の申し込みよりも印象はずっといいでしょう。

ただし、フラット35の場合は申し込む金融機関によっては直近1年分で申し込み可能ですが、銀行の住宅ローン審査では3期分の確定申告が必要になるため、3年分の所得を見られてしまいます。

直近の1年だけ所得が高くても審査に通過するのは難しいかもしれません。銀行の住宅ローン申し込みを希望している場合は、その3年前から準備しておくと安全ですね。

②事業性融資を受けている取引銀行へ申し込み

事業に関する融資を受けている取引銀行の場合、実際の売り上げや事業の実績などは把握できているはずです。また、事業性融資の返済を確実に行っていると信頼関係が築かれていることでしょう。

事業に関する借り入れに関しても理解してくれるため、他行で申し込むよりも良心的な審査を行ってくれるはずです。

住宅ローンを検討している場合、そのような取引銀行に申し込みをすると、審査通過の可能性が上がるかもしれません。

③他社の借り入れを整理する

複数の借り入れがあるかどうかは、個人信用情報をチェックすることでどの金融機関でもわかってしまうことです。他社の借り入れが多いと、お金に困っている人かも?住宅ローンの返済は難しいかも?と思われてしまうかもしれません。

実際、様々な借り入れに対しての返済が複数あると、そこに住宅ローンの返済も加わった場合、自分も大変になっていきますね。

事業性のローンなどは完済させるのは難しくても、クレジットカードのリボ払いやキャッシング等、ちょっとした借り入れがいくつかある場合は、住宅ローンの申し込みをする前に完済させたり解約しておくといいでしょう。

④頭金の準備

預貯金をかき集めて頭金として住宅ローンにつぎ込むというのは、今後の生活を考えると不安ですね。特に個人事業主の場合、今後の収入がどうなるかはわからないため、万が一の時のために預貯金はある程度用意しておく必要があります。

ですから、特に頭金の準備もないまま、欲しい物件を見つけてしまったという場合は頭金ゼロでも仕方ないかもしれませんが、もし物件購入までに時間がある場合は、可能な限り、預貯金とは別に頭金を用意できると安心です。

頭金を入れる額によっては、借り入れ希望額を抑えることが出来るので、審査にも通過しやすくなりますし、借り入れ額が少なくなると月々の支払いも減らすことが出来るので、負担を抑えられますね。

審査通過のためにも、自分のためにも、頭金はあった方が安心です。

⑤安定してから申し込む

銀行の住宅ローンの場合、事業を開始してから間もない状態で、審査に通過するのは難しいでしょう。

通常、銀行では、申し込み条件として事業開始後3年以上経過してからと定めていることが多いからです。同時に、3期分の確定申告書も必要になります。

そのため、事業を開始してから間もない状態では、条件を満たせていませんし安定性にも欠けるため、審査には通過しにくいと言えます。

ただし、3年経過していても、その3年以内に赤字が発生していると、これもまた審査に通過できない原因となってしまいます。

申し込む場合は、過去3年間に大きな変動や赤字がないことが大前提です。

これらのことを踏まえると、やはり事業を開始した後、軌道に乗り、更に赤字等がなく安定していると考えられる時期が来てから住宅ローンを申し込んだ方がいいですね。

もし、赤字はないけれど事業開始後3年未満で、どうしても住宅ローンを組みたい場合は、やはりフラット35がおすすめです。

⑥納税は確実に

税金を滞納していたり、健康保険料の支払い忘れなどは、住宅ローン審査に大きく影響してしまいます。

住宅ローンの審査には、納税証明書なども提出するため、納税は確実に行うようにしましょう。

⑦収入合算

一人の収入では不安がある場合、夫婦や親子などで収入を合算して申し込んでみるというのも一つの方法です。

申し込み条件に満たない年収だったとしても、収入合算することで条件を満たす年収にできるかもしれません。

また、収入合算者は連帯債務者や連帯保証人となるため、1人で申し込むよりも審査に通過しやすくなるでしょう。

<まとめ>
もし、「特に準備していないけれど欲しい住宅を見つけてしまった」「年齢的にも今住宅ローンを組まないと完済できない」など、急ぎの場合はやはりフラット35がおすすめです。

しかし、基本的には「個人事業主がローンを組むのは大変」という事を頭に入れ、住宅を取得する場合は3年以上前から準備しておいた方が安全でしょう。

確定申告は正確に行うこと、頭金を用意すること、取引銀行との信頼関係を築いておくこと、赤字が出ないよう事業を安定させておくこと等、個人事業主が今から出来ることはたくさんあります。

きちんと準備をしておくと、銀行の住宅ローン審査もそれほど恐れる必要はないでしょう。

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