奨学金でお金借りるのに保証人・連帯保証人は必要?
日本学生支援機構では、奨学金の貸与を受ける際に保証制度を設けてあります。保証制度とは、学生が奨学金の貸与を受けるに際にその返済を保証するためのものです。
奨学金は借入金ですので、その返済の保証、ということはつまり、奨学生が返済できなくなったときに、保証人はその返済を肩代わりしなければならないということです。
身内から保証人を頼まれ親族間でトラブルになる、ということもあるようです。
奨学金の保証人を頼まれた時に受けるか否か、は、大きな金額が関わる話ですので、安易に答えを出さず熟慮すべきでしょう。
ここでは奨学金の保証制度について詳しく解説していきます。
連帯保証人・保証人とは
連帯保証人・保証人とは、債務を背負った本人が返済困難になってしまった時に、代わりに返済義務を負う人です。
では、連帯保証人と保証人は何が違うのか、まずは保証人から説明していきましょう。
保証人とは
「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」が認められているのが保証人です。
・催告の抗弁権
債権側からの請求を受けた場合、主債務者への請求を主張することができます。
・検索の抗弁権
主債務者が返済能力があるにも関わらず返済を拒否し、保証人へ請求が回った時に、主債務者が返済可能な資力があるということで主債務者の財産の差し押さえを主張することができます。
・分別の利益
保証人が複数いた時に主催武者に代わって返済を行わなければならない時に借金全部を保証せず保証人の人数で分けた金額のみ負担すればいいことになっています。
連帯保証人
連帯保証人には上記の保証人に与えられている権利や利益が認められていません。
そのため、連帯保証人は債権側からの請求があった場合には、主債務者がどんな状況であっても返済義務が発生します。
また連帯保証人が複数いても、分配はせずその全員が債務全額に対しての返済義務があるのです。
さらに主債務者が破産手続き等行ったとしても、連帯保証人の返済義務はなくなりません。
主債務者が個人民事再生の手続きを行った場合は、主債務者の負担は借入額の5分の1程度ほどの支払いに減りますが、連帯保証人の保証は全額のまま変わらないのです。
以上のように、連帯保証人と保証人とでは、責任の重さが大きく異なります。
奨学金の保証制度
日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けるための保証制度があり、「人的保証」と「機関保証」とから選ぶようになっています。
平成29年度以降に、第一種奨学金を受ける人で所得連動返還方式を選んだ人は「機関保証」を選ばなければなりません。
人的保証
奨学金の返済を保証するため、機構が定めている条件を満たしている人に、奨学生が連帯保証人および保証人として選任し依頼します。
連帯保証人・保証人は、書類を提出することで届け出ますが、原則変更はできません。
保証人はいずれも基本的に親族とされています。
そのため、連帯保証人には父親もしくは母親、そして保証人には叔父・叔母(伯父・伯母)とする人がほとんどでしょう。
●連帯保証人
返済の責任を奨学生とともに負います。
以下にあげる条件のすべてに該当しなければなりません。
▼奨学生が成年のときはその父母(父母がいないときは、奨学生の兄弟姉妹・おじ・おばなど4親等以内の成年親族)
(もし4親等以内の成年親族でない人を選任したい場合は、下記にあげる「返還を確実に保証できる人」にします)
▼未成年、学生でないこと
▼奨学生の配偶者(婚約者)でないこと
▼債務整理中(破産など)でないこと
▼貸与修了時(貸与終了月の末日時)に奨学生が満45歳を超える場合、その時に60歳未満であること
・「返還誓約書」を提出する時に印鑑登録証明書等を添付します
●保証人
奨学生と連帯保証人が返済できない状況になったときに、奨学生に代わって返済します。
以下にあげる条件のすべてに該当しなければなりません。
▼奨学生の父母を除いて、おじ・おば・兄弟姉妹等の4親等以内の親族
▼返還誓約書の誓約日(奨学金の申込日)時に65歳未満であること、ならびに、返還誓約書の提出語に保証人を変更する場合は、その届け出日現在で65歳未満であること
(もし4親等以内の成年親族でない人、または65歳以上の人のどちらか(または両方)に該当する人を選任したい場合は、奨学生本人及び連帯保証人と別生計で、下記にあげる「返還を確実に保証できる人」にします)
▼未成年、学生でないこと
▼奨学生または連帯保証人の配偶者(婚約者)でないこと
▼債務整理中(破産など)でないこと
▼貸与修了時(貸与終了月の末日時)に奨学生が満45歳を超える場合、その時に60歳未満であること
・「返還誓約書」を提出する時に印鑑登録証明書等を添付します
(「返還を確実に保証できる人」を選任した場合は「返還保証書」及び基準を満たす収入・所得や資産に関する証明書も一緒に提出します)
・事前に収入・所得や資産に関する証明書で基準に満たしていることを確認してください。「返還保証書」を提出できない、または、基準を満たす収入・所得や資産に関する証明書を提出できない場合は、別の人物にあたるか、機関保証制度を選択してください。
以下のいずれかの基準を満たし、書類を提出できる人です。
1)源泉徴収票、確定申告書(控)、所得証明書、年金振込通知書など(※1)
給与所得者:年間収入≧ 320万円
給与所得者以外[給与所得以外+給与所得の方も含む]:年間所得≧220万円
(※1:年金収入は給与として扱う)
2)預貯金残高証明書、固定資産評価証明書 等
預金残高+評価額≧貸与予定総額
3)(1)と(2)の組み合わせ
