奨学金の返還免除とは
奨学金には、返済義務のない給付型と返済義務のある貸与型とがありますが、大部分のものが貸与型になっています。
つまり奨学生は、ほとんどの人が学生時代に借りた分を社会人になってから、何年かかけて返済していかなければなりません。(日本学生支援機構の奨学金の返済期間は最長で20年となっています。)
ここでは、その奨学金の返済免除についてお話しします。
返済が難しくなったときの返還免除
たとえば、貸与が終了し、社会に出る時に理想としていた会社に就職できず収入が想定よりも大幅に低かった、または、順調に返済していっていたのに、病気をして長期で入院しなければならず収入が減った、転職して収入が減ってしまった、など返済が思うようにいかなくなってしまったときは、「奨学金が返せなくなったらどうなる?」の記事で書いたように、申し出ることにより「減額返還」または「返還期限猶予」で返済の期間を先送りにしたり、月々の返済額を減らすなどの対応をしてもらうことができます。
しかし、
万が一、事故に遭い重い障害を負ってしまったら・・・
万が一、仕事に支障をきたすほどに精神的に障害を負ってしまったら・・・
万が一、死亡してしまったら・・・
そんな「万が一」の時、奨学金の返済を免除してもらえる制度が「死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除」です。
奨学生本人が精神もしくは身体に障害を負い労働能力が失われたり制限が発生してしまったり、死亡してしまい、それ以上の返済ができなくなってしまったときに利用できる制度です。
必要になる書類
申し出る場合には、それぞれの状況にあった必要書類を提出します。
精神若しくは身体の障害により免除される場合
人的保証利用者:本人・連帯保証人連署/機関保証利用者:本人署
●返済することができなくなった事情を証明する書類(収入に関することが証明できる書類。収入が一定額以上の場合は、証明書類とともに返済できない状況になっていることを証明できる書類。)
●医師または歯科医師の診断書(日本学生支援機構に所定の用紙があります)
死亡により免除される場合
人的保証利用者:相続人・連帯保証人連署/機関保証利用者:相続人署
●本人死亡の事実が記載されている戸籍抄本、個人事項証明書または住民票(個人番号を非表示にしたもの)などの公的証明書(原本)
※以上に加え、内容によっては一般猶予を願い出る必要がある場合もあります。
<参考>:日本学生支援機構
特に優れた業績による奨学金の返還免除制度(大学院のみ)
この制度は平成16年度に導入された制度で、大学院に進学し第一種奨学金を受けた人で、特に優れた業績を残した人が対象となります。
対象となる奨学金は大学院で貸与を受けた分のみですが、その奨学金の一部または全部の返済が免除されます。
では、特に優れた業績、とはどんなものでしょう。日本学生支援機構のHPにある説明によると、
学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価し、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。
引用:日本学生支援機構
と書かれてあります。
奨学金免除の権利を得るためだけに研究や論文を頑張る、というのではなく、もともと志高く大学院へ進学し、さらなる勉強研究に時間を費やすことを目的としている人たちにとっては、この返還免除制度が、学修のインセンティブを向上させるひとつとなることでしょう。
この制度への申し込みについては、申し込み対象者へ、申し込みが始まる前に国内の連絡先に案内が届きます。
申請にあたっては、大学院の指導教員等からの推薦書が必要となります。
この制度の対象となるのは、大学院で第一種奨学金の貸与を受けて、かつ返還免除を申し出て、学内選抜で選ばれた人です。
各大学院ごとに免除を受けられる推薦の人数設定は異なっていますので、どこでも同じ人数ではありません。
東大や京大などのそもそもの大学院自体のレベルの高いところともなると、集まっている院生も選りすぐりの優秀者が多いので、成績の上位3割に入るのがなかなか難しいかもしれませんが、その全員が奨学金貸与を受けているわけではなく、また貸与を受けていても全員が申請するとも限らないので、頑張る価値はあると言えます。
また成績の評価項目は各大学院の研究科などにより異なってはいます。
この資料を早いうちに手にして、細かく分かれている項目に良く目を通し、自分が評価を受けられる項目に関しては積極的に参加するなりして、確実に点を稼いでいくことです。
奨学金の免除を受けるには、毎日毎日のコツコツとした積み重ねが必要です。
自分の研究や学内外での活動の記録など、残せるものは漏らすことなくしっかり残しておきましょう。
ただし、この制度は大学院の第一種奨学金の貸与を受けている人のみが対象です。一番利用者が多いと思われる、大学や高等学校等での奨学金対象ではなく、大学で奨学金の貸与を受ける人には、この制度に変わるような返済免除の制度はありませんので、すべてをしっかりと返済していくことが必要です。
奨学金の返済支援
大学・高等学校などでの奨学金貸与を受けた人への返済免除の制度はありませんが、返済を援助してくれる制度があります。
平成26年12月、「奨学金を活用した大学生等の地元定着や、地方公共団体と大学等との連携による雇用創出・若者定着に向けた取組等を推進する」とする「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定し、地方創生の推進を図る取り組みが行われるようになりました。
それにより、地方公共団体や地元産業会が、奨学金の返済を抱えている人が地方の企業等に就職した場合、その企業が奨学生の返済を支援する制度が広がっています。
地方への若者の就職率を高め、地方活性化にもプラスになるシステムですね。
●地方公共団体の返還支援制度
都道府県や市区町村ごとに奨学金返還支援制度が設置されており、その内容もさまざまです。詳細は、以下URLにてご確認ください。
▼都道府県(基金設置団体)- 日本学生支援機構
▼その他の地方公共団体(市区町村)- 日本学生支援機構
たとえば、北九州市では、支援事業を行う企業を募り認定し、補助金を支給することでその認定企業に就職した新卒社員へ奨学金の支援をする仕組みとなっています。
また、兵庫県では、従業員の奨学金返済負担軽減制度を取り入れている県内の中小企業にはその負担額の一部を補助しています。制度を取り入れている企業は、求人情報にその旨を記載することができるので、企業アピールにも繋がっています。
奨学生側は、企業選択において「奨学金返済支援制度」があることを条件に加え、選んでいくこともできますね。
支援の制度が入社3年目まで、と決められていることもありますが、入社したての頃は収入も低いので、そんな時期に返済の負担が軽減するのはとても助かることでしょう。