(預金残高+評価額)/16年+年間収入≧320万円(※2)
(※2:所得の場合は220万円)
連鎖破産とその回避方法
大学を卒業すれば、それなりに安定した仕事に就き、それなりの収入を得ることができる、と思い、子供や甥、姪からの保証人依頼を簡単に引き受けてしまうこともあるかと思いますが、今の時代ではその「それなり」というがなかなか難しくなってきています。
それは非正規雇用者が40%近くになっていることや、正規雇用者であっても安定した収入等の雇用条件の中で終身的に勤める者が少なくなってきている等の現実があるからです。
平成25年には奨学金の3ヶ月以上延滞者は187千人になっており、そのうち100万円から200万円未満の年収の者が24%で一番多く、300万円未満の者が約8割を占めています。
一方無延滞者では200万円から300万円未満が25.6%でトップですが、逆に300万円以上の年収者が延滞者では2割程度なのに対し、無延滞者では4割を超えています。
<参考>:日本学生支援機構「平成25年度奨学金の延滞者に関する属性調査」
このような現在の雇用状況や年収の低下とともに、機構側が延滞者への回収を強化していることが連鎖破産(奨学生本人の破産だけでなく保証人も一緒に破産に追い込まれること)の背景にあるのです。
そんな連鎖破産に追い込まれてしまわないために、奨学生の生活状況を把握しておくことが第一です。
そして保証人を引き受けた人自身も、日本学生支援機構の奨学金制度をしっかりと理解しておくことが大切です。
もし奨学生が返済困難になってしまいそうな兆候が見られた時には、機構の返済困難者への救済措置(減額返還・返還期限猶予・返還免除)のアドバイスをすることもひとつの方法ですね。
奨学金は奨学生本人だけの問題ではありません。
「奨学金」という名前になんとなく安心し、「頼まれたのでとりあえず言われるままにサインだけしておいた」などのような軽い気持ちで引き受けてしまわないように注意しましょう。
<参考>:日本学生支援機構「人的保証制度」
機関保証
上記で示した連帯保証人や保証人などの人的保証に代わりに、保証機関が連帯保証をします。
保証機関とは、公益財団法人日本国際教育支援協会です。
保証機関は保証を断るということはしません。
保証料は奨学金の貸与期間中に、毎月の奨学金の貸与額から差し引かれる形で支払います。返済期間中の支払いはありません。
全額もしくは一部の繰上返済等をしたときや、返還免除の適用になり返還が完了したときには、保証料の一部が戻る場合もあります。
保証料は、貸与月額や月数、返還期間、第二種奨学金の貸与利率などにより異なります。
連帯保証人と保証人は立てなくて構いませんが、「本人以外の連絡先」を届ける必要はあります。連絡先は、機構が奨学生本人と連絡が取れないとき、本人の住所や電話番号などを機構側が電話などで照会するために利用します。
平成29年度以降に、第一種奨学金の返済方法に「所得連動返還方式」を選択した場合は、機関保証にしなければなりません。
機関保証は、あくまでも連帯保証人や保証人の部分のみを親族等に頼まず保証機関に依頼しているだけですので、奨学金の返済義務がなくなっているわけではありません。
保証料を払ってはいますが、保証機関はあくまでも保証人です。返済の代わりをしてくれるわけではありませんので、しっかり月々の返済はしていきましょう。
奨学生本人が奨学金の返済を延滞した場合、一定の期間が経過した後、保証機関が本人に代わって返済をします(代位弁済)。その後はその代替えしてもらった返済金について、保証機関の方へ原則一括で返済しなければなりません。
この代位弁済額を滞納すると、年10%の遅延損額金が加算されます。
このように、保証機関へ返済先が移るだけで、奨学生本人の返済義務が消滅することはありません。
保証機関が保証してくれる範囲は、奨学金の元金、第二種奨学金の利息、延滞金です。
保証機関が保証してくれる期間は、貸与中と返還中で、初回の保証料を受領した時に保証開始となります。
保証料の目安に関しては、以下のページから、ご自身の対応するリンク先を参照してください。
奨学金 保証制度を変更したい時
人的保証から機関保証への変更はできますが、機関保証から人的保証への変更はできません。
もともと人的保証を選択していて、連来保証人や保証人が亡くなるなどしたのち、やむを得ない理由で新しい連帯保証人や保証人を選任できないときは、人的保証から機関保証への変更が可能となります。
ただし、変更する場合は、貸与開始時に遡って一括で保証料の支払いをしなければなりません。
平成29年度以降採用者で、人的保証を選択していた人が、第一種奨学金の返済方法を定額返還方式から所得連動返還方式に変更した場合、機関保証制度へ変更が必須となっています。
その場合でも、貸与開始時に遡り、保証料を一括で支払うこととなります。
奨学金 連帯保証人・保証人を変更したい時
届け出ていた連帯保証人や保証人が死亡などで、変更しなければならなくなったときには、奨学生本人が連絡をし「変更届」を提出します。
新しく連帯保証人・保証人になる方からの承諾を受け、「連帯保証人変更届」「保証人変更届」に新連帯保証人・新保証人の自署と実印での押印が必要となります。
変更する連帯保証人や保証人を選任する条件としては、上記「人的保証」にあるものと同じです。
●新連帯保証人
1)印鑑登録証明書(コピー不可)
2)収入に関する証明書類(コピー可)
給与所得者:所得証明書または源泉徴収票など
給与所得者以外:所得証明書または確定申告書(控)など
●新保証人
1)印鑑登録証明書(コピー不可)
以上の書類を「日本学生支援機構 返還部 奨学事務センター」まで郵送にて提出しましょう。
<参考>:日本学生支援機構「保証人変更届」